「ご無沙汰しております」の意味は?例文、言い換え表現まで解説
2022/10/20
ビジネスシーンでもプライベートでもよく使う言葉「ご無沙汰しております」。普段何気ない気持ちで使ってはいるものの、正しく使えているのか、ふと気になることもありますよね。
今回は「ご無沙汰しております」という言葉の成り立ちや意味を、少し深掘りして解説します。意味をきちんと理解しておけば、使い方に困ることもありません。いざというときに正しく使えるように、頭の片隅に入れておきましょう。
「ご無沙汰しております」が持つ2つの意味
「ご無沙汰しております」という言葉の意味は、単語ごとに短く区切って確認するとわかりやすいでしょう。
「沙汰」にはもともと「水でゆすって砂金や米などにつく砂をよりわける」という意味があります。そこから転じて、現在では「善悪を判断すること」「政務を処理すること」「たより、しらせ」「評判」などといった、全部で八つの意味を持つようになりました。
八つの意味のうちで「ご無沙汰しております」の「沙汰」は「たより、しらせ」を意味しています。そこに打ち消し・否定の意味を持つ「無」と、尊敬・丁寧の気持ちを表すための「御」がついているのが、この言葉の成り立ちです。
「久しぶりに会う人への挨拶」
言葉の成り立ちをふまえると、「ご無沙汰しております」が「長い間、連絡をしませんでした」といった意味を持っていることがわかります。
このことから「ご無沙汰しております」の1つ目の意味は「お久しぶりです」と同じく、久しぶりに連絡を取る人や久しぶりに会う人に対する挨拶であるといえるでしょう。
「長く連絡を取らなかったことへのお詫びの気持ち」
「ご無沙汰しております」は「しばらく連絡を取らなかったことに対するお詫びの気持ち」という2つ目の意味も持っています。
長く連絡を取らなかったという事実と相手に対する尊敬の気持ちが合わさり、また「無沙汰」という言葉が「行き届かない」といったニュアンスを含むことも相まって、お詫びの意味を持つようになったのでしょう。
「ご無沙汰しております」と「お久しぶりです」との違い
「お久しぶりです」は再会の喜びを伴った挨拶です。しかし「ご無沙汰しております」はそれに加えてお詫びの気持ちを伴っているため、やや意味が重くなります。
カジュアルな場面で気軽に使える「お久しぶりです」に対して、「ご無沙汰しております」はフォーマルな場やビジネスシーン等で使うことが多い言葉です。
「ご無沙汰しております」の使い方
次に「ご無沙汰しております」という言葉について、使う相手や使う場面などに目を向けながら正しい使い方を説明します。
上司、先生など目上の人に使う
「ご無沙汰しております」は、尊敬する人、目上の人に使う言葉です。例えば、ビジネスシーンであれば上司や取引先の人、プライベートであれば子どもの担任や習い事の先生、親戚のなかでも年配の人などがそれにあたるでしょう。
「ご無沙汰しております」は、親しい間柄で使うには少し重過ぎる言葉です。同僚や友人同士で「ご無沙汰しております」を使う可能性はほぼないといってもよいでしょう。親しい間柄であれば「お久しぶりです」という言葉で十分です。
会わなかった期間が最低でも2カ月以上の人に使う
ビジネスシーンにおいては、連絡を取らなかった期間が2~3カ月以上のとき、出会い頭の挨拶として「ご無沙汰しております」を使います。最低でも2カ月は間隔があいているのが望ましいでしょう。
1カ月も間があいていないときに「ご無沙汰しております」という言葉を使うのは不自然です。慇懃無礼と取られたり「数週間前に会ったのに忘れているな」と勘違いされたりするので注意しましょう。
プライベートにおいては、ビジネスシーンよりも心もち長めに間隔をあけるのがおすすめです。2カ月ぶりの人に「ご無沙汰しております」を使うと仰々しい印象となる場合もあります。
ちなみに、ビジネスシーンでは半年以上期間があいたら頭に「大変」をつけて「大変ご無沙汰しております」を使うのが一般的です。
「ご無沙汰しております」の言い換え表現
「ご無沙汰しております」には「お久しぶりです」のほかにも似た言葉がいくつかあります。「お久しぶりです」よりも少しフランクな「お久しぶり」「しばらくぶり」、少しかしこまった「久方ぶりです」などがよく知られています。しかし、これらにはいずれもお詫びの気持ちは含まれていません。
やはり、お詫びの気持ちを込めるなら「ご無沙汰しております」が適切といえます。また、相手の方の立場が非常に上である場合などには「久方ぶりの連絡となりました。不義理をお許しください」という言葉を使うと、「ご無沙汰しております」よりも強い謝罪の気持ちを伝えられるでしょう。
「ご無沙汰しております」のシーン別例文
ここからは「ご無沙汰しております」を使った例文をシーン別に紹介します。参考にしつつ、アレンジして使ってみましょう。
