「起承転結」とは?意味や使い方を小学生にもわかるように解説
2022/06/15
「起承転結(きしょうてんけつ)」は、文章の内容をより魅力的にみせるための構成法です。しかし、単語だけは知っているものの、自信を持って使いこなせる人は意外と少ないのではないでしょうか。
今回は、起承転結を使って文章を書きたい人のために、起承転結の意味や使い方を小学生にもわかるように丁寧に解説します。さらに、起承転結以外の文章構成法もあわせて取り上げながら、使用目的にあわせた適切な文章構成について詳しく説明します。
起承転結の意味と由来
文章の構成法の一つである「起承転結」とは、一体どのようなものなのでしょうか。それは起承転結の由来をたずねることで明らかになります。
起承転結はもともとは中国の漢詩で用いられていた
起承転結とは、中国で生まれた「漢詩」、なかでも「絶句」という詩を作るときに古くから使われた構成法です。漢詩では、一つの詩に用いられる句数や一句に使われる漢字の数、韻のふみ方などが細かく定められていました。
絶句の多くは5字から7字で成り立つ漢字のかたまりを一句としており、四句で構成されます。限られた文字数で、表現力のあるよい詩を作るために意識されるのが起承転結です。起承転結の効果が認められると、その後はその他の文章にも用いられるようになっていきました。
漢詩は、7世紀後半ごろに日本でも作られ始め、それとともに起承転結も文章構成法の一つとして世間に広まったのです。
絶句の構成
●起句・・・格調高くうたいおこす
●承句・・・起句を受け、発展させる
●転句・・・意表を突く内容で読者を惹きつける
●結句・・・転句を受け、余韻を残して結ぶ
起承転結の例:鶴の恩返しにあてはめて解説
それでは、起承転結が実際の文章の中にどのように取り入れられているのか、日本に古くから伝わる民話「鶴の恩返し」にあてはめて確認してみましょう。
なお、鶴の恩返しには、おじいさんが鶴を助けるものや若者が鶴を助けるものなど、さまざまなパターンが存在します。今回は、おじいさんが鶴を助けるパターンを取り上げます。
起
起承転結の「起」は、物語の起点となるできごとが起こる部分。
「鶴の恩返し」であれば、罠にかかった鶴をおじいさんが見つけて、それを逃してやるシーンにあたります。
承
起承転結の「承」は、物語が発展してクライマックスへの下地ができる部分。
「鶴の恩返し」であれば、おじいさんとおばあさんのところへ、道に迷った美しい娘がやってきて、その後一緒に暮らすようになるシーンにあたります。
転
起承転結の「転」は、読者をあっと言わせる形で物語がクライマックスを迎える部分。
「鶴の恩返し」であれば、機織りをしている娘の部屋をのぞくと、そこにいたのは娘ではなく鶴だったシーンにあたります。
結
起承転結の「結」は物語がしめくくられる部分。
「鶴の恩返し」であれば、鶴が娘の姿をして恩返しにやってきたことを伝え、姿を見られたため去っていくシーンにあたります。
起承転結を英語で表現するとどうなる?
さて、起承転結を英語で表現すると、どのような言葉になるのでしょうか?それぞれの漢字に英単語を当てはめると次のようになります。
●起・・・導入を意味する「introduction」
●承・・・発展を意味する「development」
●転・・・転換を意味する「turn」もしくは「twist」
●転・・・結論を意味する「conclusion」
したがって、英語では起承転結を次のように表現することができます。
●introduction, development, turn and conclusion
また、起承転結が漢詩に由来した文章構成法であることに目を向けて、次のように表現してもよいでしょう。
●the four‐part organization of Chinese poetry
英語圏でも起承転結を用いる?
起承転結は中国で生まれて、それが周辺の国に広まったものです。したがって、欧米においては起承転結の概念はなじみの薄いものといえるでしょう。
欧米で使われる文章構成としては、レポート、論文、スピーチなどで用いられる「パラグラフ・ライティング」がよく知られています。パラグラフ・ライティングでは、パラグラフという文章のまとまりに注目し、各パラグラフの先頭にトピック・センテンスという最も重要な一文を置きます。
パラグラフ・ライティングで書かれた文章には、トピックセンテンスを読んでいくだけで文章のあらすじがわかるという特徴があります。なお、全体的な構成としては、後ほど説明する「序論、本論、結論」の形が用いられることが多いでしょう。
起承転結の使い方
起承転結とは何かがわかったら、実際に起承転結の構成を使って文章を書いてみましょう。自分で文章を構成してみることで、起承転結のメリットやおもしろさがより理解できます。
起承転結を使った簡単な文章の書き方
起承転結はストーリー仕立てで文章を書くときに適した構成です。そのことをふまえて、ここではオリジナルの物語を考えてみましょう。
●起・・・絶句では「格調高くうたいおこす」部分にあたります。物語のそもそもの始まりや、設定などに言及してみましょう。
●承・・・絶句では「起句を受け、発展させる」部分にあたります。ここまでに述べてきた内容に合わせて、主人公の考えたことややったこと、主人公に降りかかって事件などを述べてみましょう。次の展開へ向けて、伏線を仕込んでもよいでしょう。
●転・・・絶句では「意表を突く内容で読者を惹きつける」部分にあたります。ここでは主人公の行いによってストーリーが大きく動き、物語が急展開するのが望ましいでしょう。事件が起きていたならここで解決させます。クライマックスにあたる場面なので、丁寧に書き進めましょう。
