子どもの発達に不安を感じたら…支援センターの取り組みを聞く

2019/03/31

子育てをするなかで、子どもの発達に不安を感じることは多々あります。そんなとき、相談の窓口になってくれるのが地域の支援センターです。しかし、どんなタイミングで相談すればいいのか?どんな支援をしてくれるのか?など、心配に思うママ・パパも少なくないでしょう。

そこで今回は、乳幼児の成長に関する心配ごとの上位を占める「言葉がなかなか出てこない」という悩みを例に、支援センターでの取り組みについて専門家にお話をお聞きしました。
(取材・文/みらいハウス 渡部郁子)

子どもの発達に関する相談窓口では、どんな対応が行われる?

今回お話をお聞きしたのは、足立区こども支援センターげんき、支援管理課発達支援係の平林尊子さんです。

平林さんは、0歳から18歳未満の子どもの発達に関する相談について、電話や面接で対応する福祉専門家です。発達に関する相談のなかでは、2~3歳児の相談がいちばん多く寄せられるとのこと。

――言葉が出てこないという相談はどのようにこちらに届きますか?

行政で全乳児を対象に行っている1歳半健診と3歳児健診のときに、言葉の発達に関する相談を受けることが多いです。また、健診時に保健師などから見て、言葉の発達について気になるお子さんがいるとき、こちらの相談窓口を紹介するように案内しています。

発達支援係では、0歳から18歳未満の子どもの発達に関する相談を扱っています。言葉の遅れのほか、発育が悪い、落ち着きがないなどの相談が多く、電話や面接で対応しています。


――相談を受けたら、どのようなご案内をするのでしょうか?

必要なお子さんには保健心理士との面談機会をつくり、発達検査ののち、療育機関を紹介します。療育機関とは、言葉や身体機能などの発達の遅れを改善するトレーニングを行う教育施設です。

専門職のスタッフと1対1でコミュニケーションの練習をしたり、10人前後のグループで親子いっしょにかかわりながらグループワークをするなど、さまざまなトレーニングがあります。

ただ、言葉の相談を受けたときに、すべてのお子さんに療育を案内するわけではありません。例えば、1歳半健診で、言葉が出てこない、アーとかウーといった喃語(なんご)も出てこないという場合、まずは耳鼻科に行って、耳の聞こえを確認するようにすすめることもあります。

耳あかが詰まっていたり、滲出性(しんしゅつせい)中耳炎で聞こえが悪くなっているというような場合、言葉の発達に遅れが出ることもあるからです。

3歳児健診で、耳の聞こえに問題がないのに言葉が出てこない場合は、子どもの反応を確認します。初めて会った大人にどんなふうに接するかを確認したり、いろいろな質問を問いかけて様子を見ます。

母子手帳には、1歳6カ月のページに初めて、言葉の発達についての項目が出てきます。単語を話し始めるのがこのころで、2歳になれば2~3語程度の言葉をつなげて会話ができるようになってくるお子さんが多いので、3歳で言葉が出てこない場合は、反応により言葉を理解しているかどうかを確認します。


――療育施設が必要なお子さんとは?

年齢に対して発達がゆっくりなお子さんの場合、幼稚園や小学校などの集団に入ったときに適応することがむずかしい場合があります。そのようなお子さんが療育を受けることで、集団に適応できる能力を身につけることを促します。

耳から言葉を理解するのがむずかしいお子さんには、絵を使って目で見て理解する力をつける訓練をしたり、できることとできないことの差が大きいお子さんの場合は、得意なことを伸ばして、苦手なことも少しずつできるように促します。

また、親から子への働きかけについても指導します。子どもが理解しやすい声がけ方法や、言葉が出てくるような声がけを促し、子どもの発達を支援するとともに、親を支えることにも取り組んでいます。

