共働き夫婦がやっておくとよいこととは?キャリアの視点で考える育休の過ごし方

2020/05/22

いまや共働き世帯は約7割。そのなかで、女性の育児休業取得率は8割台を維持しているのに対し、男性は6.16%(厚生労働省「雇用均等基本調査」2018年度)。10年前の1.23%と比べると上昇傾向にあるとはいえ低水準です。また、女性に関しても高い育休取得率の一方で、育児休業取得期間や育児のための短時間勤務制度の利用実績を見ると、出産前と同じ働き方ができている人はまだまだ少ないように感じます。

思い通りにキャリアを描けなくなると、仕事へのモチベーション低下にもつながります。出産後、育児をしながら夫婦で生き生きと働くには、どうしたらいいでしょうか。

今回お話を伺ったのは、IT企業で両立支援や女性活躍推進を担当している阪口千春さん。2016年にキャリアカウンセラーの資格を取得し、その直後に妊娠、出産。1年半の育休を経て2018年に職場復帰しました。ご自身の経験から育休中にやってよかったこと、やっておけばよかったこと、共働き夫婦がやっておくとよいことについて伺いました。
(取材/みらいハウス:渡部 郁子)

「子どもがいるからできること」で地域とのつながりをつくる

――育休中にさまざまな活動に参加したという阪口さん。「次のキャリアにつなげる」という視点で、さまざまな取り組みに参加したそうです。参加してよかった活動についてお聞きしました。

「いくつかありますが、まず、地域の広報紙で募集していた地元の子育て支援団体主催の『赤ちゃんが学校にやってくる』です。『高校生のライフデザインセミナー』と題した家庭科の授業の一コマに親子ゲストで参加するというものです。

ライフスタイルが多様化するなかで選択肢の一つに子育てを提示しようと、官民学が連携し、生徒への育児に対する具体的なイメージの訴求とともに、保護者の地域社会参加を促しています。よかったことは、子育てしていて大変なこと、うれしいことを高校生に話すことによって、『子育てって大変なことばかりじゃない、うれしいこともたくさんある』と客観的に見ることができた点です。

また、『赤ちゃんが学校にやってくる』活動への参加をきっかけに、主催団体であるNPO法人のスタッフとして、地域の子育て情報フリーペーパーの編集にも携わらせていただき、地域とのつながりをつくることができました」

▲「赤ちゃん学校」で使用したフリップと子どもの靴下、お気に入りのおもちゃ

夫と「育児、家事」をシェアするきっかけづくり

――育休中に、さまざまな資格の取得にも取り組んだという阪口さん。資格取得はどのように役立ったのでしょうか。

「興味を持った資格にとにかくどんどんチャレンジしました。保育士資格の取得、Points of you®(コーチングカード)エバンジェリスト、笑顔のコーチング認定ファシリテーター、パルシステム認定アンバサダー、富士フイルムイメージングシステムズ株式会社認定アルバム大使、ほめ写アンバサダー、おもいでばこアンバサダー等々です。

仕事のうえで、次につながる強みになりそうな資格、という視点で選びましたが、資格を取得することは単純に自分自身の自信を強めることにつながりました」

――資格の取得など、子育てしながらさまざまなことにチャレンジするためには、夫の協力が不可欠だった阪口さん。育休中から夫との「家事・育児」シェアに取り組んだそうです。

「同じ時期に資格を取得したキャリアカウンセラー仲間がセミナーや勉強会に参加し、スキルを磨いていくのを見て、焦りがありました。夫と相談し、『私が勉強できる時間』をつくってもらったことで、以前から学びたいと思っていたコーチングやキャリアカウンセラー仲間と開催する勉強会のときは、夫が子どもの面倒を見てくれるようになりました。資格取得のための勉強など、自分のやりたいことに没頭することで、心身のリフレッシュにつながりました。