●結・・・絶句では「転句を受け、余韻を残して結ぶ」部分にあたります。物語を静かに収束させましょう。余韻を残すというのが難しく感じられるかもしれません。その場合は、登場人物が最後にどんな気持ちになったのか、感情に目を向けるというのもひとつの手です。読者に考えさせるような結び方にするというテクニックもあります。
文章全体から考える起承転結の配分
起承転結で物語を述べるときには、全体の中でそれぞれの部分がどのくらいの割合を占めるのか、ある程度頭に入れておきましょう。目安としては、物語の初めと終わりにあたる「起」と「結」がそれぞれ1割程度、メインの部分にあたる「承」と「転」がそれぞれ4割程度になると、バランスよくまとまります。
初めから張り切って丁寧に説明しすぎると、なかなか本題に入らないストーリーに読者をイライラさせてしまいます。メインに当たる真ん中の部分は、物語の核心にあたる部分なので詳しく述べる必要があるでしょう。最後はくどくならないように気を付けて、シンプルに結ぶように心がけます。
文章の構成には起承転結以外の型も存在する
よい文章を書きたいときに文章の構成として真っ先に思い浮かぶのが、学校でも習った起承転結ではないでしょうか?しかし、なんでもかんでも起承転結にあてはめればよいというわけではありません。実は、場面によっては起承転結の述べ方がしっくりこないこともあるのです。
ここからは、起承転結以外の文章構成を取り上げて、どのような場面で用いるのが望ましいのかを紹介します。なお、ここで紹介するのはあくまでも一例であり、この場面だからこの構成でないとだめ、と決まっているわけではありません。
実際には応用したり組み合わせたりして使うものなので、文章を書くときにはこの内容を参考にしながら臨機応変に考えてみてください。
【起承転合】小説や漫画で用いる構成
起承転結の類義語に「起承転合」というものがあります。起承転合の意味は、起承転結と同じと考えて差し支えありません。
起承転合は、起承転結と同様に、ストーリー仕立てで述べて相手を楽しませたいときに望ましい文章構成法です。したがって、小説、漫画、ドラマ、映画などでよく使われます。
【序破急】雅楽から生まれた構成
「序破急」は、起承転結と同じくストーリー仕立てで述べるときに使う構成法です。ただし、起承転結の由来が中国の漢詩であるのに対して、序破急は平安時代に整えられた日本の音楽「雅楽」から生まれました。
「序」は拍子にはまらない初めの部分、「破」は拍子にはまってゆるやかに演奏される部分、「急」は速いテンポで演奏される最後の部分にあたります。序破急の構成はやがて芸能全体に広まり、共通する理念として定着していきました。
「序」は静かにすらすらと、「破」は変化に富ませておもしろく、「急」は短く軽快に表現するのがよいとされています。能や舞踊の演じ方に用いられたり、連歌(れんが)や俳諧(はいかい)の望ましい形式として用いられたりしてきました。
【PREP法】プレゼンやスピーチに役立つ構成
PREP法はビジネスの世界でよく使われる言葉で、プレゼン、スピーチの原稿やビジネスメールを作成するときなどに用いられます。自分の意見で相手を納得させたいときに使うとよい文章構成です。「P(Point)」は結論、「R(Reazon)」はそう考えた理由、「E(Example)」は具体例、最後の「P(Point)」は結論の再提示を意味します。
ビジネスの場面で起承転結の述べ方を用いると、なかなか結論に至らないためにまどろっこしいと思われがちです。PREP法をうまく利用して、自分の意見を端的に相手に伝えましょう。
【序論、本論、結論】小論文で用いる構成
「序論、本論、結論」はPREP法と同じく自分の意見で相手を納得させたいときに使う文章構成法です。用途だけでなく内容もPREP法によく似ていますが、こちらは論文や小論文などである程度まとまった文章を組み立てるときに用いられます。
序論では主題を示し、本論ではそう考えた理由を実体験などの具体例を取り上げながら説明し、結論では主題を再提示して結びます。主に英語圏などで用いられるパラグラフ・ライティングも、この形で述べられることが多いでしょう。
【5W1H】できごとを伝えるときに使う述べ方
「5W1H」とは、ものごとの内容をもれなく正確に伝えたいときに使う述べ方です。体験談、レポート、作文などに加えてビジネスの場面でも幅広く使える手法なので、ぜひ覚えておきましょう。
「When」いつ(時間)、「Where」どこで(場所)、「Who」誰が(主体)、「What」何を(目的となる人やもの)、「Why」なぜ(理由)における5つの「W」と、「How」どのように(手段)における1つの「H」に着目して説明します。
どの要素が1番重要かを考えて、優先順位の高いものから伝えるとよいでしょう。また、ビジネスの場合は5W1Hに「How much」いくらで(費用)が加わった、「5W2H」が用いられることもよくあります。
まとめ
起承転結は、中国の漢詩に由来する文章の構成法です。起承転結を使うことで、ストーリーを読み手を惹きつける魅力的な文章に仕上げることが可能になります。
ただし、文章の構成法は起承転結の他にもたくさんあることも念頭に入れておきましょう。さまざまな構成法を用途に合わせて適切に使い分け、よりよい充実したコミュニケーションに役立ててくださいね。
参考書籍・サイト
新村出編 広辞苑第4版(1995) 岩波書店