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不妊治療の保険適用がスタートしたけど、結局いくらかかるの?

2024/09/11

2022年に不妊治療の保険適用がスタートして前より治療が受けやすくなったものの、経済的な負担は今も悩みの種。治療にかかる費用や治療費の備え方など、気になるあれこれを専門家に聞きました。

FPオフィス「みのりあ」代表。体外受精により3人の男児を出産。不妊治療、育児、転職、起業の経験者としての体験...

>>>妊活·不妊治療のお金に詳しいファイナンシャル・プランナー 宮野真弓の記事をもっと見る

体外受精まで受ける想定で100万円準備が目安です

日本の紙幣100万円札幣。
kuppa_rock/gettyimages

不妊治療が保険適用になり、原因検査から体外受精までひと通りの治療を50万円ほどで受けられるようになりました。「でも思い通りに治療が進まないことは多々あります。体調や年齢にもよりますが、あと50万円あれば体外受精に数回再トライすることが可能。ですから家や車などに使う家計費とは別に、治療費として100万円見積もっておくと無理がありません。また子どもを授かるには夫婦の協力がマスト。どこまで治療するか、期間や予算も2人で話し合っておきましょう」(宮野さん)。

多くの治療が「3割負担」で受けられるように

医療費明細書
Yusuke Ide/gettyimages

これまでは保険が利くのは原因検査やその治療、タイミング法などに限られ、他は全額自己負担。しかし2022年4月から人工授精や体外受精なども保険診療になり、その分お金の負担が軽減されました。

体外受精は保険適用前は約50万円。今は約15万円で受けられるように。

・タイミング法(2022年以前から保険適用) ・人工授精 ・採卵 
・男性不妊の手術 ・体外受精 ・顕微授精 ・胚培養
・胚凍結保存 ・胚移植 ・バイアグラ



●リアルVOICE
「高額であることは覚悟していたけど、もっと早く妊娠できると楽観視していたので、保険適用でも出費は痛かった。保険の利かない漢方も高額でした」(まぽさん 治療開始は39歳)。


●リアルVOICE
「3日に1回通院しなければならないときは交通費が痛手でした。また、治療の全てが保険適用ではないので自己負担もあり、結局100万円以上使ってます」(ジャスミンさん 治療開始は37歳)。

不妊治療にかかる費用の例

※治療周期1周期での目安です。検査内容や治療回数によって金額は変わります

【人工授精】
一般不妊治療管理料 750円
・人工授精 5460円
合計 約1万円
※上記の費用以外に診察、検査、薬代などが別途かかります


【体外受精】
・採卵(10個) 3万1200円
・体外受精 1万2600円
・培養(胚盤胞5個まで) 2万4000円
・胚凍結(5個) 2万1000円
・凍結融解胚移植 3万6000円
合計 約14万円
※10個採卵して5個を胚凍結。翌周期以降に凍結融解胚移植を行った場合。上記の費用以外に診察、検査、薬代などが別途かかります


【男性不妊の場合】
・両側 Micro-TESE(顕微鏡下精巣内精子採取術) 14万7600円
・採卵(6個) 2万6100円
・顕微授精(6個) 3万円
・採取精子調整 1万5000円
・培養(胚盤胞6個まで) 3万2700円
・胚凍結(5個) 2万1000円
・新鮮胚移植 2万2500円
合計 約30万円
※顕微鏡を使った精巣内精子採取術によって精子を回収。6個の胚盤胞のうち1個を新鮮胚移植、残り5個を凍結した場合。上記の費用以外に診察、検査、薬代などが別途かかります

※「初めての不妊治療クリニック受診ガイド」(ベネッセコーポレーション)より

不妊治療にお金が下りる保険も

「不妊治療が保険適用になったことで、一般的な医療保険でも給付金が出る場合があります。ただし加入後2年間は不妊治療に対する給付が下りないのが一般的。いずれ子どもを持ちたいカップルは早めの検討がおすすめです」。

●日本生命相互会社
出産サポート給付金付3大疾病保障保険 “ChouChou!”
がん・急性心筋梗塞·脳卒中と死亡に加え、特定不妊治療や出産に備える保険(不担保期間あり)。特定不妊治療給付金は1~6回目は1回5万円、7~12回目は1回10万円。


