「毎日しっかり磨いているのに、なぜかむし歯や歯茎のトラブルが出てしまう…」
そんなお悩み、実はとても多いのです。
原因は、“正しいつもり”で続けているNG歯磨き習慣かもしれません。
今回は歯科医である野尻真里が、よく見る「逆効果になってしまう磨き方」を5つ紹介します。
【1】力いっぱいゴシゴシ磨く
「強く磨けばきれいになる」と思いがちですが、実は歯や歯茎を傷つける原因になってしまいます。
強いブラッシング圧は、歯茎を傷つけたり、歯茎が下がったり、知覚過敏を生じるなど、さまざまなトラブルのもとになります。
ポイント
・歯ブラシはペンを持つように軽く握ると、力の入れすぎを防げます。
・毛先がわずかにしなる程度の力加減が目安です。
・小刻みに優しく動かすのがコツです。
【2】たくさんうがいをする
歯磨き後に何度もお口をすすいでしまうと、歯磨き粉に含まれる有効成分まで残らず流れてしまいます。
特に、むし歯予防に有効なフッ素は、ある程度お口の中に残っていることでより効果を発揮するといわれています。
ポイント
・水は少量で、1〜2回だけうがいをしましょう。
・ぶくぶくは5秒程度の短時間で軽くすすぐのが理想です。
・歯磨き後すぐにマウスウォッシュを使うのは避けましょう。
【3】硬め・柔らかめの歯ブラシを自己判断で選ぶ
「硬いほうがしっかり磨ける」「柔らかいほうが優しい」と思っていませんか?
硬い歯ブラシは歯茎を傷める原因になり、柔らかすぎると汚れが残って歯周病リスクが高まることがあります。
歯茎の状態によっては硬さを変える必要もありますが、基本的には「ふつう」の硬さを選ぶのが安心です。
ポイント
・基本は「ふつう」タイプを選びましょう。
・メーカーによって“ふつう”でも硬さが異なることがあります。
・自分の歯ブラシが合っているかどうか、歯科医院で相談するのがおすすめです。
【4】短時間でサッと終わらせる
歯磨きが面倒に感じたり、忙しくてサッと済ませたくなる日もありますよね。
けれど、短時間では十分に磨けていないことが多いのです。
歯に付着しているプラーク(歯垢)は、排水溝のぬめりのように粘着力のある細菌の塊。
軽く磨いただけでは落ちません。しっかりブラシを当てて丁寧にこすり落とすことが大切です。
ポイント
・1回につき3分以上を目安に磨きましょう。
・動画を見ながら“ながら磨き”をするよりも、鏡を見て丁寧に磨くのがベスト。
・1か所につき5回ほど、細かくブラシを動かして汚れを落としましょう。
【5】歯間清掃をしない
どんなに細い歯ブラシでも、歯と歯の間の汚れには届きません。
実は、歯ブラシだけでは全体の約6割しか磨けていないといわれています。
歯間清掃は「物が詰まったときだけ」ではなく、毎日の歯磨きとセットで行うことが基本です。
歯と歯の間に入れたら、歯の面に沿わせて優しくこすり、汚れを落としましょう。
ポイント
・フロスまたは歯間ブラシは最低でも1日1回、特に夜に行いましょう。
・ただ通すだけではなく、歯の表面に沿わせて擦り落とすように動かすのがコツです。
・最初は血が出ても、炎症が治まれば出血は止まります。
ただし、サイズや使い方が合っていない可能性もあるので、歯科医院で確認を。
「磨いている」ではなく、「磨けている」かどうかを意識することが大切
毎日の小さな習慣を少し変えるだけで、歯医者さんでのクリーニング後のようなスッキリ感を自宅でも感じられます。
歯磨きは、“優しく丁寧に”が基本。
スキンケアと同じように、オーラルケアの時間も自分をいたわるひとときとして大切にしましょう。
正しい知識でケアを続ければ、お口の病気の多くは防ぐことができます。
今日からの“丁寧な歯磨き”で、未来の笑顔を守りましょう。
■執筆/野尻真里
一生涯生まれ持った自分の歯で健康に過ごせる社会の実現を目標に、様々な媒体や講演会で予防歯科に関する啓蒙活動を行う歯科医師。Instagramは@nojirimari
編集/サンキュ!編集部