しっかりした子どもを育てるためには、世間体を気にしすぎないことが大切? NPO法人育て上げネット理事長・工藤啓さんとイラストレーター・上大岡トメさんに編集部がうかがいました。
私の時代はこうだった、うちの親戚はああだった……常識や一般論、“いわゆる普通”にとらわれている世間体ママ。でも本当にそう? “世間体を気にしすぎるママあるある”を考えます!
子どもを自分たちの思いどおりに進学させようとしていませんか?
工藤:まだ多くの親が「自分たちが学生だったころと今の子どもたちの時代は、大きく変わっている」ことに気づいていません。しかし、親の価値観が今の時代に合っているとは限らないんです。
上大岡:よかれと思ってガミガミ言いすぎたりね。わが家では娘が高校に合格したその日に、「これからはもう『勉強しろ』って言わないでね」と宣言されました(笑)。私自身、偏差値重視の学生時代を送ったので、知らず知らずのうちにその価値観を子どもたちに押しつけていたんだと思います。子育てで反省すること、多いな……。
工藤:「私が原因」と、自分を責めたり、反省したりするママが多いんですが、覚えておいてほしいのは、「子どもの話を聞くのに、もう遅いということはない」ってことです。だから、どんなママも、どうか自分を責めず、たわいのない親子の会話から始めてみてほしい、そう心から思います。
子どもの挑戦を頭ごなしに否定することも
工藤:子どもの挑戦に対して、頭ごなしに否定するのではなく、まずはよく話を聞く。時には子どもの身の丈に合っていない挑戦であっても黙って見守る。失敗してもその経験を認めてあげる。そんなふうに伴走できると、親子の信頼感が増すし、子どもは失敗を恐れなくなるんですよ。
上大岡:実はうちの娘、「就活したくないから大学院に行く」なんて言ったと思ったら、「やっぱり違う分野に進路変更したい」と大学卒業後に専門学校に進んだんです。聞いたときは予想外の話に動揺しましたが、とにかく話を聞きました。新しい道に進んでいきいきしている娘を見ると、よかったなと思います。
工藤:トメさんがしっかり話を聞いてあげたことは、娘さんのエネルギーになっていると思いますよ。
突然、「社会性」や「一般論」を振りかざしたり……
工藤:「社会性」や「一般論」を振りかざすのは、どちらかというと父親が多いのですが、経験の浅い子どもに対して、社会や常識を持ち出し、支配的態度を取られたら、子どもは何も言えないですよね。
上大岡:確かに、脅しのような言葉かけをされたら、子どもは「言ってもムダ」と萎縮してしまいますね。
工藤:浪人も留年もせず大学を卒業し、すぐに企業に就職して3年以上働いている人のことを、私たちの業界では“ストレーター”と呼んでいるのですが、昔だったら普通であったこのストレーターが、今は3~4割しかいないんです。つまり6~7割はもはや普通じゃない。普通のあり方が大きく変化していることを、親として知っておいてもいいと思います。
親のキャリア観を子どもに押しつけたりも
工藤:かつては「終身雇用」という言葉がありましたが、今は大企業に就職したからといって、一生雇われる保障はありません。就職に際して、「そんな会社名、聞いたことがない」と大企業以外を敬遠する親もいるようですが、もはやそういう時代ではないのです。今を見ずに昔のキャリア観を引きずっている親こそ危険です。
上大岡:そうですね。私も2人の子どもの子育てを通して、いろいろな経験をしました。成人しても心配は尽きない日々ですが、私にできることは、子どもを送り出し、困ったときには力になること。そのためにも、私自身が人としてもっとたくさんの経験を積まなければ、と思っています。
まとめ:世界は広い! 子どもにちゃんと冒険させよう
先行き不透明な将来に対して、子どもが心配で、あれこれ口出ししてしまう気持ちはわかります。でも、子どもの人生は子どものもの。子どもを信じてみましょう。信じるということは、相手を「一人前」として認めること。子どもが一人前になるには、冒険が必要です。
世間体にとらわれすぎず、まずは子どもを信じること。常に心に留めておきたいですね。
<教えてくれたのは…認定NPO法人育て上げネット理事長/工藤啓さん>
若者の「働く」と「働き続ける」を実現するため、若年無業者就労基礎訓練など多方面からの支援を行う。 https://sodateage.net/
<教えてくれたのは…イラストレーター/上大岡トメさん>
著書に『キッパリ!たった5分で自分を変える方法』(幻冬舎文庫)などがある人気イラストレーター。25歳長女と22歳長男あり。『子どもがひきこもりになりかけたらマンガでわかる今からでも遅くない親としてできること』(¥1,118/KADOKAWA)
参照:『サンキュ!』5月号「将来自分でしっかり食べていける子に育てるには?」より一部抜粋。掲載している情報は18年4月現在のものです。
イラスト/上大岡トメ 構成/竹下美穂子 取材・文/宇野津暢子
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