心と体の健康維持に欠かせない漢方の考え方~連載「はじめよう!フェムテック」
2022/10/31
2021年10月から、ニッポン放送でスタートした番組『はじめよう!フェムテック』。ベネッセコーポレーションとかます東京の共同企画で、今、社会的なムーブメントになりつつある「フェムテック」を、さまざまな角度から取り上げています。パーソナリティーは、おなじみの伊久美亜紀総編集長と東島衣里アナウンサー。この連載では、毎週オンエアされた内容を、ギュッとまとめてお伝えします。
番組ではフェムテックに関する、あなたの職場や家庭などでの問題点やポジティブな試みなどを募集いたします。ニッポン放送『はじめよう!フェムテック』宛にメール(femtech@1242.com)でお送りください。
<パーソナリティー>
●伊久美亜紀 Aki Ikumi
大学卒業後、出版社3社の編集部を経て、1995年ベネッセコーポレーションに入社。『サンキュ!』編集長を長く勤め、現在はK&Fメディア総編集長として『たまひよ』『サンキュ!』『いぬのきもち』など年間約100冊の雑誌・書籍・絵本の編集責任者を務める。30歳の長女一人。
●東島衣里 Eri Higashijima
長崎県出身。大学卒業後、ニッポン放送に入社。現在は「中川家 ザ・ラジオショー」(金 13:00~15:30)、「サンドウィッチマン ザ・ラジオショー」(土 13:00~15:00)などの番組を担当。最近、女性の健康、そして幸せについて友人と語り合うことが多くなった31歳。
<ゲスト>
●大久保 愛 Ai Okubo
薬剤師、漢方カウンセラー。昭和大学薬学部生薬部植物薬品研究室を卒業後薬剤師に。その後、北京中医大学で漢方、薬膳、東洋の美容などを学び、日本人で初めて国際中医美容師資格を取得。漢方、薬膳を始め、医療と美容の専門家として商品開発、ライティング、企業コンサルティングなどに携っている。一方、漢方カウンセラーとして、年間2000人以上の女性の悩みに応えている。最新刊 『心と体がバテない食薬手帳2023』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)も好評発売中。 Twitter:@Ai_loveflower
まだまだ認知度の低い「フェムテック」を推進して、女性だけでなく社会全体の幸せを目指したい!という意気込みでスタートした番組の第2フェーズ。今回のゲストは、薬剤師で漢方カウンセラーの大久保愛先生です。「以前、特番でご出演後、リスナーから大きな反響があり、再びご登場いただきました。私自身もそうですが、“漢方は心にも体にもよさそうだけど、よくわからない”と思われているかたが多いのではないでしょうか。今回はその基本の考え方から、教えていただきます」(伊久美)
“食薬”には、経験則だけではなく、科学的根拠の裏付けもある
■東島アナ「今回のゲストは、薬剤師で漢方カウンセラーの大久保愛先生です。今年6月以来、再びのご出演になります。改めて、漢方の考え方について教えていただけますか」
■大久保「漢方は西洋医学と対比されることが多いと思います。西洋医学ではエビデンスが前提となりますが、漢方の考え方は、何千年も昔からの経験則によって成り立っていて、人間が自然と調和して生きることを重要視しています。例えば、その土地のものを食べ、気候による体調変化には、植物や動物の角などを選び摂取することで体を整えてきました」
■伊久美「長い歴史の中で、科学的な研究も行われているのですね」
■大久保「そうです。古くからある経験則が根本的な考え方ですが、近年、予防医学が急成長しています。漢方にも遺伝子や腸に関する考え方、分子栄養学などいろいろなことを活用することで、経験則だったものが、根拠をもって説明できるようになってきています」
■東島アナ「私たちの感覚だと、不調に対して、西洋医学はピンポイントで対処、東洋医学は心と体を総合的に診るというイメージです。大久保先生は、食べて心身の不調を整える“食薬”という考え方を大切にされていらっしゃいますが、詳しく教えていただけますか」
■大久保「食薬は東洋医学と西洋医学の理論が裏付けされた食の考え方です。古くから伝わる経験則で成り立つ漢方の理論と、近年急成長する予防医学の分野、例えば腸内環境や遺伝子、オートファジー、ミトコンドリアなど細胞レベルで考える生命科学の考え方によって、より科学的根拠をもって東洋医学を開設できるようになってきています。そのため、より具体的にこの時期にはこのようなものを食べよう!と言えるようになりました。ただ、“食べる薬”だけど医薬品ではないので、1日だけ実践しても意味はなく、習慣化することで薬のような力を発揮します」
漢方では季節は5期! 秋、心と体のために実践したいことは?
