息子2人を育てながら介護の仕事を始めてみたら、え?!こんなキャリアが?!と世界が広がった話
2024/02/23
介護の仕事と聞くと、とにかくいそがしくて重労働…そんなイメージを持つかたはいませんか?簡単な仕事ではないけれど、これからどんどん必要とされていく仕事。やりがいやキャリアの可能性も広がっているようです。
「サンキュ!」不定期連載「働くママのリアルお仕事白書」。今回は訪問介護ヘルパーとして働くかたのお話を聞きました。女性はライフステージによって働き方に悩むことも多いもの。そんなかたのヒントが見つかればと思います。
【話を聞いた人】
松田純子さん(大阪府 47歳)
夫、長男(22歳)、次男(20歳)の4人家族
お仕事DATA
訪問介護ヘルパー
□勤務時間/9:00~18:00
□月収/約20万円(手取り)
□転職経験/有
□資格/介護福祉士、整理収納アドバイザー
お仕事ヒストリー
21歳 短大卒業後、IT企業にてプログラマーに
24歳 結婚
25歳 第一子出産
27歳 第二子出産
32歳 お仕事復帰
二男が小学1年生になったのを機に復職
介護施設にて配食ドライバー(パート勤務)
33歳 同じ介護施設にて、デイサービスの介護職員(パート勤務/ほぼフルタイム)
37歳 転職。
資格(介護福祉士)を取得したタイミングで、訪問介護ヘルパー(正社員)に
42歳 資格(整理収納アドバイザー)を取得
44歳 デイサービスに異動
47歳 訪問介護の部署に異動 現在に至る
訪問介護がきっかけで、整理収納アドバイザーを取得
仕事をきっかけに介護福祉士、整理収納アドバイザーの資格を取った松田さん。
独身時代とはまったく異なる業種に挑戦し、今ではこの仕事をずっと続けたいと思うように。やりがいや辛いこと、気になる今後のことまで伺いました。
お仕事の内容を教えてください
訪問介護ヘルパーとして、利用者宅に訪問し、生活援助や身体介護をしています。家政婦と誤解されやすい面もあるんですが介護士は「自立を支援するために、できないことを介護保険に沿ってサポートする」仕事。
掃除や買い物代行、調理…、あらかじめケアマネージャーが利用者さんの困っていることを確認し、訪問介護ヘルパーはご自宅で必要な援助をしています。
介護の仕事をしようと思ったきっかけは?
たまたま友人から介護施設の配食ドライバーの仕事に空きが出たからやってみないって誘われたのがきっかけです。子どもの急な休みがあっても代わりのきく仕事だよ、友人もムリなく働けてるからオススメだよって言われたのが心強くて。
お弁当の配食ドライバーは、利用者さんの安否確認も兼ねた業務だったんですが、運転免許があればできる仕事。
介護の仕事はおむつ替えや身体介助というイメージがありましたが、配食担当からスタートしたことで、ハードルが低く感じられたと思います。
仕事と子育ての両立で工夫していることは?
復職したころは子どもが小学生だったので両立は大変でした。「家事はできないこともある」と割り切る。「何で私ばっかり」と思うなら子どもや夫にできることはやってもらう。
家族に頼るようになってから気持ちもラクになりましたね。
デイサービスで3年経験したころ、時給アップも兼ねて介護福祉士の資格に挑戦したんですが、子どもの宿題の時間にいっしょに資格の勉強をしました。長男に問題を出してもらったりして楽しく勉強できたので、苦にはなりませんでした。
今では子どもたちも大学生なので時間の制約はなし。お金はかかるので仕事がんばるぞ~って感じです。
タイムスケジュールを教えてください
今年デイサービスから異動し訪問介護の担当になったばかりなので、今は1日3件ほどのお宅を訪問。1件につき30分~1時間滞在し、次のお宅へ移動。近場でちょこちょこやっている感じです。
お昼休憩や夜の一人時間、隙間時間を見つけて、副業の片づけ相談員の仕事もしています。
【タイムスケジュール】
6時00分 起床
6時20分 スポーツジムへ。軽く運動
7時20分 朝食、部屋の片づけ、子どもの予定も確認
8時10分 出勤
ウォーキング兼ねて歩く。時間ない日は
自転車のときも
9時00分 事業所にてスケジュール確認
↓移動
9時30分~10時30分 1件目のお宅訪問(家事援助)
↓移動
11時00分~11時30分 2件目のお宅訪問(身体介護)
↓移動
12時00分~13時00分 事業所にて休憩。副業タイム
(メール配信、予定の確認)
13時00分~15時30分 実績記録、ケアマネージャー
の問い合わせ対応など。
↓
15時30分~16時00分 3件目のお宅訪問(身体介護)
↓移動
16時30分~18時00分 事業所に戻り、実績記録、
シフト確認。研修があることも
18時 勤務終了
ウォーキング兼ねて歩く。スーパーで買い物
20時 帰宅、夕食準備
家族の帰宅まで副業タイム(インスタ投稿等)
21時 夫の帰宅後、ともに夕食
22時 入浴、片づけ、夫とのんびり時間
23時 子ども帰宅、夕食準備
いっしょにテレビを見る、今日あった事を話す
24時 洗濯予約、就寝
仕事は楽しいですか?
