「帝王切開」の出産費用は高額!?利用できる助成制度を解説
2019/02/17
「帝王切開による出産の場合、公的医療保険や民間の医療保険など、費用面でのサポートがたくさんあります」と語るのは、社会保険労務士でファイナンシャルプランナーの井戸美枝さん。
自己負担をなるべく抑えるために、帝王切開の出産で利用できる制度について、今のうちにしっかり理解しておきましょう!
「帝王切開」でかかる費用とは?
帝王切開で出産をすると、入院や手術のほかに、その後の処置や投薬、検査などでさまざまな費用がかかります。
また、自然分娩の入院期間は4〜5日ほどですが、帝王切開の入院期間は1〜2週間になることも。個室を利用した場合はさらに差額ベッド代も発生し、入院費用がかなりかさんでしまいます。
帝王切開による出産費用の総額は、平均50万円といわれる自然分娩と比べて、10万〜30万円は高くなるケースが多いでしょう。
自然分娩を予定している人でも、出産の直前で緊急帝王切開となる可能性はありますので、金銭面のことは事前にしっかり考えておきたいですね。
帝王切開で出産した場合にもらえるお金
帝王切開は自然分娩より出産費用が高額になるケースが多いものの、公的助成制度や民間の医療保険などを利用すれば、実際に支払う額をかなり抑えることができます。
帝王切開には健康保険が適用される
出産は病気として扱われないため、原則として健康保険が適用されませんが、帝王切開による出産には健康保険が一部適用されます。
この「一部」とは、帝王切開にかかる費用のうち、主に医療行為にかかわるものが当てはまります。
・保険適用になるもの・・・・・・手術、投薬、処置、検査、入院関連の費用
・保険適用にならないもの・・・・・・入院中の食事代、差額ベッド代など
保険適用になるものは通常の医療費と同じで3割の自己負担。保険適用にならないものは10割の自己負担です。
「出産育児一時金」
帝王切開に限らず、出産する人が全員受け取れるのが「出産育児一時金」です。
支給額は、出産1人につき42万円。会社員や公務員なら、加入している健康保険や共済組合、自営業なら国民健康保険、専業主婦・パート・アルバイトなどで被扶養者なら扶養者が加入している健康保険からもらえます。
出産費用は医療機関によっても大きく違ってきますが、費用の大部分はこの42万円でまかなうことができるでしょう。
「高額療養費制度」
「高額療養費制度」は、1カ月間で保険診療による医療費が一定の限度額を超えた場合に、その超えた分が加入している健康保険から払い戻される制度。
帝王切開は健康保険が適用されるため、この制度を利用することが可能です。
各月の1日から末日までにかかった医療費で計算されるので、計画帝王切開で出産をする人は、月をまたがないように手術日を決めておくと、費用を抑えられる可能性も。
医療保険の給付金
民間の医療保険に加入している人は、手術給付金や入院給付金が下りる可能性があります。契約している保険商品の内容を確認し、保険会社に問い合わせてみましょう。
「医療費控除」の還付金
1年間にかかった医療費が10万円(総所得金額等が200万円未満の場合は、総所得金額等の5%の金額)を超えた場合、翌年に確定申告をすると、払った税金の一部が戻ってくるのが「医療費控除」です。
けがや治療・療養にかかった医療費のほか、妊娠・出産でかかった医療費も「医療費控除」の対象になります。
帝王切開による出産では、特に多くの医療費がかかっている可能性が高いので、出産の年に支払った医療費の領収書はしっかり保管しておきましょう。
帝王切開で出産した場合の支払額を計算
次のケースでは、実際に窓口での支払額がいくらになるのか、見てみましょう。
<Aさんの条件>
・出産費用総額・・・・・60万円
(うち、帝王切開手術費用は22万円。健康保険適用により、自己負担額は3割の6万6000円)
<Aさんが利用できる制度>
・出産育児一時金42万円
・3割負担(手術代・検査代などが保険適用)
まず、出産総額費用60万円から、健康保険の適用対象となる帝王切開手術費用22万円を差し引くと、健康保険適用外の出産費用が算出されます。
60万円−22万円=38万円
帝王切開でかかる22万円は健康保険適用により6万6000円になるので、健康保険適用外の出産費用38万円にプラスすると下記の金額に。
38万円+6万6000円=44万6000円
そして、ここから「出産育児一時金」42万円を差し引きます。
44万6000円−42万円=2万6000円
つまり、Aさんが実際に支払う額は2万6000円となります。
民間の医療保険に加入していれば、入院給付金や手術代がもらえる可能性もあるため、さらに自己負担を軽くすることができます。
まとめ
帝王切開で出産をした場合でも、自然分娩では適用されない健康保険や民間の医療保険などが利用できるため、実際の自己負担額はそれほど高額にはなりません。
ただし、出産費用は医療機関によっても大きく異なりますので、自分が出産する所ではだいたいどれくらいの費用がかかるものなのか事前に調べておき、ある程度のお金を用意しておくとより安心ですね。
教えてくれたのは・・・
取材・文/有馬未央(KIRA KIRA)