レジェンド!初の女性騎手が語る競馬界~連載「はじめよう!フェムテック」
2022/10/18
2021年10月から、ニッポン放送でスタートした番組『はじめよう!フェムテック』。ベネッセコーポレーションとかます東京の共同企画で、今、社会的なムーブメントになりつつある「フェムテック」を、さまざまな角度から取り上げています。パーソナリティーは、おなじみの伊久美亜紀総編集長と東島衣里アナウンサー。この連載では、毎週オンエアされた内容を、ギュッとまとめてお伝えします。
番組ではフェムテックに関する、あなたの職場や家庭などでの問題点やポジティブな試みなどを募集いたします。ニッポン放送『はじめよう!フェムテック』宛にメール(femtech@1242.com)でお送りください。
<パーソナリティー>
●伊久美亜紀 Aki Ikumi
大学卒業後、出版社3社の編集部を経て、1995年ベネッセコーポレーションに入社。『サンキュ!』編集長を長く勤め、現在はK&Fメディア総編集長として『たまひよ』『サンキュ!』『いぬのきもち』など年間約100冊の雑誌・書籍・絵本の編集責任者を務める。30歳の長女一人。
●東島衣里 Eri Higashijima
長崎県出身。大学卒業後、ニッポン放送に入社。現在は「中川家 ザ・ラジオショー」(金 13:00~15:30)、「サンドウィッチマン ザ・ラジオショー」(土 13:00~15:00)などの番組を担当。最近、女性の健康、そして幸せについて友人と語り合うことが多くなった31歳。
<ゲスト>
●細江純子 Junko Hosoe
元競馬騎手で、現在はホースコラボレーター。1975年愛知県生まれ。1996年にJRA初の⼥性騎手としてデビューし、1999年には⽇本の⼥性騎⼿として海外競⾺で初勝利。中央競⾺では、現役生活5年間で493戦に騎乗。2001年に引退後は、フジテレビ「みんなのKEIBA」などの競馬番組での解説や、新聞・週刊誌に競馬の記事を執筆するなど、幅広く活躍中。 また、ご自身が運営しているYoutubeチャンネル『スナックジュンコ』も話題に。プライベートでは1児の母親でもある。Twitter:@junkohosoe
まだまだ認知度の低い「フェムテック」を推進して、女性だけでなく社会全体の幸せを目指したい!という意気込みでスタートした番組の第2フェーズ。今回のゲストは、ホースコラボレーターの細江純子さんです。
「JRA日本中央競馬会の騎手としてご活躍された細江さん。圧倒的な男性社会といわれる競馬界で、女性活躍の第一人者です。現在は、競馬ファンと競馬関係者をつなぐ “ホースコラボレーター” という肩書で、意欲的にて活動されています。選手時代、そして現在のお仕事について、お話を伺うのが今から楽しみです」(伊久美)
武豊さんからの助言で、騎手から“ホースコラボレーター”へ
■東島アナ「今回のゲストは、JRA初の女性騎手としてデビューし、現在はホースコラボレーターとして、競馬番組などで活躍されている細江純子さんです。“ホースコラボレーター”というお仕事について、詳しく教えていただけますか」
■細江「はい。引退して、 これから自分は何ができるんだろうと考えていたとき、憧れの武豊さんが“純子はせっかく馬に乗っていたのだから、馬について伝える仕事をしてみたら? 僕も応援するから” といってくださったのです。競馬を伝える側になり、“競馬関係者とファンとのつなぎ役になりたい” “みんなとコラボレーションしたい”という思いを込めて、この肩書きを考えました。造語です(笑)」
■伊久美「武豊さんからアドバイスをいただいたのですね! すごいことです」
■細江「私は豊さんに憧れてジョッキーになったのですが、挫折したような形で選手生活を終えることになってしまいました。豊さんはそんな後輩を心配し、アドバイスしてくださったのです。おかげで、今の私があります」
■東島アナ「心強いサポートでしたね。最近では藤田菜七子さんなど、女性騎手の活躍が目立っていますが、彼女たちの活躍を、女性騎手の第一人者である細江さんはどのように見つめていらっしゃいますか」
■細江「 “うれしい!” の一言です。私の同期には、他に女性が2人いました。その後、16年間女性騎手がいない時期を経て、藤田菜七子ちゃんがたった1人で女性としてデビューしたのです。彼女はマスコミから注目を受ける中、しっかりと結果を残していて素晴らしいです」
■伊久美「ずいぶん長い期間、女性騎手がいなかったのですね。やはり、競馬界で女性が騎手として生きることは過酷なことなのですね」
■細江「そうかもしれません。今から騎手時代を振り返ると、“よく生きていたなぁ“ と思うことがたくさんあります(笑)」
■東島アナ「当時、競馬界で女性の割合は、全体のどのくらいだったのでしょうか」
■細江「私が所属していた関西の栗東トレーニングセンターでは、騎手を始め競馬に携わる人全体で1500人くらいいましたが、女性は1%以下でした」
■伊久美「それは本当に少ないですね。競馬界では、試験や訓練に男女差があるのでしょうか」
■細江「騎手過程に入学するときに、体力テストなどいろいろな試験がありますが、男性も女性も同じメニューをクリアしなければなりません」
■伊久美「そうなのですね! 筆記試験などはわかるのですが、体力試験も男女で同じ内容なのですか」
■細江「他のスポーツと違って馬をコントロールする競技なので、男女差があるようでないのです」
女性ジョッキーのパイオニアとして苦労した点は?