また、育休復帰に向けて男女共同参画センター主催の『育休復帰セミナー』に夫婦で参加しました。行政が行っている子育て世代向けのセミナーは託児つきであることがほとんどです。会場施設内の託児サービスに子どもをお願いして、夫婦でセミナーに参加することができました。そのセミナーのおかげで、夫の家事に対する意識が変わったように思います。このセミナーは、今後のキャリアに対するお互いの考えを知る機会にもなり、とても有益でした」

家族ミーティングで伝え合う機会をつくる

――阪口さんは、家事や育児を夫とシェアするうえで重要だったのは「家族ミーティング」だったと話します。

「こまめに『家族ミーティング』をすることで、お互いの考えを話し合う機会をつくることがとても重要だと感じました。最初はうまくいっていたことも、ちょっとしたことですれ違いが出てきます。辛いとき、助けて欲しいとき、些細なことでも気になることは相手に伝えたほうがいい。そのため、こまめにミーティングを設定するようにしました」


――育休中に、資格取得などやりたいことにとにかくチャレンジした阪口さんですが、ほかにも「やっておけばよかった」と思うことがあり、家族ミーティングで話し合ったそうです。話し合いの結果、復帰後に取り組んだことは、「家の中の整理収納」でした。

「育休中に一気にモノを片づけて、整理収納の見直しをしておけばよかったなと思いました。モノが多いと片づけも大変ですし、何がどこにあるのかと探したり、着ていく服はどうしようと悩んだり、こまごましたことに多くの時間をとられてしまいます。『なるべくシンプルな暮らし』へシフトしておくことによって、もっと大切にしたいことに時間をかけられるし、心のゆとりにもつながります。

育休中にできなかったので、短時間からフルタイム勤務に復帰する前にはなんとかしようと、ライフオーガナイザーや整理収納アドバイザーのかたの力を借りて、家の中を断捨離しました。また、自分自身も整理収納の基本を学び、子どもが片づけやすい環境をつくる整理収納教育士の資格を取得しました」


――キャリアカウンセラーとして生き生きと働く阪口さんに、育児と仕事の両立についての秘訣をお聞きしました。

「育児と仕事をうまく両立している諸先輩がたの工夫やコツが詰まったヒント集をバイブルにしています。花王株式会社 生活者研究センターと慶應義塾大学SFC研究所 井庭崇研究室が共同制作したパターン・ランゲージ『日々の世界のつくりかた~自分らしく子育てしながら働くためのヒント~』という、育児と仕事の工夫をまとめた冊子とカードです。

▲『日々の世界のつくりかた~自分らしく子育てしながら働くためのヒント~』 花王株式会社 生活者研究センターと慶應義塾大学SFC研究所 井庭崇研究室が共同制作したパターン・ランゲージ

よくある子育てや両立に関する本やセミナーとは違い、自分だったらこうしようかなと自分に置き換えて考えられる抽象度でヒントが書かれています。『こんなはずじゃなかった』『どうして私ばっかり』と感じたときにめくってみると、モヤモヤや悩み、不安を解決するヒントが見つかるかもしれません。

育休後でも遅すぎることはありません。家族ミーティングなど、できることから始めてみてください」


◇◇◇◇

阪口さんのお話を聞いて、自分の時間をつくることや好きなことに取り組むことが、日々の生活を前向きにする大事な要素であることを再認識しました。育児をしながら夫婦が自分の時間をつくるためには、お互いの協力が不可欠です。育休中だからといってすべて一人でやろうと考えず、心の余裕があるうちに、家庭内の仕事についてシェアしたり、考え方を共有したりすることが大切だと、改めて感じるインタビューでした。


■取材・文/みらいハウス 渡部郁子
東京・足立区にある育児期の女性支援拠点「みらいハウス」のライティングメンバーです。子連れで取材活動に取り組む一児の母。育児と仕事にまつわる社会課題への支援事業や、子育てしやすい地域環境を構築する仕組みづくりを行っています。

 
 

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