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女性ホルモンの乱れによる不快な症状には、三大漢方薬がおすすめ!

2021/02/01

同じ病気でも女性と男性では治療薬が異なります。プレ更年期からの不調には、西洋薬では対処できないケースが多々あります。そんなときに女性の強い味方になるのが漢方薬です。どのように漢方を使ったらいいのか、漢方内科や漢方産婦人科で多くの女性の相談に乗っている、芝大門いまづクリニック院長・今津嘉宏先生のお話をご紹介します。

※10月28日に行われた女性の健康学校<ジョイラボ>のセミナー「女性と漢方」の内容を掲載しています。

男女では病気のなりやすさに差があるの?

男と女のアイコン。黒いアイコンが白い背景に分離されました。
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認知症、拒食症、うつ病は女性の罹患率が高い!
女性ホルモンは、女性のお守りであり、脳や骨、血管など全身に影響します。女性ホルモンは更年期に入ると急激に減少しますが、物忘れや認知機能、脳の血流、更年期のうつ病など、女性の脳にも大きな影響があります。

女性ホルモンのエストロゲンには、神経の保護や血流改善などの効果があり、さらには、セロトニンなどの神経伝達物質を増やし、働きをよくする効果があります。閉経以降はエストロゲンの分泌がゼロになるため、女性のほうがうつ病や認知症、拒食症などの発症率が高くなると考えられています(男性も体内で女性ホルモンがつくられていますが、生涯一定のレベルを保っており、女性の閉経後のエストロゲン量は、男性より低いことが多いとされています)。

漢方の考え方に「気・血・水(きけつすい)」というものがありますが、気は生命エネルギー(代謝や運動のエネルギー)、血は血液および栄養、水は血液以外の体内を循環している水分(汗や唾液、尿、関節液など)をあらわします。

男女でもっとも差があるのが「血(けつ)」で、女性ホルモンの変動による症状のことを「血の道症(ちのみちしょう)」と呼ぶことがあります。たまに漢方薬局などの店頭で、この言葉を見かけることがあるかもしれません。

血の道症とは、月経や妊娠、出産、更年期など、女性ホルモンの変動によって生じる、精神神経症状や身体症状のことをあらわします。月経前症候群(PMS)、出産後母体症候群、更年期障害なども当てはまります。

この血の道症など女性特有の症状には、昔から「三大漢方薬」と呼ばれるお薬が使われてきました。

三大漢方薬ってなに?どう使ったらいいの?

青白く痩せ形の冷え性の女性には、当帰芍薬散

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女性ホルモンの変動による症状には、婦人科領域の三大漢方薬と呼ばれる、「当帰芍薬散(トウキシャクヤクサン)」「加味逍遙散(カミショウヨウサン)」「桂枝茯苓丸(ケイシブクリョウガン)」がよく使われます。

どのような症状があるとき、どの漢方薬がよく使われるのかをあらわしたのが上の表です。順番にご説明します。

まず「当帰芍薬散」は、色白で痩せていて体力のない女性によく使われます。水と血に関する症状、たとえばめまいやたちくらみ、肩こり、足腰の冷え、むくみなどの改善に用いられます。

めまいは、水のバランスが悪いときに起きることが多い症状で、当帰芍薬散に、水分循環を整え、余分な水分を取り除く五苓散(ゴレイサン)を加えることで、症状がよくなるケースがあります。

この当帰芍薬散は、実は記憶学習力の改善にも効果があるとされていて、少し難しい話になりますが、アセチルコリン合成酵素の活性を回復させることから、認知症の予防にもなるといわれています。認知症は、発症まで20年ほどかかりますが、閉経前から当帰芍薬散を服用することで、認知機能の維持につながるかもしれません。また睡眠障害の緩和効果もあるとされています。

ストレスなどで、自律神経が乱れている時には?

イライラや不安感のあるキャリア女性には、加味逍遙散

うつ病の女性が何かを考える
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加味逍遙散は気と血の症状、体力は少し弱めで、のぼせ、肩こり、疲れやすさ、頭痛、多汗などがあり、不安感やイライラなどの精神症状があるときに用いられます。この漢方薬は、プレッシャーやストレスなどで、イライラや不安感などが強いキャリア志向の女性に使われることが多いかもしれません。

加味逍遙散に含まれるサンシン(山梔子)は、アカネ科のクチナシの実を乾燥させたもので、脳の中枢神経に働きかけ、交感神経と副交感神経のバランスを整える作用があります。そのため、イライラや不安感、落ち着きがない、気分が落ち込むなどの症状改善につながるとされています。

また更年期によく起こるホットフラッシュ(代表的な症状は上半身ののぼせ、ほてり、発汗など)や関節痛、筋肉痛などの症状にも加味逍遙散が用いられることがよくあります。加味逍遙散だけで症状がなかなか改善しない場合には、抑肝散(ヨクカンサン)という漢方を加えることもあります。

生理痛や生理不順が強いときには?

暑がりなのに下半身の冷えが強い女性には、桂枝茯苓丸

若い女性の腹痛に苦しんで
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桂枝茯苓丸は血の症状、体力はそこそこあるが、赤ら顔でのぼせやすいのに足腰が冷え、生理痛や生理不順、下半身の冷え、しもやけ、肩こり、めまいなどがあるときに用いられます。ニキビやしみなど皮膚トラブルにも使われます。

桂枝茯苓丸は、末梢微小血管の循環を改善するため、血行不良など、何らかの原因で血が滞っている病気によく用いられます。

イメージとしては、季節を問わず暑がりでたくさんの汗をかくのに、下半身の冷えがあるような、やや太めで朗らかな性格の女性が適応となります。

桂枝茯苓丸を服用しても、多汗や冷えなどの症状がなかなか良くならない場合には、ヨクイニン(ハトムギ)を併用することで症状が改善するケースがあります。


漢方薬は、なんらかの症状を感じたら早めに服用を始めるのがポイントです。上記の漢方薬はすべて保険適用となっています。プレ更年期を迎えて西洋医学(西洋薬)ではなかなか改善しない症状がある場合には、東洋医学(漢方薬)に通じた医師に相談してみましょう。

(監修者プロフィール)
今津嘉宏(いまづ よしひろ)
芝大門いまづクリニック院長
慶應義塾大学薬学部非常勤講師
藤田医科大学医学部客員講師
1988年、藤田保健衛生大学医学部卒業。慶應義塾大学医学部外科学教室助手、国保南多摩病院、国立霞ヶ浦病院、東京都済生会中央病院、慶應義塾大学医学部漢方医学センターなどを経て2013年、芝大門いまづクリニック院長に就任。外科、消化器分野の疾患にも精通しており、東洋医学の知識と併せて患者さんの訴えに適した治療方法の提案を行っている。


取材・文/渡邉由希

 
 

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