悲しい表情をしたショックを受けた女性

プレ更年期からの不調は、女性ホルモンが関係している!?

2024/02/17

産婦人科医の対馬ルリ子先生と、女性のキレイをサポートする美容家の吉川千明先生が、女性ホルモンと、その変化によって起きるカラダやココロの変化についてわかりやすく解説する『もっとキレイの女性ホルモン塾』。

今回は、女性が、プレ更年期以降も元気&ごきげんに過ごすために、どのようなケアが大切なのかをご紹介します。
※発言者の先生のお名前は敬称略としております。

この不調、ひょっとして女性ホルモンの乱れが原因?

プレ更年期から、エストロゲンの助けが弱くなる
対馬「女性は性ホルモンの変化があるたび、心身ともに変動があります。毎月の月経周期でも体調のよいときと、不調な時期の波がありますし、更年期になると不調を感じる人が多くなります。

下のグラフは、性ホルモンの加齢による変化を、男女で比べてみたものです。

女性は40代半ばごろから急激に性ホルモンが減少して閉経を迎えると分泌量がほぼゼロになりますが、男性は減少のカーブがなめらかで、60~70代でもある程度、性ホルモンが維持されているのがわかります」

吉川「女性ホルモンは月経や妊娠・出産に関係するだけでなく、骨や筋肉、皮膚、粘膜、血管、脳、自律神経、メンタルなど、女性を守っている存在です。

女性は更年期ごろからの急激な性ホルモンの減少により、あらゆる器官の機能低下や老化が進んでいきます。私自身、40歳前後のころ、不正出血や喉が詰まったような感じ、動悸、酷い首や肩こり、ふわふわしたような感覚、肌の乾燥、関節の痛み、パニック障害などに悩まされていました。それでいろいろな診療科を回ったのですが、すべて検査結果は“異常なし”でした。仕事はうまくいっていたのに、毎日不安で眠れませんでした。

あるとき、ひょっとしてこれは女性ホルモンが関係しているのでは?と思ったのです。」

対馬「30代後半から40代前半の時期を、“プレ更年期”と呼びますが、実は名づけ親は私なのです。プレ更年期に婦人科で血液検査をしても、“ホルモン値は正常です。問題ないですよ〜”と、帰されちゃうことが多いかもしれません。

しかしこの時期から、ホルモンの働きは低下していて、月経周期や経血量に変化があったり、体に不調を感じていたりする人は多いのです。ホルモン値は正常範囲でも、以前の値よりは低下しているわけで、ご本人にとってはツラいわけです。まさに千明さんもこのパターンで、低用量ピルの服用でホルモンバランスが安定したので、さまざまな症状が軽快したのだと考えられます」

女性の体調不良の背景にあるものは?

体質や生活、女性ホルモンなどが絡み合っている
対馬「女性が『原因はよくわからないけどなんとなく不調』と訴える場合、女性外来では以下の3つの要素が原因になっているかもしれないと考えます。

その方が持つ体質・気質的背景、生活背景、女性ホルモン背景です。これらを複合的に見て、ケアをしていくことが大切です。

女性ホルモン背景には、低用量ピルやホルモン補充療法が有効で、体質・気質と女性ホルモンが重なっている部分には漢方薬も効果的です。

体質・気質的背景には、栄養や運動療法、カウンセリング、メンタルケアが必要です。それだけでは足りない人もいます。社会的に生活がおびやかされている人です。生活背景には、過去のトラウマ解消や、家庭・職場・地域などでの居場所づくり、自尊感情の回復、教育・就労の機会を得る、生きがいや人生観の見直しなどが求められます。これらの要素をトータルで捉えて、対策をとっていくことが大切になってきます」

プレ更年期&更年期のケア&治療は?

治療方法は多彩! アロマやサプリなども総動員
対馬「プレ更年期や更年期の治療というと、低用量ピルやホルモン補充療法(HRT)が頭に浮かびますが、低用量ピルは、ホルモンバランスを安定させますから、月経周期や量のコントロールに加えて、月経前症候群(PMS)の改善につながります。海外ではPMS治療薬としてよく使われます。

更年期以降の女性に行われるホルモン補充療法は、急激に減少する性ホルモンを補うことで、体やメンタルに生じている、あらゆる不調を改善することができます。しかしこれらの治療だけでは、すべて解消!とはいかないケースも多々あります。

以下の図をご覧いただきたいのですが、低用量ピルやホルモン補充療法に加えて、漢方薬、抗不安薬や抗うつ剤などメンタル系のお薬(ここまでは処方薬です)、カウンセリング、運動療法、アロマテラピー、鍼灸、整体、気功、サプリメントなどを組み合わせてケアをしていく必要があります」

吉川「私はノドのつまり感を改善するために、半夏厚朴湯を服用していました。そして、人に話を聞いてもらうとすっきりしますから、カウンセリングを受けるのもオススメです。

体を動かすことは、抑うつ状態の予防・改善にも効果があることがわかっていますから、ウォーキングなどの有酸素運動に加えて、ピラティスやヨガ、加圧トレーニングなどの筋トレも取り入れてみてください。尿もれの改善や予防には、骨盤底を鍛えるエクササイズがいいですね。運動する習慣をもつことが大切です。

アロマテラピーは、メンタルやホルモンによい作用をもたらします。たとえばゼラニウムは、嗅ぐだけで女性ホルモンに関係する不調を改善するといわれています。ベチパーは、鎮静作用があり精神的にリラックスする作用があるとされています。

サプリメントも有効で、基本的なビタミン・ミネラルだけでなく、抗酸化作用のあるポリフェノールやピクノジェノールなどをとるといいかもしれません。使えるものはすべて使って、毎日を元気にご機嫌に過ごしていきたいですよね」

女性が健康な生活を送るためには、信頼できる、なんでも話せる婦人科のかかりつけドクターを持つことも大切です。いろいろな治療やケアを試しながら、自分が元気に過ごしていける方法を探していきましょう!



(監修者 プロフィール)
対馬ルリ子(つしま るりこ)
産婦人科医 医学博士
医療法人社団ウィミンズ・ウェルネス理事長
NPO法人女性医療ネットワーク代表理事
1984年、東京大学医学部産婦人科学教室入局。都立墨東病院総合周産期センター産婦人科医長、2002年にウィミンズ・ウェルネス銀座クリニックを開院。全国600名の女性医師・女性医療者と連携し、女性の生涯にわたる健康のための情報提供、啓発活動等を活発に行っている。

吉川千明(よしかわ ちあき)
美容家 オーガニックスペシャリスト
メノポーズカウンセラー 
食、女性医療、漢方、植物療法、ファッション、インテリア、旅、とナチュラルでヘルシーな女性のライフステイルを提案する美容家。2002年よりスタートした産婦人科医の対馬ルリ子先生とのセミナー「女性ホルモン塾」は通算140回を超え、女性達にライフステージに合わせたケアの仕方の大切さを伝え続けている。

二人の共著『「閉経」のホントがわかる本 更年期の体と心がラクになる!』(集英社)が好評発売中。


取材・文/渡邉由希

 
 

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