体にこたえる暑さが続く日々、冷たい水をゴクゴク飲むと気持ちがいいし、しっかり熱中症対策をできている気がしますが、じつは「冷たい水をたくさん飲んでも熱中症対策にならない」場合があることをご存じでしょうか。
今回は、気象予報士・防災士の資格を持つライター・植松愛実が、やりがちな熱中症対策の間違いと、効果的な水分補給のコツを解説します。

冷たいものを飲みすぎると…
暑い日に冷たいものを摂取するということ自体は、一時的に体温を下げる効果があり、熱中症への対策になります。ただ問題は、冷たいものを飲みすぎてしまった場合です。
冷たいものを継続して飲み続けていると、だんだん胃腸が冷えてしまい、水分や栄養の吸収が悪くなっていきます。その結果、水分が足りなくなって脱水症状を起こしてしまったり、体がエネルギー不足で熱中症になりやすくなってしまったりするのです。
暑い日はたしかにキンキンに冷えたものがほしくなりますが、常温~少し冷たいくらいの飲み物を中心に水分補給をするよう心がけましょう。
じつは飲める量に限界アリ
冷たすぎる飲み物がよくないなら、常温~少し冷たい程度であれば、飲めば飲むほど熱中症対策になるのかというと…これがそうでもないのです。というのも、人が吸収できる水分には限界があるため。
私たちの体は、おもに小腸で水分を吸収しますが、そもそも胃から小腸へ運べる水の量は大人でも1時間あたり1.5リットル程度といわれています。つまり、それ以上の量を一気に飲んだところで、意味がないのです。
さらには、汗をたくさんかいていたり、もともと塩分が足りない生活をしていたりすると、塩分の含まれない飲み物を大量飲むだけで病気になってしまうことも。「低ナトリウム血症」といって、塩分が足りない状態で水分だけを摂取することで、最悪の場合は意識障害など重症になることもあります。汗をかいたときや、朝食を抜いた日などは、水分と一緒に塩分もとりましょう。
そもそも飲み物だけでは体は冷えない!?
ここまで、冷たすぎる飲み物はよくない、冷たすぎなくても多すぎるとよくない、という話が続いたので、「そんなにいろいろ気にしていたら、暑い日に体を冷やせないよ!」と思った人もいるかもしれません。でもじつは、そもそも飲み物だけで体を冷やそうとすること自体、効率が悪いのです。
というのも、私たちが飲んだものは食道や胃といった、いわゆる消化器系の臓器をとおるわけですが、熱中症対策で冷やす必要があるのは血管なので、飲み物では直接冷やすことができないため。血管を冷やそうと思ったら、わきの下や首のうしろなど、太い血管がとおっているところを保冷剤や冷却機能つきのグッズで冷やすほうが効率的です。
効率的な熱中症対策で夏を乗りきろう
年々厳しくなる日本の夏、もはや熱中症対策をまったくしないという人は少数派になってきていると思いますが、それでも意外と間違った水分補給をしてしまっている人がけっこういます。今回ご紹介したコツをおさえて効率的に対策して、猛暑を乗りきりましょう!
■執筆/植松愛実さん
気象予報士と出張料理人の両面で活動中。気象・防災に関するヒントのほか、野菜ソムリエ・食育インストラクターとしておいしい食材のおいしい食べ方を発信中。
編集/サンキュ!編集部