どのシーンにおいても、久しぶりに連絡を取っていることが前提です。相手が自分のことを思い出しやすくなるように配慮するのがポイントといえます。そのうえで「お元気でいらっしゃいますか」などといった相手を気遣う言葉を添えましょう。
また「ご無沙汰しております」といわれたときは「こちらこそ、ご無沙汰しております」と返すと失礼がありません。
ビジネスでのメール、手紙
ビジネスでのメールや手紙で「ご無沙汰しております」を使うときには、このように使うとよいでしょう。
「ご無沙汰しております。以前、~~の件でお取引させていただきました、〇〇銀行の△△です。あれからお変わりありませんか?」
(それに対する返事)
「こちらこそ、ご無沙汰しております。おかげさまで変わりなく過ごしております」
ビジネスでの電話、対面
ビジネスでの電話や対面で「ご無沙汰しております」を使うときには、このように使うとよいでしょう。
また、電話や対面では、声や表情から再会を喜ぶ気持ちと長く連絡を取らなかったことに対するお詫びの気持ちが、バランスよく相手に伝わるように気を配るのも大切です。
「大変ご無沙汰しております。~~のプロジェクトでご一緒させていただいた〇〇商事の△△です。お元気でいらっしゃいましたか?」
(それに対する返事)
「こちらこそ、大変ご無沙汰しております。懐かしいですね。おかげさまで変わりなくやっております。△△様こそお元気でしたか?」
年賀状、手紙
プライベートな年賀状や手紙で「ご無沙汰しております」を使うときには、このように使うとよいでしょう。
年賀状では年始の挨拶(「あけましておめでとうございます」など)を述べたうえで、「ご無沙汰しております」を使った文章を添えるのが一般的です。
「コロナ禍のため、大変ご無沙汰しており申し訳ございません。ご家族の皆様も含め、お変わりありませんか?」
(それに対する返事)
「こちらこそ、大変ご無沙汰しています。おかげさまで家族共々元気に過ごしています。△△さんこそ、お加減いかがですか?今年こそ会えればいいですね。」
親戚同士の集まり(お正月、お盆、冠婚葬祭)
お正月、お盆、冠婚葬祭など、プライベートな集まりにおいても「ご無沙汰しております」という言葉は便利に使われます。
再会を喜ぶ気持ちと長く連絡を取らなかったことに対するお詫びの気持ちがバランスよく相手に伝わるように、言葉だけでなく声と表情にも気を配りましょう。
「ご無沙汰しております。~~の食事会以来ですね。皆様お元気にされていましたか?」
(それに対する返事)
「こちらこそ、ご無沙汰しております。もう〇年経つのですね、早いものです。おかげさまで変わりなく元気に過ごしております。」
同窓会
同窓会でも「ご無沙汰しております」という言葉が使われます。ただし、同級生に対してではなく、お世話になった先生や先輩に対して使うのがポイントです。同級生へは「久しぶり!」または「お久しぶりです」といった言葉を使う方が自然でしょう。
「ご無沙汰しております。美術部では大変お世話になりました。先生はあれからお変わりありませんか?」
(それに対する返事)
「お久しぶりです。〇年ぶりだなんて信じられないね。おかげさまで私は元気にしていますよ。△△さんは元気にしてましたか?」
「ご無沙汰しております」こんな使い方に注意
「ご無沙汰しております」という言葉には相性の悪い言葉があります。それは「お世話になっております」という言葉です。
「(いつも)お世話になっております」とは、常日頃からやり取りをしている間柄で使う言葉なので、長い間連絡を取っていなかった場合に用いる「ご無沙汰しております」と並び立たないということはすぐわかるでしょう。
ところが「お世話になっております」はビジネスでもプライベートでも非常によく使う言葉なので、意味を考えないままについ使ってしまうことも多いのではないかと想像します。
うっかり「ご無沙汰しております。いつもお世話になっております」といった表現をしてしまい、失敗することのないように気をつけましょう。
「ご無沙汰しております」の英語表現
最後に、英語で「ご無沙汰しております」を伝えるための四つの表現を紹介します。
“It has been a long time since I last contacted you.”
“I haven’t seen you for a long time.”
“It has been a while since I saw you last.”
“Sorry for being a stranger.”
まとめ
「ご無沙汰しております」とは、社会人にとって大変身近な表現でありながら、意外とその由来や成り立ちについて知らない人も多い言葉です。
間違った使い方をして先方に対して失礼になったり、自分自身が恥をかいたりしないですむように、意味と使い方をきちんと押さえておきたいですね。
参考書籍
新村出編 広辞苑第4版(1995) 岩波書店
ウィズダム英和辞典第3版(2003)三省堂