「きょうだいのえこひいき」アウトとセーフの分かれ道
2019/04/08
「きょうだいのえこひいき」があるのは残念だけれど仕方がないこと。なぜ自分がえこひいきをしてしまうのか、その理由を知ることで、「アウトなえこひいき」を「セーフ」に変えることができます。ファミリー心理カウンセラーのよしおかゆうみさんに、その方法を聞いてみました。
●教えてくれた人……
よしおかゆうみさん(ファミリー心理カウンセラー)
専門は発達心理学。幼児教育に20年携わったのち現職に。家庭に事情がある子を里子に迎えた経験も持つ。著書に『男女の脳はすれ違うようにできている!』(枻出版社)など。
絶対ダメ!子どもの心に傷を残す「アウトなえこひいき」
えこひいきは仕方ないとはいえ、「アウト!」なえこひいきがあることも覚えておいてください。まずは、特定の子への暴言や無視。そして特定の子にばかり期待したり、目をかけたりすること。いずれもこの事実を本人やほかのきょうだいが意識すると、本来安心できる家庭という場所に緊張関係が生まれ、すべての子どもが自分らしい自分でいられなくなります。
(1)特定の子に暴力や暴言をふるってしまう
特定の子に暴力や暴言をふるってしまうきょうだいのうち、暴力や暴言をふるわれた子は「自分が悪いから」と思い込むもの。それを見たきょうだいはその子をばかにするようになり、きょうだい間に差別意識が生まれます。暴力や暴言をふるわれた子は自己肯定感が持てず、とくに思春期以降、引きこもりや強い反抗が現れ、温かい家族関係が築けなくなるおそれがあります。
(2)特定の子に交換条件を出してしまう
自分の思い通りにならない個性を持った特定の子に対して、親は無意識に「この子をコントロールしたい」という親のエゴを発動しがち。結果、「すぐ片付けないとおやつをあげないよ」など、脅しめいた交換条件を出すようになることが。そんな環境で育つ子どもたちは〝感情を使って人を操るコミュニケーション〞を学んでしまいます。
(3)特定の子をかわいがりほめちぎる
ほかのきょうだいの前で、いつもほめられる特定の子がいると、きょうだい間でそのポジションを巡る争いが起こります。ほめられる側、ほめられない側、いずれであっても、自分の意志より親の関心を引くことを重要視するようになり、基準が自分ではなく他者になってしまいます。これではしあわせな自立ができません。
(4)特定の子にだけ期待や時間をかける
親の思い入れや時間が1人に集中すると、ほかのきょうだいは自分の存在価値を見出せず、劣等感にさいなまれます。そして家庭への期待を捨て、家の外に癒しを求めるように。一方、過剰な期待をかけられて育った子どもは、期待に応えられなくなったとき、強い罪悪感を持つ場合が多く、全てを投げ出してしまいがちです。
「アウト」を「セーフ」にする方法
(1)イラっとしたらその場を離れて1人になる
関係がよくない子どもと狭くて距離が近い空間に一緒にいるのは、お互いにものすごいストレス。そんなときは「ママおねつがあるからあっちでねてくるね」などと説明して1人でしばらくその場を離れ、別の空間に行くのがおすすめです。今ここに1人、という環境に身を置くことで、高ぶった気持ちが落ち着き、子どもへのイライラも収まります。
(2)両腕を肩より上にあげて伸びをする
「そんな単純なこと?」と侮るなかれ。伸びは、心理学の世界ではとても効果的な行動療法で、その場でだれもが簡単にできるメジャーなテクニック。腕を肩より高く上げることで血流がよくなり、気分も両腕と同じく上向きに。伸びと合わせて深呼吸も行えば、浅くなっている呼吸が整い、イライラが収まります。
(3)まわりの大人に子どもを見てもらう機会をつくる
イラッとする子ほど外に出し、例えばママ友や青果店の人、あるいは地域のシニアなど、親でも先生でもない大人とかかわる機会を増やして。ママが「私がなんとかしなければ」と全責任を負う必要はありません。子どもは多くの価値観に触れることでぐんと成長します。
(4)ネガティブな気持ちをトイレットペーパーに書き出して流す
子どもや夫への不満、自分の子ども時代の寂しさや実母への怒りなど、心にたまった気持ちをトイレットペーパーに書いて〝水に流す〞のは心理学的にも有効な行動。ネガティブな気持ちを記した紙が流れ去っていく様子を一部始終見届けることで、気持ちが浄化され落ち着きます。
(5)心療内科に相談する
「私、このままじゃまずい」。そう思ったら、自分の町の心療内科をスマホやパソコンで検索し、受診を。院内にカウンセラーがいる心療内科だと、ゆっくり話を聞いてもらえるので、検索の際はカウンセラーの有無もチェックするのがおすすめです。
ママかパパのひとり占めの時間が子どもの自尊心を守る
どの子もみんな親をひとり占めしたいもの。「親から充分な愛情をもらった」という感覚こそが、将来困難を乗り越えるエネルギーになるからです。そのエネルギーをつくり出すのは、短時間でも親子がマンツーマンでいられるひととき。”自分だけ特別の時間”と感覚が自尊心を育てます。
「アウトなえこひいき」を続けていると、子どもの心に深く傷が残ってしまうこともあります。そうならないためにも、まずはえこひいきしてしまう自分を認め、セーフに変えていく努力をしていきましょう。
参照:『サンキュ!』4月号「きょうだいのえこひいき アウトとセーフの分かれ道」より。掲載している情報は19年2月現在のものです。イラスト/古谷充子 取材・文/宇野津暢子 編集/サンキュ!編集部
『サンキュ!』最新号の詳細はこちら!