女一人で、家を建てました。ミニマリストとは無縁。 調理器具も食材もあふれるほど置いてある台所

2023/11/04

見せてもらうのは「棚」と「引き出し」と「冷蔵庫」の中。今回は食と酒と旅を愛する文筆家・ツレヅレハナコさんのお宅にお邪魔しました。食べることが大好きで「台所がメイン」の新居とのこと。遠慮なく、隅々まで見せていただきます!

PROFILE
ツレヅレハナコさん
instagram @turehana1

家族構成:猫のあんきも(13歳)

住まい:東京都在住。「台所」にこだわり抜き、3年前に戸建てを建設

SNSで発信するおいしい食&酒情報が人気。Webや雑誌など多くの連載をもつ。食にまつわる著書も多数。家を建てた経緯や台所のこだわりが詳細に記された著書『女ひとり、家を建てる』(河出書房新社)も好評

築30年超の賃貸マンションから、引っ越し先を探しに探して、 行きついたのは自分で家を建てること

◎編集部
まず、おうちの一番のお気に入りポイントを教えてください

☆ツレヅレさん
台所のガスコンロの横に小さな窓があるのですが、そこから差し込む光が本当に美しいこと。

一般的には台所は明るいところに配置されますよね。でも全体が明るいと光が感じられない。暗さとのコントラストが欲しかったので、台所はあえて北側につくりました。理想は教会の中に差し込むような神々しい光。その光のために家を建てたようなものです(笑)。

朝に沸かすお湯の湯気だったり目玉焼きだったり、本当に美しく見えて幸せを感じます。

それと台所の入り口にある鍋専用の棚も、絶対につくると決めていました。私は鍋を買うのが趣味なんですが、鍋ってその土地の食文化を支える重要なもの。その土地だから生まれる鍋があると思うんです。

しまいこんでおくのはもったいないので、飾っておきたかったんですよね。もちろん、調理にもがんがん使ってます。

お気に入りの鍋セレクション。自他ともに認めるアルミ好きというだけあり、アルミ製の鍋が多い。ポルトガル、スリランカ、トルコなど、各国の鍋が集結。

◎編集部
もともと家を建てるつもりだったのですか?

☆ツレヅレさん
いえ、そんなつもりはなかったですね。

それまで築30年以上の古い賃貸マンションに暮らしていたのですが、クロードのL字型キッチンがついて、リビングも書斎もあって1人暮らしには十分すぎる広さで何の不満もなかったです。

ただ老後までずっと暮らすことは想像しづらかった。だから最初は中古マンションを買って、リノベーションしようと思っていたんです。

でもいざ探してみると、ゆずれない条件や希望の金額内で都内にマンションを購入するのは、不可能だとわかりました。であれば、家を建てよう!と。

労力も予算も、ぜ~んぶ台所につぎ込みました

◎編集部
そういえば、お風呂(浴槽)がないって聞きました!

☆ツレヅレさん
そうなんです。2階の半分が台所、そうなると必然的に残りの半分はリビング。
台所にお金をつぎこんだので、ほかの場所は予算を削れるだけ削りました(笑)。

毎日湯ぶねにつからないので、私はシャワーで充分なんですよ。近くに銭湯もあるし。寝室もベッドがギリギリ入ればよかったので、4.5畳しかありません。

朝起きたらまずは台所に行くし、仕事の料理をつくるのも台所だし、ごはんをつくりながら台所で飲むことも多い。家にいるほとんどを台所ですごしているので、ほかは結構どうでもよかったです(笑)。

「何も置かない」を徹底したシンプルなリビングは、台所と対照的。撮影やホームパーティーで人が集まることが多いので、ダイニングテーブルは8人がけの大きいもの。

◎編集部
1階の玄関付近にも台所がありますね?

☆ツレヅレさん
土間があったらいいなと思っていて、だったらお茶も出せるようにと、カウンターキッチンもつくってしまいました。
ゆくゆくは料理家さんとポップアップイベントのようなものを開催できたらいいな、とも思っていて。急に飲食店を開きたいと思うかもしれませんし! 

今はそれほど使っていないのですが、台所が2つあると『この場所を有効活用するために何かできないかな?』って考えるとワクワクする。「なんか楽しそう」という気持ちだけで、つくった場所ですね。

1階土間のカウンターキッチン。ときどきこのカウンターにひとりで立り、晩酌を楽しんでいるそう。柄が印象的なスタンドライトは、実家から譲り受けたパキスタンのもの

ミニマリストにはなれない(笑)。すべてが大切なものであふれた台所

◎編集部
たくさんの台所用品をお持ちですが、収納面で工夫が必要だったのでは?

☆ツレヅレさん
台所道具が大好きなので、とにかく量が多いわが家。でもひとつひとつ物語を語れるくらい、どれも思い入れのあるものばかり。今までも、これからも、ミニマリストとは無縁だと思います(笑)。

とはいえただ飾っていたいのではなく、どれも用途があって使っているものなので、調理器具はすぐに取り出せるよう、取り出しやすさ優先です。好きなものをいつも目にできるのはとても幸せだし、さっと取れるのは実用的でもあります!

◎編集部
常に使っていて、使いやすい場所にあるから、ものが多くても埋もれてしまうことがないのですね。

☆ツレヅレさん
しまい込んだら、使わなくなってしまうので。それは道具がもったいない。使ってない台所道具こそ、出しておくといいと思います。そうすれば使うようになる!

鍋やフライパンなどの調理器具は、もともと持っていたスチールラックに収納。重いものは下、材質ごとにわける、が唯一の収納ルール
スチールラックの前には、パントリーを仕切る壁が。有孔ボードを使用しているので、一面が吊るす収納スペースになっている

◎編集部
出しっぱなしだと、ホコリはつかないですか?

☆ツレヅレさん
鍋類などは頻繁に使うので、ホコリは気にならないです。

ただ、スパイス類は並べておくと油が飛んで、どうしてもベタベタしてしまう。ずらっと並んでいる光景は大好きなのですが、そこは実用性を重視して、シンク下の引き出しにしまっています。

プライベートでも仕事でも、私の料理にはスパイスが不可欠。数もかなりあるので、ラベルを貼って、調理中でもサッと取れるようにしています。

ざるや鍋を収納するくらいの大きさがある引き出しは、スパイスでいっぱい。「スパイス初心者の人は、クミンがおすすめ。ドレッシングや肉炒め、肉団子など、ちょっと入れるだけでいつもの料理に変化で出ますよ」

撮影/砂原文 取材・文/草野舞友 企画/サンキュ!コメつぶ編集部

次回は冷蔵庫の中を拝見します。最近ハマっているという、ヘルシーな昼食もご紹介します!

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