ただ愚痴を聞いてほしいときも 理屈しか返してこない夫。 育った家庭に問題があるのでしょうか?
2023/04/15
話がかみあわずわかり合えない夫に悩む相談者のなおこさん。そんな彼女に心理カウンセラーのよしおかさんは「夫の子ども時代のことを想像してみて」とアドバイス。すると夫の中に今も残っているかもしれない心の痛みが浮かび上がってきて…。
夫はなぜそんな態度になる?子ども時代のことを想像してみて
よしおか:なおこさんご夫婦のコミュニケーションを改善するために、ご主人の子ども時代や家庭の様子(家族関係)を想像してみましょう。まずご主人のご実家には、自分の実家と違うことや違和感を感じたことはありますか?
なおこ:義母はとても几帳面で、ペットがいるのに部屋は臭いもしないし床もピカピカ。毎晩ワックスがけをしているそうです。突然おじゃましたときも完璧に片づいていました。
よしおか:うんうん。
なおこ:それと、お義母さんと話すと「そお?」という相づちが多くて、やんわり否定されてる?と感じることがあります。
よしおか:なおこさんがご主人の実家で育ったとしたら、何か困ったり失敗したときに、そのご両親はどんな接し方をすると思いますか。
なおこ:私が傷つかないよう悩みにはふれず、腫れ物にさわるように接する気がします。そして気をつかわれすぎて、悪いのは私だって思いそうです。
よしおか:もしかしたらご主人の家族は、親子の間にも比較的距離があって、相手を不快にさせないことで自分を守るような空気があるのかもしれませんね。なおこさんの子ども時代やご実家はどんな様子だった?
なおこ:両親はケンカが多く、私に対しては過干渉で進学先や友だち選びにも口出しするので、よく反発していました。
よしおか:感情をストレートに出し合うご家族なんですね。
違う家庭環境で育った2人だから、 愛情があっても表し方が違う
よしおか:お話を伺うと2人のご実家には対照的な面があって、2人がいっしょに暮らしたら、やはりすれ違いが生じるだろうなと感じます。
なおこ:そうかもしれません。
よしおか:自分は「悲しいときは隣にいてなぐさめて欲しい」と思っていても、相手は「気持ちを整理する時間が必要だから、今はそっとしておこう」と考えるかもしれない。お互い思いやりや愛情は持っていても、表し方がまったく違うんです。すると気持ちは伝わらない。
なおこ:そうですね…。
よしおか:でも彼の子ども時代を想像すると、見方が変わってきます。完璧主義の几帳面なお母さんのもとに生まれて腫れ物にさわられるように育ったとしたら、無邪気な子どもの心がストレートに出せなかったかもしれない。羽目をはずせず、彼もつらかったんじゃないかなって、私は想像します。
なおこ:…はい(涙)。
よしおか:だけど今は子どもと仲のいいパパで、いっしょにいると昔抑えていた子どもの心が出せるのかもしれません。彼もパパになって、息子たちと出会えてよかったと思っていると思いますよ。
夫は、今まで辛くてもがんばってきたんですね
なおこ:夫の子ども時代のことは考えたこともなかったです。つらいこともあっただろうな、今までがんばってきたんだなって思います。
よしおか:なおこさんも、自分の気持ちを親に受け止めてほしかったという子ども時代の願いを、今はご主人に期待しているかもしれないですね。
なおこ:はい、そうだと思います。
よしおか:ご主人はもっとも身近な家族で、それは無理もないことだから伝えればいいの。「私はこう育ってきたから、わかってほしい気持ちが人より強いかもしれない。だからアドバイスより、ただ『そうなんだ。大変だね』と言ってほしい」って、できるだけ具体的に言ってみたらどうかな。
なおこ:伝え方がむずかしそうです。
よしおか:責めたり深刻に話すと相手は心を閉ざすから、満腹なときや寝る前など、彼の心がゆるんだときを見計らって話すようにするとうまくいくかもしれませんね。
なおこ:タイミングも大事なんですね。
よしおか:そう、とても大事なんですよ。なおこさんがお願いしたことを、最初彼はロボットみたいにぎこちなく実行するかもしれない。でも続けるうちに自然とわかってきて、心からしてくれる日が来ます。そのときは本当に幸せですよ。
なおこ:そういうえば思い当たることが。
よしおか:あるんですか?
