元女性騎手がつなぐ競馬界とフェムテック~連載「はじめよう!フェムテック」

2022/10/20

2021年10月から、ニッポン放送でスタートした番組『はじめよう!フェムテック』。ベネッセコーポレーションとかます東京の共同企画で、今、社会的なムーブメントになりつつある「フェムテック」を、さまざまな角度から取り上げています。パーソナリティーは、おなじみの伊久美亜紀総編集長と東島衣里アナウンサー。この連載では、毎週オンエアされた内容を、ギュッとまとめてお伝えします。

番組ではフェムテックに関する、あなたの職場や家庭などでの問題点やポジティブな試みなどを募集いたします。ニッポン放送『はじめよう!フェムテック』宛にメール(femtech@1242.com)でお送りください。

<パーソナリティー>
●伊久美亜紀 Aki Ikumi
大学卒業後、出版社3社の編集部を経て、1995年ベネッセコーポレーションに入社。『サンキュ!』編集長を長く勤め、現在はK&Fメディア総編集長として『たまひよ』『サンキュ!』『いぬのきもち』など年間約100冊の雑誌・書籍・絵本の編集責任者を務める。30歳の長女一人。

●東島衣里 Eri Higashijima
長崎県出身。大学卒業後、ニッポン放送に入社。現在は「中川家 ザ・ラジオショー」(金 13:00~15:30)、「サンドウィッチマン ザ・ラジオショー」(土 13:00~15:00)などの番組を担当。最近、女性の健康、そして幸せについて友人と語り合うことが多くなった31歳。

<ゲスト>
●細江純子 Junko Hosoe
元競馬騎手で、現在はホースコラボレーター。1975年愛知県生まれ。1996年にJRA初の女性騎手としてデビューし、1999年には⽇本の⼥性騎⼿として海外競⾺で初勝利。中央競⾺では、現役生活5年間で493戦に騎乗。2001年に引退後は、フジテレビ「みんなのKEIBA」などの競馬番組での解説や新聞・週刊誌に競馬の記事を執筆するなど、幅広く活躍中。 また、ご自身が運営しているYoutubeチャンネル『スナックジュンコ』も話題に。プライベートでは1児の母親でもある。Twitter:@junkohosoe

まだまだ認知度の低い「フェムテック」を推進して、女性だけでなく社会全体の幸せを目指したい!という意気込みでスタートした番組の第2フェーズ。今回のゲストも、元競馬騎手で、現在はホースコラボレーターの細江純子さんです。

「前回は、ホースコラボレーターになられたきっかけや、騎手時代のお話をいろいろと伺いました。ご苦労も多かったようですが、現在の競馬界は女性にとって働きやすいのでしょうか。今回はフェムテックの観点から、今後の競馬界に対する期待や課題について伺いたいと思います」(伊久美)

騎手や調教師など女性の数が増えることで競馬界の環境改善に!

■東島アナ「前回に続きゲストは、元競馬騎手でホースコラボレーターの細江純子さんです。 現在では、藤田菜七子さん、今村聖奈さんなど、女性騎手の活躍が目覚ましい競馬界ですが、その礎を築いたのが細江さんです。今週は、フェムテックの観点から、競馬界の実情について、さらにお話を伺いたいと思います」

■伊久美「以前、プロの女性サッカー選手が、“試合に向けて、月経のコンディションを整えるのが大変だった”とおっしゃっていたのですが、細江さんは現役時代、月経に関するトラブルなどありましたか」

■細江「騎手時代、私は “何かを得るためには、何かをあきらめなくてはならない” と考え、競馬に没頭していました。実際、まったく月経がこなかった時期もあったのですが、そんな体調の変化も気に留めず、むしろ “月経がこなくてラッキー、ラクだなぁ” と思っていました」

■伊久美「そうでしたか。前回もお伺いしましたが、競馬界にいらっしゃるかたはほとんどが男性とのこと。体調不良や心の悩みを、男性には打ち明けにくかったですよね」

■細江「できなかったですね。弱みを見せたくないという気持ちもありましたし、相談したところで、改善策が見つかりそうもないとあきらめていました。どんな世界でも、少数派は厳しい状況に置かれます。現在のJRAには女性ジョッキーが4名いますが、藤田菜七子ちゃんは、女性が1人だったころより、インタビューの受け答えが明るくなりましたね~。そのことをご本人に伝えたら、“以前は女性騎手というイメージを一人で背負わなければならないと感じていたけれど、今は4人いるので注目度も分散され、随分気持ちがラクになりました”と言っていました」