■東島アナ「男性多数の職場環境の中で、ご苦労された点はありますか」
■細江「本当に女性の数が少ないので、よくも悪くも女性は目立ってしまうことが大変でした。例えば1回調教中に落馬をすると、それが10回、20回落馬をしたかのように噂が広がる。そして “やはり、女性は馬に乗れない” という話になるのです。また、男性たちは、女性に対する接し方に戸惑っていましたね。中には気遣って女性に話しかける男性もいましたが、そうするとすぐに、“あのふたりは恋仲なのではないか” と疑われたりすることもありました」
■伊久美「なるほど。逆に女性騎手であることの強みはありましたか」
■細江「当時は、ほとんどよいことはなかったです(苦笑)。現在は、藤田菜七子ちゃんの活躍もあって、女性が競馬の世界で長く活躍できるように大きく制度が変わりました」
■東島アナ「どのように変わったのでしょうか」
■細江「馬の上で負担重量という斤量があります。以前は男女同じ条件だったのですが、男性は3kg減、女性は4kg減となり、女性に1kgのハンディが与えられるようになりました。結果、女性もたくさんのオーナーさんや調教師さんからのオファーを受けやすくなったのです。今年デビューしたルーキー今村聖奈ちゃんの活躍も、この制度改革が大きく影響していると思います」
■伊久美「制度も少しずつ進化しているのですね。私が親しくさせていただいているDr.コパさんの馬・コパノキッキングに、最初に騎乗したのは藤田菜七子さんだと伺っています」
■細江「そうなのです。Dr.コパさんが藤田菜七子ちゃんにオファーしチャンスを与え、菜七子ちゃんもDr.コパさんの思いに応えたのです。大きなレースだったのでマスコミからの注目度も高かったのですが、彼女が結果を出したことで女性ジョッキーに対する信頼度が高まりました。藤田菜七子ちゃんの努力とDr.コパさんの男気が実を結びましたね」
■伊久美「応援してくださるかたというのは、本当に必要ですね!」
■細江「どこの世界でも、結局ひとりでは何もできないので、まわりからのサポートは、非常に大きいと思います」
合言葉は「はじめよう!フェムテック!!!」
●次回も、元競馬騎手、現在はホースコラボレーターの細江純子さんをゲストにお迎えします。
【番組インフォメーション】
『はじめよう!フェムテック』は、毎週・土曜日15時50分~16時にオンエア。聴き逃しは『radiko』で(※首都圏にお住まいのかたは放送後1週間)お聴きになれます!
【イベント インフォメーション】
■女性の“健康”と“活躍”を支援する「Femtech Tokyo」開催!
女性のライフステージにおける様々な課題を解決できる「フェムテック・フェムケア」を手がける企業が集まるイベント、第1回 Femtech Tokyoに、ニッポン放送「はじめよう!フェムテック」と『サンキュ!』が協力媒体として参加します。当日は、様々な企業が生理・妊活・妊娠期・産後・プレ更年期など女性の心身の悩みを解決するコンテンツを展示する予定です。
2022年10月20日(木)~22日(土) 会場:東京ビッグサイト
「展示会の詳細&入場のお申込(無料)はこちら」https://www.femtech-week.jp/ja-jp.html
●記事まとめ/板倉由未子 Yumiko Itakura
トラベル&スパジャーナリスト。『25ans』などの編集者を経て独立。世界を巡り、各地に息づく心身の健康や癒やしをテーマとした旅企画を中心に、各メディアで構成&執筆。イタリア愛好家でもある。伊久美さんとは28年来の付き合い。https://www.yumikoitakura.com/