高額の医療費がかかったら…「高額療養費」の申請方法&戻るお金の簡単計算法
2018/12/28
長引く治療や入院などで、高額な医療費がかかった場合、健康保険からその一部が払い戻されることを知っていますか? 今回は、医療費の負担を軽減してくれる「高額療養費制度」について、ファイナンシャルプランナーの井戸美枝さんに詳しく教えていただきました。
「高額療養費制度」ってどんなしくみ?
思わぬ病気やケガで入退院を繰り返すと、医療費がかさみ、家計の負担が大きくなってしまいますよね。
そこで、1カ月の医療費の自己負担が一定の額を超えた場合に、加入している健康保険からその超過分が払い戻されるのが、「高額療養費制度」です。
自己負担の限度額は年齢と所得によって異なりますが、いくつかの条件を満たせば、負担額がさらに低くなることもあります。
自己負担限度額とは?
高額療養費の自己負担限度額は、年齢と所得によって異なります。
【高額療養費の自己負担限度額】
一般的な所得(標準報酬月額28万円〜53万円)の人の場合、下記の計算方法で自己負担限度額がわかります。
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8万100円+(総医療費ー26万7000円)×1%
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「標準報酬月額」とは、毎年4月、5月、6月の3カ月の平均月収をもとに、健康保険の等級表に当てはめて計算された金額を指します。
「多数回該当」でさらに負担が軽くなる
直近12カ月の間で3回以上自己負担限度額を超えると、4回目からは「多数回該当」となります。その場合は、その月の限度額がさらに引き下がり、負担が軽くなります。
健康保険組合によっては「付加給付」も
健康保険組合によっては、独自の「付加給付」として、自己負担限度額がさらに低く設定されている場合や、差額ベッド代が給付される例もあります。申請する際に勤務先に確認してみましょう。
いくら戻ってくるの?
例)交通事故に遭い、手術・入院などで高額の医療費がかかったAさんの場合
【Aさんの条件】
・ 35歳
・ 月収30万円
・ ある1カ月の総医療費(10割):100万円
【計算方法】
① 自己負担限度額を計算する
8万100円+(総医療費100万円ー26万7000円)×1%=8万7340円
Aさんの自己負担限度額は8万7340円。
総医療費100万円のうち、Aさんが窓口で支払う自己負担額は30万円(3割負担)。
次の計算で自己負担額から限度額を差し引くと、払い戻される金額がわかります。
② 払い戻される金額を計算する
30万円ー8万7340円=21万2660円
つまり、Aさんが高額療養費の申請手続きをすると、21万2660円が払い戻されることになります。
いつ、どのように申請するの?
1. 医療費を支払う
まずは医療機関の窓口で通常どおり医療費の3割を支払います。
2. 高額療養費申請書を提出する
診療日の翌月の1日から2年以内に、高額療養費の申請をします。
高額療養費申請書、健康保険証、医療機関の領収書など、必要なものをそろえ、各窓口へ提出しましょう。国民健康保険の人は、住んでいる市区町村の役所へ。会社員の人は、勤務先の健康保険組合や協会けんぽへ提出します。
3.払い戻しを受ける
提出された書類の審査を経て、健康保険から医療費が払い戻されます。
事前に申請する方法もある
医療費が高額になりそうな場合は、事前に加入先の健康保険に申請して、「限度額認定証」をもらっておきましょう。
医療機関に認定証を提出すれば、窓口では自己負担限度額のみを支払うだけですみます。
対象外となる医療費はある?
「高額療養費制度」の払い戻しは、健康保険の適用となる診療が対象です。次のような保険適用外の診療、患者の生活にかかる費用などは、払い戻しの対象にはならないので注意しましょう。
【対象外となる医療費】
・ 保険適用外の診療(インプラント、美容整形など)
・ 食事代
・ 住居費
・ 差額ベッド代
・ 先進医療にかかる費用
帝王切開は対象になる
妊娠・出産は病気とは見なされないため、健康保険が適用されません。ですが、帝王切開で手術費用がかかったときは、健康保険が適用され、「高額療養費制度」の対象となります。
自己負担額は世帯合算できる
1つの世帯で、同じ月に家族の何人かが病気やケガで医療機関を受診した場合、自己負担額が2万1000円を超えた分は、世帯で合算することができます。
合算した額が自己負担限度額を超えれば、高額療養費がもらえます。
まとめ
「高額療養費制度」については、その存在自体を知らない人も多く、高額の医療費を全額自己負担してしまっているケースもあります。
高額な手術や長期の入院をすることになったとき、お金の面で大きな不安を抱えることがないよう、今から制度の内容をしっかり理解しておきましょう。
取材・文/有馬未央(KIRA KIRA)