なおこ:子どもがいけないことをしたときに、夫が頭ごなしに怒ったんです。私は「それだとうまくいかないよ。私も前に失敗したから、次は『なぜそういうことをしたの?』と聞いてあげて」と伝えました。それが、最初はできなかったのに、いつのまにか上手になっていて。思わず「パパ、子どもとの会話が上手になったね」と言ったら喜んでいました。
よしおか:それはきっと彼もうれしかったですね。
なおこ:私のやり方を見てくれてたのかな。最初はロボットでも、できるようになるんですね。
よしおか:人間はまねから入るでしょう?人のやり方を見て言葉を聞いてると、いつかできるようになる。家族は共鳴し合うものだから。もし彼が共感されずに育ったとしたら、共感を示すことは苦手かもしれない。親からしてもらってないことはできないんですよね。だから「そうか。彼はしようがないんだ」って深いところでわかってあげると、なおこさんがラクになる。
なおこ:(うんうん、とうなずく)
小さなことを指摘されたら「出た~!パパのこだわり屋さん!」と、笑いごとにしちゃおう
よしおか:何げない会話でも、夫にちょっとした言い間違いを指摘されて悲しいとお話されてましたね。
なおこ:はい。
よしおか:そんなときは、子どもと笑い飛ばしちゃったらどうかな?「ほら出た~、パパがまた変なとこにこだわってる(笑)」って。
なおこ:そこもちょっとおもしろいって思うんですね。
よしおか:ダメな部分を笑い合える家族って優しい。「こんな自分でもいいだ」って愛される自信になるし、弱みも見せられるもの。
なおこ:…そっかぁ~。
よしおか:なおこさんと結婚できて、彼は幸せですよ。長年あきらめずに自分と向きあってくれたことは、親御さんもしなかったことかもしれない。そんななおこさんをきっと大切に思ってる。ただ何を言われているんだろう、どうしていいかわかならないという感じなんだと思います。
AIと結婚した方がきっとみんなラク。でも成長する楽しみがなくなるかも
よしおか:将来、人間以上に共感性を学んだAIロボットと結婚する時代が来るかもしれません。するとすごくラクだけど、成長する楽しみはなくなるかもしれないね。
なおこ:そうですね。夫も人間だから足りない部分があるけれど、私にとってはいっしょにいると成長できる相手だな、だからいっしょにいるんだなって思えてきました。これからは夫とぶつかっても、夫の子ども時代を想像したら違う見方ができる気がします。
よしおか:感情的になりかけたら、自分の意識からフッと抜け出して第三者を思い浮かべてみて。「〇〇さんならこの場面で何て言うかな」と考えると、冷静に対応しやすくなるから。
なおこ:思い浮かべる人は、好きな女優さんでもいいですか?
よしおか:いいですね!
なおこ:大好きなあの女優さんになったつもりで…と考えると、気持ちが切り換えやすそう。それにワクワクします!
夫婦関係は60歳くらいで完成するのかもしれない
よしおか:彼はきっと変われるけれど、子育てより時間がかかるかもしれない。「20年後、私は63歳。そのとき共感し合える老夫婦になれればいいや。今はしょうがない、ロボットでも許そう!」って自分を励まそう!夫婦は長年かけて成長し合うものだから。
なおこ:先生とお話ししたら視点がかわりました。未来にも希望が持てました。今の気持ちのまま、もう一度夫と向き合ってみます!
人生100年時代と言われるのだから、夫婦関係が60歳で完成というのは、案外現実的かもしれません。夫の変化はすぐには訪れないとしても、なおこさんの表情は晴れやかになりました。夫を受け入れて向き合う気持ちになったら、日々見える景色は変わったでしょうか?1カ月後にまたお話を伺いたいと思います!
イラスト/髙栁浩太郎 取材・文/神坐陽子 構成/サンキュ!コメつぶ