支援だけでなくアドバイスの場でもある療育機関

――言葉が出てこない場合も、療育により効果があるということですね。

療育は子どもの発達支援だけでなく、大人に子どもへのかかわり方についてアドバイスする場所でもあります。アドバイスにより、まわりの大人が子どもへの声のかけ方を変えることで、子どもの言葉が出てくることがあります。

例えば、言葉が出てこないけれど、大人の言うことは完全に理解しているというようなお子さんがたまにいます。そういう場合、たいてい大人が、子どもの要求を先回りしているため、子どもが声を出して話す必要がないから、言葉が出てこないということがあります。

そんなときは、先回りしないで子どもが話すチャンスをつくりましょう、とアドバイスします。まずはご自宅で1カ月、言葉のかけ方を変えてみるようお伝えします。家庭であまり効果がなければ、療育機関をご案内します。療育に通うと、具体的にどのように声をかけたらいいのか、親も学ぶことができるのです。


――療育は保育園とは違って、共働きの家庭の場合、通うのがむずかしいのではないでしょうか?

毎日通う必要はありません。土曜日だけ療育に通うというお子さんはたくさんいます。週に1回でも、そのときに家でのかかわり方についてアドバイスを受けることで、効果を感じるかたが多いと思います。


――たいていは1歳半か3歳児の健診で相談を受けるとのことでしたが、言葉について相談したいと思ったとき、どのタイミングで相談したらいいでしょうか?

2歳になっても単語が出てこない場合は、一度相談していただけると安心です。1歳半健診で様子を見ましょうと言われてそのままになっているお子さんもいるかもしれません。支援が必要な場合、早く始めたほうが支援を受けられる期間が増えるので、不安を感じたら気軽に相談してください。

療育支援はいつまで行われる?

――相談や療育支援はどのくらいの期間続くのでしょうか?

期間については、お子さんや家庭によりさまざまです。療育に通って言葉が出るようになったお子さんに、今度は吃音(きつおん)が出てくるなど、お子さんによって一人ひとりさまざまな発達がありますから一概には言えませんが、子どもの発達に関して親の不安がなくなったところで支援は終了します。育児に関して本音で相談できる場所ですから、子育て中に不安があれば、いつでもご相談ください。


――ご自身も子育て中とお聞きしました。

日々、専門職員がお母さんたちにアドバイスしている内容を聞いてきたので、自分の子育てに生かされています。子どもにどのように声かけしたらいいのか、どんなふうに接することが発達するうえで好ましいのか、などとても参考になります。

例えば、「走っちゃダメ」と言う代わりに「手をつないで歩こう」と声をかけるなど、肯定的な言葉で話しかけることや、どうすればいいかわかるように声をかけることで、子どもの行動が変わります。また、子どもを褒めることは、自己肯定感を育てるうえでとても大事なことだと感じています。安心できる家庭があってこそ、子どもがすくすくと成長できるのだということに、いつも気づかされます。

◇◇◇

取材を終えて、あらためていろいろな子どもがいて、いろいろな発達の仕方があることに気づきました。インタビューでは言葉を選び、慎重に発言していることが感じられ、相談員は日々、デリケートな問題を扱っているのだということがうかがえます。

例えば療育をすすめたことで、自分の子が発達障害かもしれないと落ち込んでしまう親や、療育なんて必要ないと怒り出す親もいるとのこと。自分の子育てを否定された気持ちになるのかもしれません。

今回のお話を聞いて、支援センターは気軽に相談できる場所なのだと知ることができました。お話の最後にお聞きした、今すぐ子育てに役立つアドバイス。ひとつは子どもへ前向きな言葉をかけること、そしてもうひとつは子どもをほめること。ぜひ実践していきたいと思います。

■取材・文/みらいハウス 渡部郁子
東京都・足立区にある育児期の女性支援拠点「みらいハウス」のライティングチームメンバー。育児と仕事にまつわる社会課題への取り組みや、子育てしやすい地域環境を構築する活動をしている。保育園に預けない働き方を実践して子連れ歴6年。1児の母。

構成:サンキュ!編集部

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