【専門家が解説】暖房器具を効率的に使うなら「組み合わせ」が重要

2018/11/14

11月も半ばを迎え、冬支度を始めている人も少なくないはず。冬支度では、衣類はもちろん、暖房器具の準備も欠かせません。今回は、その暖房器具の効率的で安全な使い方を、家電コーディネーターの戸井田園子さんに解説してもらいます。

電気暖房の効率的な使い方を解説!

冷房器具の選択肢がエアコンや冷風機など数種類しかないのに対して、暖房はさまざまな種類の器具が用意されています。熱源は大きく分けて石油・ガス・電気の3タイプがあり、なかでも電気暖房は、エアコン、ファンヒーター、赤外線ヒーター(ストーブ)、床暖房、こたつなど非常に種類が豊富です。

電気暖房は、石油やガスといった燃焼系の熱源に比べて室内の空気が汚れにくく、炎が出ないため安全性も高いのが特徴。加えて、タイマー設定や温度設定が細かくできるなど、コントロールしやすく扱いやすいこともあって、広く使われている暖房器具になっています。特に夏も冬も使えるエアコンは普及率が非常に高いため、多くの家庭でメイン暖房として使われているのが現状です。

いいことばかりに思える電気暖房ですが、もちろん弱点はあります。快適かつ効率的に暖めるには、弱点を補う暖房器具を組み合わせることが必要になってきます。今回は、電気暖房を中心に、よりよい“暖房計画”の立て方と、使い方について解説します。

電気暖房の分類は大きく分けて2タイプ

電気暖房の“暖め方”については大きく分けて「部屋全体を暖める」と「直接体を温める」の2つに分類されます。それぞれ、詳しく解説しましょう。

部屋全体を暖めるタイプは手軽だが電気代が弱点

エアコンやファンヒーターといった暖房は「対流式」と呼ばれ、室内に空気の対流を起こして部屋を暖めることが可能です。素早く暖まるというメリットがある一方で、体に直接風が当たるため乾燥しやすく、それを不快に感じる人も少なくありません。

それに対して、赤外線ヒーター、オイルヒーター、パネルヒーターなどは赤外線で対象物(人・床・壁・天井など)をじんわりと暖め、その暖められた対象物から出る熱で、空間全体を暖めるのが「輻射式(ふくしゃしき)」。風が発生しないため、静かで乾燥もしにくいので快適性は高いのですが、暖まるまで時間がかかるというデメリットがあります。ちなみに「こたつ」は輻射式ですが、布団で囲うため、分類としては体だけを暖めるタイプになります。

対流式、輻射式のいずれも電気暖房の時点で熱源の出力に限界があることも覚えておきたいポイント。一般的な家庭のコンセントは上限が1500Wなので、電気暖房器具の出力も最大でも1500Wまでとなります。この出力の電気暖房1台では、10畳を超える大きな部屋全体を充分に暖めることはできません。加えて、電気暖房は灯油などほかの熱源に比べて、光熱費が高いのも弱点。寒冷地などにお住まいの場合は、ほかの熱源と併用するのが賢い使い方といえるでしょう。

体を直接温めるタイプは省エネ性〇、パワーは低め

ホットカーペットやあんかは「伝導式」と呼ばれ、直接触れることで体を温める暖房器具です。熱は接熱しないところには伝わらないので、部屋全体を暖めるパワーはありません。その分、消費電力が少なくすむので省エネ。エコ意識の高い人にもおすすめです。

快適で効率的な暖房利用の基本ルールは「違うタイプを組み合わせる」

以上のように、電気暖房には暖め方によってそれぞれメリットとデメリットがあります。そこで、利用する際にはお互いの弱点をカバーし合うように組み合わせるのがおすすめ。

ルール1:「部屋全体を暖める」ものと「体を温める」ものを組み合わせる

例えば「エアコン+ホットカーペット」「ファンヒーター+こたつ」「床暖房+小型ファンヒーター」など。これは体の一部や部屋の一部が寒いと感じるときにおすすめの組み合わせ。メイン暖房とは違うタイプで、局所暖房を追加して寒い部分をカバーする狙いです。

ルール2:部屋全体を効率的に暖めるなら「対流式」と「輻射式」を組み合わせる

例えば「エアコン+ファンヒーター」や「赤外線ヒーター+オイルヒーター」のように、「対流式」、「輻射式」どうしの組み合わせは非効率的。「エアコン+赤外線ヒーター」や「ファンヒーター+オイルヒーター」のように「対流式+輻射式」とし、それぞれの弱点を補いましょう。

“もっと”賢い暖房の使い方も紹介!

