台風や地震にそなえて、わが家には2Lペットボトルのミネラルウォーターがたくさん備蓄してあるから安心!と思いきや…、もしかしたらその備蓄、いざというときに困る「落とし穴」がひそんでいるかもしれません。
災害でライフラインが止まってしまった状況で在宅避難をするとき、どんな問題が発生するのか…?今回は、気象予報士・防災士の資格を持つライター・植松愛実が、災害時に後悔しないための備蓄のコツを解説します。

せっかく備蓄しても使えないことも!?
近年、各地で豪雨の被害がたびたび報道されることもあって、スーパーやホームセンターで山積みに売られているミネラルウォーターがあっという間に売りきれる光景を、筆者もよく見るようになりました。一般に、災害にそなえ最低3日分の水を備蓄すべきと言われているので、水をしっかり買いそろえようとすること自体は大切なのですが…、どんな「水」を備蓄すべきかは家庭によって異なります。
たとえば、小さな子どもがいる家庭の場合、子どもは硬度の高い水を飲みたがらないこともありますし、赤ちゃんの粉ミルクをつくるにはミネラルの入っていない水が適しているとされています。そのため、備蓄用の水を買うときには硬度の確認が必要。最近は「赤ちゃんのミルクに使えます」と明記されている水も売っているので参考にしてください。
また、お年寄りはそもそも水分補給に「水」ではなくお茶をほしがることも。水だし用のティーバッグを一緒に備蓄したり、あるいはペットボトルのお茶をあわせて備蓄したりと、家族が飲みやすいものを考えましょう。
備蓄は「小分け」がおすすめ
水の備蓄に関して、もうひとつのよくある落とし穴が、「2Lの大きなボトルばかりで備蓄してしまう」パターンです。もちろん大きなペットボトルはコスパもよく、比較的少ない本数で大量に備蓄できるので便利ですが、実際に使う場面を考えると「小分け」がおすすめ。
理由はいくつかありますが、ひとつには、備蓄品はできるだけ分散させたほうがよいからです。たとえば押し入れなど1カ所にまとめて水を置いておくと、地震で家が傾いて押し入れが開けられなくなってしまったり、押し入れのある部屋だけがつぶれてしまったりした場合に、もう使えなくなってしまいます。そのため、水をはじめ備蓄品は、リビングや寝室や玄関の収納など複数の場所に「小分け」して収納しましょう。
また、災害時に使い捨ての紙コップを切らしてしまったときでも、500mlペットボトルなら口を直接つけても短時間で飲みきってしまえばOK。さらには、料理などに水を使う際、満タンに近い状態の2Lペットボトルだと女性が片手で持って傾けるのが難しいですが、500mlなら簡単にあつかえます。
じつは紙パックも備蓄に最適!
ここまで、ペットボトル飲料を上手に備蓄するコツを解説してきましたが、じつはそもそも、ペットボトルにこだわる必要はありません。紙パックの飲み物も意外と備蓄にむいているのです。
紙でできた容器なんて保存性が低いのでは…と思われそうですが、最近は技術が進歩していて、長期間保存できる紙パック飲料がかなり出ていますし、紙パックなら200ml程度の飲みきりサイズの商品が多く、かつ飲み物の種類も多いのが魅力です。
豆乳や野菜ジュースのほか、ロングライフ牛乳と呼ばれる常温保存できるタイプの牛乳もあり、災害時に不足しがちなタンパク質やビタミンを補えるのもポイント。スーパーの売り場で冷蔵の棚に並んでいても、パックの表示を見ると常温保存できるものがかなりあるので、買出しの際にぜひチェックしてみてくださいね。
いざというときに"後悔しない"備蓄をしよう!
2011年の東日本大震災をきっかけに多くの人が備蓄を始めるようになり、また近年の豪雨被害によって防災意識が高まってきているのを筆者も肌で感じています。以前はとにかくなんでもいいから備蓄を「始める」ことが重要だったのが、だんだん備蓄の中身をしっかり考える時代まで来ているのではないでしょうか。
ぜひ今回ご紹介したコツをおさえて、自宅の備蓄を見直したり、スーパーやホームセンターで買出しをするついでに自分の家庭にあった商品を探したりして、いざというときに"後悔しない"ための備蓄をしていきましょう。
■執筆/植松愛実
本業の気象予報士と副業の料理人、2足のわらじを履く主婦。誰かに教えたくなるお天気の豆知識や災害に備えるコツ、「食」に関する情報を中心に発信中。
編集/サンキュ!編集部