【社内起業】「子どもをちょこっと預ける」を当たり前にして、日本のおかあさんをラクにしたい
2023/12/16
子どもを「ちょこっと預ける」ことが当たり前な世の中にしたいと、一時保育のマッチングサービスを社内起業で提案した田中紗代さん。東京都内を中心に実証実験中です。提携保育園の「パルインターナショナルスクール@広尾駅前」のスタッフや園児と田中さん(写真左から2人目)。
<教えてくれた人>: 日本生命保険相互会社 イノベーション開発室 田中紗代
2009年日本生命保険入社。2016年から内閣府男女共同参画局に派遣。他省庁や女性雇用者と関わるなかで、子育...
●プロフィール
(たなかさよ)2009年日本生命保険入社。2016年から内閣府男女共同参画局に派遣。他省庁や女性雇用者と関わるなかで、子育ての不自由さを痛感。2018年に日本生命に帰任後、人材開発部で人材育成やダイバーシティ推進に関わる。子育てにまつわる社会課題を解決したいという思いを持ち続け、2020年に社内起業プロジェクトに応募。コンペを勝ち抜き、現在に至る。趣味はF1観戦で、推しのチームはレッドブル・レーシング。
ワンオペ育児に苦労しているおかあさんを助けたい一心で着想した新事業
「日本の女性は“仕事か子育てか”など、節目節目で大きな選択を迫られて大変だな」と、子どもの頃から感じていたと話す田中さん。2020年、勤務先で社会課題の解決につながる新規プロジェクトの公募があったとき、“一時保育”のマッチングサービスを提案しました。「子どもを気軽に預けられる場所があれば、普段ワンオペで苦労しているおかあさんの手助けになると思ったんです」。ただし子どもを預けるには、安全・安心であることは大前提。「預けたい親御さんの気持ちに応えたいという熱意があって、かつ認可外保育施設の基準を満たす保育園を探し、預けたい人と預かれる施設をつなぎたいと考えました」。「ちょこっと預ける」というコンセプトから連想したサービス名は「ちょこいく」。田中さんの提案は約400件の応募の中から見事選ばれ、2022年2月、「ちょこいく」の実証実験が始まりました。
「ちょこいく」って?
預けたい保護者と、預かり可能な保育園をつなぐ、簡単&便利な一時保育のマッチングサービス。東京都内を中心にサービスエリアを拡大中。
特徴1
〈書類の提出や面談が不要〉
・すべてLINEで完結
特徴2
〈どんな理由でも利用OK〉
・急な用事で預けたい
・自分のための時間が欲しい
・子どもの社会性を育てたい など
特徴3
■提携保育園数100園
※23年10月2日現在
一時保育は手続きが大変 預けるまでのハードルをまずは解消しよう
一時保育で子どもを保育園に預けるには、一般的に多くの書類の提出や事前登録、面談などが必要。「忙しくて疲れているおかあさんたちが、『手続きが面倒なら一時保育は諦めよう』と思うのは当然です」と田中さんはいいます。その点、「ちょこいく」は書類提出や面談、またアプリなどをダウンロードする必要などはなく、保育園探しから予約までLINEで完結。専属オペレーターが対応し、預けたい日時や場所などの相談から、預かり可能な保育園の提案まで、すべてLINEのやりとりで行います。
知ってるようで知らない!?「一時保育」
保護者が子どもを預けたいとき、1日または1時間といった単発で保育園に預けられるサービス。利用する園に在園している必要はなく、普段は家庭で過ごしている場合も利用が可能。
利用者さんの「ありがとう」の声が私たちの最大のモチベーション
「ちょこいく」立ち上げにあたっては、定性・定量アンケートに加え、子育て中の人の本音を聞き出すインタビューも実施。その後もブラッシュアップを重ね、“本当に役立つサービス”を目指しています。「『ちょこいく』のホームページに利用者さんが書き込んでくださる、『安心して利用できました』『リフレッシュできた』『やりとりがLINEで便利』といった声は私たちの宝物です」。
「ちょこいく」運営メンバーがうれしかったおかあさんの声
● 一時保育は初めてで不安でしたが、寄り添っていただき、おかげ様で前向きに捉えることが出来ました。
● 育児で少し疲れが出てきたので助かります。
● 今日は誕生日のお祝いもしてもらい、楽しい時間を過ごせたようです。一時保育でも在園の子たちと分け隔てなく、行事に参加させてもらえること、うれしく思います。
寄り添うスタンスの専属オペレーターが人に頼る不安をラクにする
利用者の要望や相談を聞き、最適な保育園を探し、提案する専属オペレーター。定型的なやりとりではなく、利用者の言葉の奥にある思いを読み取りながらのコミュニケーションを心掛けています。「心を開いた利用者さんが絵文字を使い始めたら、オペレーターも絵文字を交えて返信することも。気持ちの通ったコミュニケーションを通じて、頼ることの不安を少しでも和らげたいと思っています」と田中さん。
預けるのは「後ろめたい」ではなく「当たり前」にしたい
調査で見えてきたことの1つは、子どもを預けることに後ろめたさを感じているおかあさんが少なくないこと。「『疲れているけど休むのは我慢しよう』『私のやりたいことは我慢しよう』と、いつもおかあさんが何かを諦めている。『ちょこっと預けられる』一時保育が当たり前になれば、おかあさんの『我慢』が減っていく。そうすれば『子育ての大変』も和らぎ、日本の少子化に歯止めをかけるきっかけになるかもしれない。『ちょこいく』はその、小さな一歩になったらいいなと思っています」。
<教えてくれた人>
日本生命保険相互会社 イノベーション開発室 田中紗代さん
2009年日本生命保険入社。2016年から内閣府男女共同参画局に派遣。他省庁や女性雇用者と関わるなかで、子育ての不自由さを痛感。2018年に日本生命に帰任後、人材開発部で人材育成やダイバーシティ推進に関わる。子育てにまつわる社会課題を解決したいという思いを持ち続け、2020年に社内起業プロジェクトに応募。コンペを勝ち抜き、現在に至る。趣味はF1観戦で、推しのチームはレッドブル・レーシング。
参照:『サンキュ!』2024年1月号「あしたを変えるひと」より。掲載している情報は2023年11月現在のものです。撮影/西田香織 取材・文/宇野津暢子 編集/サンキュ!編集部