産業医が語る!日本と海外のフェムテック事情~連載「はじめよう!フェムテック」

2022/06/08

2021年10月から、ニッポン放送でスタートした番組『はじめよう!フェムテック』。ベネッセコーポレーションとかます東京の共同企画で、今、社会的なムーブメントになりつつある「フェムテック」を、さまざまな角度から取り上げています。パーソナリティーは、おなじみの伊久美亜紀総編集長と東島衣里アナウンサー。この連載では、毎週オンエアされた内容を、ギュッとまとめてお伝えします。

番組ではフェムテックに関する、あなたの職場や家庭などでの問題点やポジティブな試みなどを募集いたします。ニッポン放送『はじめよう!フェムテック』宛にメール(femtech@1242.com)でお送りください。

●パーソナリティー

伊久美亜紀 Aki Ikumi
大学卒業後、出版社3社の編集部を経て、1995年ベネッセコーポレーションに入社。『サンキュ!』編集長を長く勤め、現在はK&Fメディア総編集長として『たまひよ』『サンキュ!』『いぬのきもち』など年間約100冊の雑誌・書籍・絵本の編集責任者を務める。29歳の長女一人。

東島衣里 Eri Higashijima
長崎県出身。大学卒業後、ニッポン放送に入社。現在は「中川家 ザ・ラジオショー」(金 13:00~15:30)、「サンドウィッチマン ザ・ラジオショー」(土 13:00~15:00)などの番組を担当。最近、女性の健康、そして幸せについて友人と語り合うことが多くなった31歳。

●ゲスト

大室正志さん Tadashi Omuro
大室産業医事務所代表。1978年、山梨県生まれ。ジョンソン・エンド・ジョンソン株式会社統括産業医、医療法人社団同友会産業医室を経て現職。メンタルヘルス対策、感染対策、生活習慣病対策など企業における健康リスク軽減にも従事。現在、日系大手企業、外資系企業、ベンチャー企など、30社以上の産業医を務める。
Twitter https://twitter.com/masashiomuro

まだまだ認知度の低い「フェムテック」を推進して、女性だけでなく社会全体の幸せを目指したい!という意気込みでスタートした番組の第2フェーズ。今回のゲストは、産業医の大室正志さんです。「企業で働く多くの社員の心身の悩みに寄り添い続けてきた大室さん。健康のスペシャリストとして、さまざまな課題に対して、わかりやすい例を出して教えてくださいました。現状、上司や同僚に不調を伝えられない環境だとしても、大室さんのような産業医のかたに相談できると心強いですね」(伊久美)

今、日本の企業で、どこまでフェムテックは進んでいる⁉

■東島アナ「今回のゲストは産業医の大室正志さんです。まずは、産業医というお仕事について教えていただけますか」

■大室「産業医は、白衣を着て働く臨床医とは別の仕事になります。仕事を2つに分けると、まずは個人に対してのサポート。メンタル不調やうつ病、ガンを抱えながら働く人に、働き方を提案しています。もう一つは、企業などの集団に対して。例えば “コロナ禍で営業を再開するには、どういうガイドラインに沿って進めばよいのか” などをアドバイスしています。企業における顧問弁護士のような役割ですね」

■伊久美「そうなのですね。産業医=医療の弁護士さん、という認識はなかったので、驚きました。大室さんは、これまで、女性の病気や悩みにもたくさん接してこられたと思いますが、どんな相談が多いですか」

■大室「メンタル不調の相談は、男女同じくらいの比率なのですが、体の病気は就労年齢に限ると、圧倒的に女性が多いです。例えば、妊娠中のつわりがひどい、長時間労働によって月経不順になってしまった、という話はよく聞きます。あとは、40代だと子宮がん、乳がんなど、女性特有のがんにかかるかたもたくさんいらっしゃいます」