■東島アナ「フェムテックにも通じる“心と体の健康”という点からお話を伺えたらと思います。毎日の生活の中で、大切なことは何でしょうか」
■大久保「漢方では、人間と季節の関係性を重要に考えています。例えば、一般的に季節は春夏秋冬の4季ですが、漢方では、すべてのものを5つに分けて考える陰陽五行説に基づき、春・夏・長夏・秋・冬の5季とされています。長夏というのは、高温多湿、低気圧の時期で、ゲリラ豪雨や異常気象などが起きやすい頃も該当します」
■伊久美「長夏は、特に何月から何月というわけではなく、高温多湿で低気圧の時期を指すのですね」
■大久保「そうです。漢方では、この5季が人間の五臓六腑に関連していると考えます。例えば、肝臓の肝は春、心臓の心は夏、長夏が脾臓の脾、秋は肺、冬が腎臓の腎となり、その時期に労わるべき臓器になります。季節の流れとともに、ケアする部分が変わっていくということです」
■伊久美「季節ごとに食薬があるのですね」
■大久保「はい。秋は肺、そして秋の乾燥する空気の影響で喉や鼻の粘膜も弱りやすい時期なので、のどの不調やアレルギー症状が出やすくなります。そして、同じ粘膜である腸の働きにも影響が出るので、便秘の人も増加するのです。つまり、口腔内や腸内の粘膜を強化することが求められます」
■伊久美「ズバリ、今の時期、秋にはどんなものを食べたらよいでしょう」
■大久保「里芋のようなネバネバした根菜ですね。根菜類はLPSという免疫ビタミンが多く含まれているので、バリア機能を高めてくれる働きがあります。また、長芋などは、ジオスギニンという女性ホルモンなど、若返りに役立つような物質が含まれています。おいしくなる時期なので、積極的に摂ることをおすすめします」
■東島アナ「秋は根菜ですね。季節に合わせて食材を摂り、体を整えることで心も整っていくのでしょうか」
■大久保「そうなのです。特に秋は悲しい気持ちになりやすい、切なくなりやすいと言われていますが、それは体の中から起きていること。日照時間が減り乾燥した冷たい空気の影響で腸の働きが低下すると、メンタルをコントロールしているセロトニンの分泌が減ってくるので、落ち込みやすくなります。根菜を食べて腸を整え、セロトニンの分泌を促してあげるとよいです」
■伊久美「とっても勉強になりました。早速、根菜類を食べようと思います」
合言葉は「はじめよう!フェムテック!!!」
●次回も、薬剤師で漢方カウンセラーの大久保愛さんをゲストにお迎えします。
【番組インフォメーション】
『はじめよう!フェムテック』は、毎週・土曜日15時50分~16時にオンエア。聴き逃しは『radiko』で(※首都圏にお住まいのかたは放送後1週間)お聴きになれます!
●記事まとめ/板倉由未子 Yumiko Itakura
トラベル&スパジャーナリスト。『25ans』などの編集者を経て独立。世界を巡り、各地に息づく心身の健康や癒やしをテーマとした旅企画を中心に、各メディアで構成&執筆。イタリア愛好家でもある。伊久美さんとは28年来の付き合い。https://www.yumikoitakura.com/