●リアルVOICE
「加入していた医療保険から10万円超の保険が下りました。友人から聞かなければ請求していなかったので助かった。保険の確認は大事」(はなさん 44歳 治療開始は37歳)。

不妊治療に助成金が出る自治体が増加

東京都、福井県、秋田市など手厚い助成金を出している自治体があります。青森県では7月から生殖補助医療の無償化がスタート。地域によっては都道府県と市区町村の両方から助成金をもらえることも。自治体のサイトや広報誌などで確認を。

保険適用の場合、女性の治療開始は43歳までに

体外受精を保険適用で受けるには年齢と回数に制限があるので要注意。40歳未満の場合は子ども1人につき通算6回まで、40歳以上43歳未満の場合は3回まで。なお所得制限はなく、事実婚も対象になります。


<教えてくれた人>
妊活·不妊治療のお金に詳しいファイナンシャル・プランナー 宮野真弓さん
FPオフィス「みのりあ」代表。体外受精により3人の男児を出産。不妊治療、育児、転職、起業の経験者としての体験を踏まえたアドバイスに定評がある。京都府宇治市在住。

体外受精と流産を経験して赤ちゃんを授かるって、奇跡なんだと思いました。

サンキュ!読者モデルの山内藍さんは、お子さん2人を不妊治療で授かりました。治療経験をオープンにしているのは、「医学の力を借りて授かったことに負い目はないし、不妊治療を受けている人への理解がもっと進んでほしいから」。1カ月後に出産を控えた山内さんにお話を聞きました。


<不妊治療を経験した人>
サンキュ!読者モデル 山内藍さん(40歳)
●プロフィール
1984年、大分県生まれ。高校時代までは強豪校でバレーボールに打ち込み、大学生のときにモデルに。25歳で中国に渡り、中国と香港でモデル活動。大学時代から交際していた今の夫と遠距離恋愛を経て結婚し帰国。5歳の長女と取材当時おなかにいた長男を体外受精で授かる。

山内さんが不妊治療を始めたのは結婚5年目。「治療をして授かった友達が多く、私も医学の力を借りてみようと思いました。人工授精を4回してもうまくいかず、生理が来るたびに落ち込んだけど、体外受精で長女を妊娠。うれしくて涙があふれました」。
3年後、2人目を希望して再び体外受精にトライします。「でも、2回続けて流産して……。育っていない赤ちゃんの心音が止まるのを数週間待って手術をするのは本当につらかった。だけどどうしても長女にきょうだいをつくってあげたくて治療を続けました」。 
そして山内さんのおなかに新しい命が宿りました。「子どもを授かるって当たり前のことじゃない。その奇跡に恵まれたことに感謝しています」。


●山内さんの治療History
【長女】治療期間2年
山内さん32歳頃、夫44歳頃に治療開始
卵管造影 → 人工授精(4回) → 採卵 → 体外受精 → 妊娠
山内さん35歳、夫46歳のとき出産

【長男】治療期間1年半
山内さん38歳、夫50歳のときに治療開始
長女のときに採卵した卵子(2個)で体外受精 → 流産が原因の胎盤遺残で手術 → 体外受精 → 稽留流産 → 採卵 → 体外受精 → 妊娠
山内さん40歳、夫51歳のとき出産

保険適用の1人目と保険適用後の2人目。夫と「だいぶ安くなったね」と話しました

「2人とも体外受精で妊娠したけど、1人目と2人目ではかかった費用が全然違うねって、夫と話していました。保険適用されても適用外の治療や薬代、交通費などにお金はかかりましたが、それでもかなりありがたいです」。

うまくいかなくても、自分を責めるのをやめた

「妊娠は自分の力でどうにかなることではない。だから『私のせい』とは考えないようにしました。明るい気持ちでいた方が赤ちゃんが来やすくなるという先輩ママの言葉を信じ、口角を上げて暮らすように。落ち込む気持ちや不安にとらわれず、『次いこう!』とひたすら前だけを見て治療を受けていました」。


参照:『サンキュ!』2024年9月号「不妊治療をしている人のお金と気持ちのリアル」より。掲載している情報は2024年7月現在のものです。撮影/tsukao 取材・文/神坐陽子 編集/サンキュ!編集部

 
 

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