■伊久美「心の病気も、体の負担や出産にまつわる悩みが原因という場合もありますよね。どのようにアドバイスされているのですか」

■大室「では野球に例えて考えてみましょう。ピッチャーが肘を故障しました。それには、さまざまな理由が考えられます。トレーニング不足、ピッチングフォームが悪い、投げ過ぎたのかもしれません。これをメンタル不調に置き換えると、トレーニング不足は能力が足りていない、投げすぎは過重労働。ピッチングフォームが悪いというのは、そのかたのコミュニケーション方法。というようなことになります。まずは、何が不調の原因となっているのかを解析し、それからお話をしています」

■伊久美「なるほど~。わかりやすい! 先生は、いろいろな企業とお仕事をされていると思いますが、フェムテックに対する意識は高まってきていると思われますか」

■大室「月経痛や更年期の症状など、女性特有の健康問題について、男性の管理職が多い企業の場合は、女性側は“あまり主張したくない”というかたが多いです。とはいえ、女性が発言しないでいると、男性には伝わらないので、女性が悩みを抱えていたとしても顕在化しないという結果に。最近、メディアが女性特有の問題についてよく取り上げるようになったので、ようやく各社で議論されるようになってきたという段階ですね」

■東島アナ「フェムテックが進んでいる企業というのは、どんなことを行っているのでしょう」

■大室「不妊治療や卵子凍結に関して、補助金を出すといったことに言及している会社も出てきています」

■伊久美「それはすごいですね!やはり、外資系の企業の方が進んでいるのでしょうか」

■大室「アメリカの企業は、卵子凍結を行える機関がチェーン店のように身近にたくさんあるんです。日本で浸透していくのが難しいのは、社員一人一人の選択の自由のために、よかれと思ってつくった制度に対して、意味を深堀して考える人がいることです。例えば、卵子凍結の制度ができると、“妊娠適齢期に妊娠を後回しにしろということですか”などと受け取る人が一定数います。ようやく国も制度化に前向きになってきていますが、深掘りする人がいることも考慮しながら、進めていかなくてはならないですね」

■伊久美「各国の風土や歴史があるから、簡単には進まない。乗り越えるべき壁があるのですね」

産休&育休は制度があるだけでなく“運用されているか”が重要

■東島アナ「産休&育休をテーマにお話をうかがいます。企業で働く上で必要な制度だと思いますが、大室さんはどのようにお考えですか?」

■大室「日本の産休&育休は、世界的にみても、それなりに手厚い制度になっていますが、実際に運用されているかどうか?ということが重要になってきます」

■伊久美「確かに。制度はつくれても、運用されていなければ意味がないですよね」

■大室「その通りです。産休に関しては、産後に休むことは決められているので、絶対に取得しなくてはならないのですが、問題は育休です。これは会社、また男女によって、かなり取得数に差があります。つい最近まで、男性の取得者は全男性の2%。ここのところ急増していると言われていますが、それでも12%です。北欧では8~9割の男性が取得していますから、それに比べるとまだまだですね」

■伊久美「北欧では、取得するのが当たり前なのですね」

■大室「はい。日本の社会では、未だに、産休&育休は女性が取る制度という意識があります。そんな中、ITや金融業界などでは、男性の取得者も増えてきています」

■東島アナ「女性も男性も、望む形で取得しやすい環境にしていくことが、今後の課題ですね」

合言葉は「はじめよう!フェムテック!!!」

●次回のゲストも産業医・大室正志さんです

【番組インフォメーション】
『はじめよう!フェムテック』は、毎週・土曜日15時50分~16時にオンエア。聴き逃しは『radiko』で(※首都圏にお住まいのかたは放送後1週間)お聴きになれます!

●記事まとめ/板倉由未子 Yumiko Itakura
トラベル&スパジャーナリスト。『25ans』などの編集者を経て独立。世界を巡り、各地に息づく心身の健康や癒やしをテーマとした旅企画を中心に、各メディアで構成&執筆。イタリア愛好家でもある。伊久美さんとは27年来の付き合い。https://www.yumikoitakura.com/

●撮影/寿 友紀 Tomoki Kotobiki

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