同じ電気暖房器でも、使い方しだいで光熱費に差が出ます。基本ルールを押さえたうえで、光熱費なども考慮したさらに賢い使い方もご紹介します。

“もっと”賢い使い方1:適材適所で使う

暖房を必要とする生活シーンは1つではありません。そして、すべての生活シーンでオールマイティーに対応できる電気暖房器具もありません。賢く使うためには、適材適所を意識する必要があります。

・部屋全体を長時間暖めたいなら、省エネ性が高い「エアコン」
・朝や帰宅時など短時間集中的に暖めたいなら、立ち上がりが早い「ファンヒーター」
・穏やかで静かに暖めるなら、じっくりゆっくり暖める「床暖房」
・洗面所やトイレは即暖性があり肌が触れても熱くない「小型ファンヒーター」
・スポット的に自分の居場所だけ暖めるなら「赤外線ヒーター」
・体をダイレクトに温めるなら「電気カーペット・こたつ」

このように、それぞれの特徴に見合ったシーンで使うようにしましょう。

“もっと”賢い使い方2:小まめな温度調節は有効!

冷房は小まめな温度調節や電源のオン・オフが効果的ではないこともありますが、暖房では充分に効果的。例えば、電気カーペットやオイルヒーターを「強」で運転し続けるのはNG!電気カーペットなら座っていないエリアの出力をオフあるいは弱にするなど、小まめに温度設定を変更するのが賢い使い方です。

エアコンも同様に室内の温度に合わせて出力の強・弱を小まめに切り替えれば、無駄な電力を使わずにすみます。ちなみに、一部のエアコンには「サーモスタット」と呼ばれる、温度によって自動で出力がオン・オフになる装置がついていることも。これがあれば、自身で小まめな調節をせずとも、無駄な電力をカットできます。そのほか、タイマーの活用も有効。消し忘れを防ぎ、無駄な運転をなくすことができます。

“もっと”賢い使い方3:空気を循環させて室内の温度を均一に

暖気は上昇するので、エアコンのように高い位置から吹き出された暖気が足もとまで到達するまでには時間がかかります。そんなときはサーキュレーターやサーキュレーター機能がある扇風機などで空気の流れをつくって、天井付近にたまった暖気を動かしましょう。サーキュレーターなら上向きに、扇風機なら棚の上などに置いて、使うと良いでしょう。

“もっと”賢い使い方4:窓際から侵入する冷気を遮断

冷気は主に、窓から室内に入ってきます。つまり、窓際で冷気の遮断ができればより早く部屋が暖まるということ。設置場所を移動できる器具は、窓の近くに置くようにしましょう。ただし、赤外線ヒーターはカーテンなどの布地に長時間触れると発火する恐れがあるので、オイルヒーターやパネルヒーターなど、表面が熱くならないタイプを利用してください。

“もっと”賢い使い方5:電気代を知ろう!

節約意識が高い人のなかには、自分がどれくらい暖房に電気代を使ったのかを知りたいということもあるでしょう。参考までに、電気代の計算式もお伝えしましょう。

<電気代の計算式 >
電気代=消費電力量(kWh)×電気料金単価(27円※)
消費電力量(kWh)=[消費電力(W)×使用時間(h)]÷1000

(※)主要電力会社10社平均単価

以上の計算式に、カタログや機器に表記されている「消費電力(W)」の数値と、自分が使用する「時間」を当てはまれば、おおよその電気代が算出できます。消費電力と消費電力量の区別、単位(WとkW)をそろえるのを間違えやすいので、注意して計算してみてください。

まとめ:暖房器具は安全面の注意もお忘れなく!

以上、暖房器具の効率的な使い方についてご紹介しました。暖房は長時間使うものなので、利用方法を少し変えるだけでも、かかる費用に差が出てきます。賢く使って、少しでも電気代を節約したいものですね。もちろん、熱を発するものなので安全には充分な配慮が必要です。

赤外線ヒーターのように熱源部分が赤くなるものは、やけどや発火に注意!ホットカーペットやあんかは、長時間同じ場所に触れていると低温やけどの恐れもあります。特に、小さい子どもが使用する際は要注意。昼寝やうたた寝は厳禁です。

また今回は電気暖房を中心に解説しましたが、燃焼系(石油・ガス)の暖房器具では定期的な換気が必須です。

いずれの暖房器具も、転倒時や一定時間が経過するとオフになるオートオフ機能がついたものなど、安全性の高い製品を選ぶようにしましょう。

◆監修・執筆/戸井田 園子
性能・コスト・デザインなどを総合的に判断し、製品選びに役立つ情報を発信する家電コーディネーター。総合情報サイトAll Aboutの家電ガイドを始め、雑誌、テレビ、ラジオなど数多くのメディアで活躍中。

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