■伊久美「やはり、女性の数が多くなり、まわりに立場を理解してくれる人が増えることは、メンタル面で重要ですね」

■細江「それは本当に重要なことです。現在は女性調教師、また調教師の奥さんになって内助の功で支えていらっしゃるかたも増えてきました。彼女たちの活動が、女性ジョッキーたちの環境改善に大きく貢献していると思います」

■伊久美「まさに、フェムテックが広がってきている感じですね」

海外では男女が自然体で働いている職場環境!日本も学びたい

■東島アナ「現在の競馬界では、少しずつ環境が整い、女性にとって居心地のよい環境へと風向きが変わってきているようですが、お話を伺うほどに、細江さんの現役時代はご苦労が多かったように想像します。そんな中で、細江さんを支えてくださったお一人が武豊さんだそうですね」

■細江「はい。皆さんもご存知のように、豊さんは大らかな心と優しさで、悩んでいる私のことを気にかけてくださいました。毎年、豊さんはフランスへ遠征されるのですが “純子もフランスへ来てみたら” と声をかけてくださったのです。現地で、馬づくりをする厩舎(きゅうしゃ)を紹介していただいて、そこで毎日馬の手入れをしたりしながら1カ月滞在しました。レースには参加しなかったのですが、現地のホースマンたちとの交流を深めることができました」

■伊久美「フランスで過ごされて、どんなことを感じられましたか」

■細江「自分が狭い世界の中で、物事をとらえていたことに気づきました。女性ジョッキーとしてデビューして以来、“勝たなければいけない” “乗らなければいけない” ということばかり考えていました。フランスでは、勝利数を上げることよりも、“馬が好きだから、ホースマンとして馬を育て乗っている ”という根本的な思いをみんなが大切にしていました。おかげで、私は初心を思い出すことができたのです」

■東島アナ「そんなフランスでの豊かな時間を経て、シンガポールで細江さんはレースにも出場され、ジョッキーとして活躍されました。海外と日本と比較して、競馬界に携わっている男女の割合や職場の雰囲気に違いはありましたか」

■細江「ヨーロッパは、男女比は半々です。シンガポールは多民族国家ということもあり、さまざまな国籍のかたがいらっしゃって、多様性が受け入れられていることが印象的でした。風通しのよい環境の中、私は自然体で競馬と向き合え、レースに集中することができて気持ちもラクになりました」

■伊久美「自然体でいられる職場環境は理想ですね」

■細江「私の現役時代の競馬界では、男性と女性の間に微妙な距離感がありましたが、今はオープンで風通しもよくなり、だいぶ変わってきているようです」

■東島アナ「細江さんは、今後さらに、競馬界がどんなふうになっていくとよいとお考えですか」

■細江「現在186の厩舎(きゅうしゃ)があって、そのトップが調教師といわれる人たちです。これまで調教師は、ジョッキーや競走馬を管理する専門のかたが多かったのですが、これからは、もっと食器のこと、心身のバランス、体温、足元のケアなど、ママのように馬に接してきたかたが調教師になる割合が増えることが望ましいと思っています。そうすれば、ヨーロッパのように、もっと自然な雰囲気の心地よい競馬界に近づいていくはずです」

■伊久美「一人一人が健やかに働ける社会が、日本でも広がっていってほしいですね。今後の競馬界にも期待しています!」

合言葉は「はじめよう!フェムテック!!!」

【番組インフォメーション】
『はじめよう!フェムテック』は、毎週・土曜日15時50分~16時にオンエア。聴き逃しは『radiko』で(※首都圏にお住まいのかたは放送後1週間)お聴きになれます!

【イベント インフォメーション】
■女性の“健康”と“活躍”を支援する「Femtech Tokyo」開催!

女性のライフステージにおける様々な課題を解決できる「フェムテック・フェムケア」を手がける企業が集まるイベント、第1回 Femtech Tokyoに、ニッポン放送「はじめよう!フェムテック」と『サンキュ!』が協力媒体として参加します。当日は、様々な企業が生理・妊活・妊娠期・産後・プレ更年期など女性の心身の悩みを解決するコンテンツを展示する予定です。

2022年10月20日(木)~22日(土) 会場:東京ビッグサイト
「展示会の詳細&入場のお申込(無料)はこちら」https://www.femtech-week.jp/ja-jp.html

●記事まとめ/板倉由未子 Yumiko Itakura
トラベル&スパジャーナリスト。『25ans』などの編集者を経て独立。世界を巡り、各地に息づく心身の健康や癒やしをテーマとした旅企画を中心に、各メディアで構成&執筆。イタリア愛好家でもある。伊久美さんとは28年来の付き合い。https://www.yumikoitakura.com/

 
 

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