楽しいです。今は訪問介護ですが、訪ねていくと「待ってたよ~」って迎えてくれる。仕事が終わると「ありがとう」って喜ばれる。うれしいですよ。
やりがいに感じることは?
感謝されることががやりがいですね。お宅を訪問して洗濯ものや食器などを片づけるんですが、次行くとまた荒れていた…ってことも正直あります。
もともと片づけが好きだったので、訪問介護をきっかけに、どうにか片づいた状態をキープできないかと思って整理収納の勉強をし、アドバイザーの資格を取りました。
例えば、新聞を読む場所のそばに新聞置き場をつくることで、足が悪い人でもあまり動かず読めるし、食器も不要なものは片づけて、必要最低限の食器のみ洗いカゴに入れておけば、ムダな動きをせず利用者さんが生活できるようになったんです。
動線に合わせてものの位置を決める、使いやすく片づけしやすいように実践できるようになりました。
利用者さんから「あれ、便利やったわ~、ありがとう」って喜んでもらえることもあって。充実感がありますね。
仕事がつらいな~って思うのはどんなとき?
元気だったかたがけがをしたり、急に体調が悪くなられたりするのは辛いですね。
そのかたの家族が、これからどうしようか困惑されている姿を見ても励ましの声をかけるしかできず、つらいな~と思います。
あとは親しくなってくると皆さん「お茶飲んでいって~」って誘ってくれるんですが、ルールで断らなきゃいけないんです。ルールって、結構あります。
玄関先の落ち葉の掃除をしてほしいと言われても、生活の介護支援が仕事なので。落ち場掃きは介護保険対象ではないのでできなくて、「やってもらえないの~」って言われることも。
訪問介護は1対1の関係なので、寄り添ったケアができるのですが制限もあるので、正直もどかしく思うようなこともいろいろありますね。
仕事中のできごとで印象に残っていることは?
コロナ前ですが、デイサービスにいたころ、おやつ作りのレクリエーションがあったんです。ふだん参加しない人も大勢集まってフルーチェをつくりました。
牛乳を入れて混ぜる、器に移すだけなんですが、誰かが「おいしくな~れ、おいしくな~れ」って言い始めて。その姿が本当に愛おしくて、そのうち皆で「おいしくな~れ」って言いながらつくったフルーチェが、本当においしかったんですよね。
いつものフルーチェなんだけど格別に感動した記憶があります。ふだん話さない人とも交流できたし、素敵な思い出の一つです。
介護士さんにありがちな「介護士あるある」教えてください
話すスピードがゆっくりかもしれません。高齢者のかたと接するときは、右側が聞こえづらそうだな、片手が動かしにくそう、なんてことも自然と観察していますね。
夫からは何であなたの声だけ耳の悪い人にも通じるの?って不思議がられることもあります。
あと、腰痛はあります。負担のかかりにくい介助の仕方はトレーニングしているんですけれど、いつも条件が整っているわけではないので。
ご自宅での身体介護だと、狭い場所でムリすることもあり、正しい姿勢がとれず腰を痛めるなんてことも。
40歳をすぎると筋力低下が…。体力がないと夏バテ、病気にもなりやすいので、腰痛予防も兼ねてふだんから運動するようにしています。理想のおばあちゃん像を目指してがんばります(笑)
その仕事は、ずっと続けますか?
次は、転職というよりも独立かなって思っています。整理収納アドバイザーの資格を活かした片づけ関連の副業もしているので、そっちを充実させてもいいかなって。
もしくは、介護保険でカバーできない部分に特化したサービスを提供する事業所もあると聞くので、利用者さんのより必要なサポートができる訪問介護の業務にも興味がありますね。
今後、どんなふうに働いていくのが理想ですか?
一番やりたいのは、自宅で終末を迎えたいと考えている利用者さんが安心してすごせるようなサポートづくりです。
そのために、生前整理アドバイザーと福祉住環境コーディネーターの資格を取得できたらいいなって。フリーランスで仕事するなら、やっぱり資格や肩書きがあると説得力あるかなと思うので。
高齢者の場合、転んでいきなり入院なんてことも。そんなとき、親族と連絡がとれず慌てたり、遠方に住むご家族が駆けつけてくれても、本人の家で保険証や薬手帳を探すのにひと苦労なんて話もよく聞きます。連絡先や大切な書類を整理するお手伝いも必要かなって。
利用者本人はもちろん、ご家族も安心してもらえるような仕組みづくり、その人らしい暮らしを守るための支援を続けられたらいいな~と考えています。
仕事をきっかけに2つの資格を取得し、今後のために新たな資格に挑戦予定の松田さん。地道に着実に、自分らしいキャリアアップを計画中です。
取材・文/西田有紀 企画/サンキュ!コメつぶ編集部