【連載】書店員は、見た!「読書感想文は、親にとっても一大事!」

2018/10/15

『サンキュ!』の取材でお会いしたYさん。書店の案内カウンターで働いています。毎日、本を探す人々から、さまざまな問い合わせを受ける日々。そのなかにある人間ドラマのあれこれをお伝えしていく連載です。

読書感想文は、親にとっても一大事!

夏休みが始まりました!この時期の書店は、自由研究や読書感想文のコーナーをつくり、なかなかの活気です。私も早速、息子(高一)と読書感想文用の本を買いに近所の書店に出かけました。「この作家さんはいいよ!これは感想文向き。でも、たぶんキミの好みでいうと、こっちのほうがいいかも」とか、「古いけど、これは読んでおくべきよ!」とか、まくし立てる母(私)と、圧倒される息子。

息子がお会計に行っている間、棚を物色していたら、近くにいた女性から声をかけられました。「あの~、中学生の感想文向けの本で、おすすめはありますか?」

え?今、私もお客さんだよね? 

買い物をしていたのは、私の職場ではない、別の書店なのです。なんだろう、この不思議な状況は……。結局、数冊の本をご紹介。図らずも他店の売り上げに貢献してしまいました。

今回は、そんな番外編(?)からスタートしましたが、私の働く書店にも続々と、感想文用の本の問い合わせにお客さまがいらっしゃいます。「これ、話題の本だからきっといいわよね?」。素晴らしい本ですが、女性の老後の生き方を描いた作品で小学生にはどうでしょうか……。「うちの子、本はあまり読まないんだけど、これどうかしら?」完結まで全4巻ありますが大丈夫ですか!?といったぐあいです。

「これ、感想文向き?」とのお問い合わせに、とてもよい本ですよ!とお答えしたところ、おもむろに手帳を取り出してペンを構え、「それならあらすじを結末まで教えてくださる?」。あああ、お客さま!それはダメです(笑)!!お母さんの本気を垣間見ることができるのが、この時期の書店なのかもしれません。

ちなみに、私が今年おすすめしているのは、『かがみの孤城』と『さよなら、田中さん』。前者は、今年の本屋大賞に輝いた名作。親御さんもぜひ読んでみてください!と、必ずお伝えしています。『さよなら、田中さん』は、なんと作者が中学生!ぜひ、同世代の子どもたちに読んでほしい一冊ですが、作者の年齢を知らずに読んでも素晴らしいですよ。

おまけになりますが、息子に薦めたのは『六番目の小夜子』。息子から「こないだ買ってもらった小説、すごく面白い!」と言われたとき、書店員であり、母でもある私は、小さくガッツポーズをしたのでした。

※個人情報が特定されないよう一部脚色しています。

Yのおすすめする本

『かがみの孤城』は、不登校になってしまった女子中学生が鏡の中の世界と現実を行ったり来たりするファンタジー青春小説。中高生に手放しでおすすめしたいと思える本は久しぶり。親の視点からも共感しました。『さよなら、田中さん』は、貧乏な母子家庭で育つ、小6の女の子の物語。中学生の作品ということに度肝を抜かれましたが、そんなこと関係なく面白く、泣けます。小学校高学年から、大人まで楽しめます。

かがみの孤城

さよなら、田中さん

<書店員Yさん>
日本海側にある地方都市にある書店に勤める。1男1女の母。休日は1週間分のドラマとため込んだ本にどっぷり浸るのが至福

イラスト/泰間敬視 取材・文/加藤郷子
『サンキュ!』2018年9月号より抜粋

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