【浜島直子さん】12年間のリポーター体験が発見させてくれたこと。 私は100歳までモデルでいたい
2022/07/26
やましたひでこ先生のご自宅(本物っ)に断捨離しているゲストを迎えての豪華対談連載。今月のお客様は「はまじ」こと浜島直子さん!モデルやテレビ・ラジオ出演に加え執筆活動にも挑戦しているはまじさんが、文筆家の大先輩でもあるひでこ先生の文章修業時代に斬り込むところから、対談スタート!
はまじま なおこ
モデル、文筆家。1976年、北海道札幌市生まれ。18歳のときに札幌で雑誌『mc Sister』の編集長にスカウトされモデルデビュー。数々のファッション誌や広告などで活躍し、2002~2014年にはTBS「世界ふしぎ発見!」にてミステリーハンターを務め、お茶の間でも人気を博す。夫と長男(小2)の3人家族
やました ひでこ
断捨離®提唱者。1954年、東京生まれ。子育てや介護を経験した後、ヨガの行法哲学「断行・捨行・離行」から着想を得た「断捨離」理論を構築。BS朝日『ウチ、〝断捨離〟しました!』(毎週月曜夜8時)にレギュラー出演中。最新刊は『お金持ちは断捨離上手』(宝島社)
ベストセラー連発の ひでこ先生、40代の文章修業
【はまじ】ひでこ先生は妻や母として大先輩ですし、文筆家としてもベストセラーを連発。お聞きしたいことがたくさんあります!
【ひでこ】はまじさんも絵本とエッセイ集(『蝶の粉』〈ミルブックス/2020年〉)を書いておられるわね。エッセイはサラサラ書けた?
【はまじ】まさか!エッセイどころか作文もブログも苦手で、何回書き直したか。ひでこ先生は毎月のように本を出されていますが、書くのはもともと得意だったんですか?
【ひでこ】苦手どころか、文章を書く発想すらなかったわ。書き始めたのは40代。遅咲きよね。当時は夫の郷里の石川県で息子を育てながら家業を手伝っていたの。この大ざっぱな私が経理よ(笑)
【はまじ】え、ひでこ先生にもそんな時代があったんですね!
【ひでこ】子育ては頑張っても誰も褒めてくれないし、義父母には気を遣うし、経理は大の苦手。「こんなはずじゃなかった」と「こんなものかな」と自問自答しながらモヤモヤ暮らすうち、断捨離の発想が湧いてきたの。文章など書いたことないくせに、断捨離のことを「書こう!」と直感でひらめいて、すぐに「ミクシィ」のアカウントを取って。3年は毎日書くことを自分に課してポツポツと書き始めたの。私はもちろん無名だったし、そもそも断捨離は私が言い出しっぺで影も形もなかったんだから、読者は1日に2人とかよ(笑)。頭の中にあることを文章にするのは本当に難しくて、ウンウン苦しみながら書き続けた文章を読んだマガジンハウスの編集者から連絡がきて「本を出しましょう!」と。そこから最初の本『新・片づけ術「断捨離」』(マガジンハウス/2008年)が生まれた。
【はまじ】その翌年には「断捨離」が流行語大賞にノミネートされてましたよね。……なんてドラマチック!
【ひでこ】書くことは出すこと、つまり断捨離なのよね。発想を文章に変換して体の外に出し続けていると、滞った思考が流れ始める。そうしていつのまにか、書けなかった私が書けるようになった。
【はまじ】出せば流れると信じて書きます!……でも書くのはやっぱりつらいな(笑)
売れっ子モデルから、世界の 「ふしぎ」のリポーターに
【ひでこ】はまじさんはマルチに活躍されているけど、今も肩書は「モデル」なのですね。
【はまじ】はい、本業はモデルです。今はこう胸を張って言えますが、24、5歳くらいまでは自信がなくて。撮影にたくさん呼んでいただいて忙しく過ごしていたのですが、雑誌の表紙を飾る花形モデルではなかったことがコンプレックスでした。自分の売りを探そうともがいていたときに「私、おしゃべりが好きかも?」と思いつき、TBSの『世界ふしぎ発見!』のミステリーハンターのオーディションを私の意思で受けたんです。
【ひでこ】売れっ子モデルだったはまじさんがアウェーな世界に挑んだのね。
【はまじ】オーディションには合格できたのですが、プロデューサーに「ミステリーハンターのイメージは、〝田舎の保母さん〟。だから浜島さんはピッタリ!」と言われて。「私、モデルなんですが……」と複雑でしたが(笑)、モデルを始めたときみたいな初心に戻り、がむしゃらに臨みました。結局ミステリーハンターは12年やらせていただき、約50カ国を巡りました。
私は主役になりたいわけでは なかったんだ
【ひでこ】きれいにお化粧して素敵な服を着て撮影されるモデルから、秘境や洞窟を汗だくでリポートするミステリーハンターに。どんな発見が?
【はまじ】私が「したいこと」がハッキリわかりました。ミステリーハンターは「世界のふしぎ」を伝える役割。「ふしぎ」を目の当たりにした私の感動を言葉と体で表現し、視聴者に伝える。それが面白くて! ロケを重ねるうち、「モデルの役割はミステリーハンターと同じだ」と気づきました。撮影チームの一員として、「服」の素敵さを全身で伝えるのがモデルの役割。ここで振り返ればスカートが広がってシルエットのきれいさが際立つぞ……みたいな工夫の連続なんです。私は、伝えることが好きなんだ。だからもっと極めたい!そう気づいたら、表紙モデルになれないことなんかどうでもよくなりました(笑)
【ひでこ】成功体験や安定した立場にしがみつかず、畑違いの現場に飛び込んだはまじさんの行動はとても断捨離的。この挑戦が、「主役にならなきゃ」という執着の断捨離に繋がり、モデルの仕事の奥深さに気づかせてくれたのね。
【はまじ】はい。今の目標は、100歳のおばあちゃまになってもモデルを続けることです!
カーディガンのように 着脱自在な「我」が理想
【ひでこ】はまじさんの魅力は満面の笑顔と飾らない人柄。そのリラックスした感じはずっと?
【はまじ】いいえ、20代の頃はかなりギラギラしてました(笑)。「私、頑張ってます!」「次の撮影も呼んでくださいね!」って空気がすごかったはずです。でも30代になった頃から、「私!私!」という感覚が消えましたね。
【ひでこ】〝我〟がとれて軽やかになったのですね。〝我〟というとよくないイメージがあるかもしれないけど、〝我〟というプロテクターが、札幌から上京し、モデルの世界で必死に生きていたはまじさんを守ったのよね。〝我〟はかさぶたみたいなもので、必要なくなれば自然に剥がれる。それで今の自然体のはまじさんがいる。でも今後また、〝我〟が必要な場面が出てくることがあるかもしれない。そんなとき、〝我〟を自在に着脱できたら最高ね。
【はまじ】カーディガンみたいに着たり脱いだりできる〝我〟!欲しいです。
【ひでこ】明るく軽やかな、100歳のモデルのはまじさんが目に浮かぶわ。応援していますよ!
撮影/林ひろし ヘア・メイク/ナライユミ(はまじさん)、Hachi(ひでこ先生) スタイリスト/福田麻琴(浜島さん)
取材・文/福山雅美、『サンキュ!』編集部
参照:『サンキュ!』2022年9月号 連載「断捨離対談 ひでこの部屋」より。掲載している情報は2022年7月現在のものです