キム・スヒョン主演『サイコだけど大丈夫』ブラックユーモアに富んだ異色のラブストーリーを韓ドラマニアが徹底解説!

2024/11/05

『星から来たあなた』で韓流スターとして世界的な人気を得たキム・スヒョン。「新・韓流四天王」の1人との呼び声も高く、幅広い世代から愛される実力派俳優です。
そんなキム・スヒョンが兵役を経て、本格的な俳優復帰作として選んだのがドラマ『サイコだけど大丈夫』。NETFLIXで世界190カ国に配信され、日本でもコロナ禍の韓ドラブームにのり大ヒットしました。

童話の中に入り込んだような不思議な世界観のなか繰り広げられるラブストーリー『サイコだけど大丈夫』。韓ドラマニアで韓国ドラマライターのJUMIJUMIさんに徹底解説してもらいましょう!

※本コンテンツはサンキュ!が制作した独自コンテンツです。記事内のリンクにはアフィリエイトタグが含まれており、購入実績や会員成約などに基づいて収益を得る場合があります。

韓国留学を機に韓国の文化に魅了される。年間50作品以上の韓国ドラマを視聴し、またライターとして情報発信も積極...

>>>JUMIJUMIの記事をもっと見る

あらすじ:愛を知らない童話作家と重い人生を背負う精神病院保護士。傷を抱えた2人が出会い…。

精神病院で保護士として働くガンテ(キム・スヒョン)は、自閉症の兄サンテ(オ・ジョンセ)を献身的に世話しています。
ある時ガンテが勤務する病院で、人気童話作家コ・ムニョン(ソ・イェジ)による朗読会が開催され、そこでガンテとムニョンは衝撃的な出会いを果たします…。

ムニョンは人の感情を理解できず、自分の欲しい物は奪い取ってでも壊してでも手に入れないと気が済みません。人に危害を加えることも珍しくなく、愛を知らないまま生きてきました。

サンテがムニョンの大ファンだったことから、ムニョンの新作出版記念サイン会を訪れたガンテとサンテ。メディアも集まるその場所で、ムニョンは人々が凍りつくようなトラブルを起こしてしまいます。
会うたびに血の通わない突飛な行動をとるムニョンに振り回されるガンテ。それに対してムニョンはすっかりガンテを気に入り獲物としてロックオン!ガンテについて調べ始めます。

そんな中、ガンテとサンテは故郷ソンジン市に引っ越し新生活をスタートさせました。するとガンテの新たな職場であるOK精神病院に突如としてムニョンが現れ…!!


それぞれ過去に深い傷を負っている彼らの運命が交差し、愛を知ることで過去の傷と向き合う強さを得ていく…。
ブラックユーモアに富んだ、ちょっと不思議なヒーリングラブストーリーです。

見どころ:色々な意味で強烈な個性を放つ登場人物たち。彼らが心の傷を癒すその時…。

見どころ1:幸せから逃げてきたガンテの生き様に涙腺崩壊!

「死ぬまで兄さんのそばにいて、守って世話してね。母さんはそのためにあなたを生んだの」
幼かったガンテにとって、その言葉はどんなに重く痛々しいものだったでしょうか…。
ガンテは自閉症の兄サンテばかりに気を配る母親の愛に飢えながらも、その役割を果たすことで愛されようと我慢しながら育ちました。
しかしそんな母親もある日突然亡くなってしまい、たった1人でサンテを守りながら必死に生きてきたのです。

サンテはガンテの表情から感情を読み取ります。そのため辛くても怒っていても、ガンテは必死に表情を保ち感情を抑え込みます。パニックを起こしたサンテが暴れても、ガンテはただ殴られるばかり。
定期的に悪夢にうなされるサンテのために何度も引っ越しを繰り返し、職場も点々とせざるを得ず、経済的にも余裕はありません。

手に負えないほど重たい人生。「必要とされる人」として生き、「自分」を生きられない人生。他人と関わる余裕も、何かを楽しむ余裕もなく、幸せになることから背を向けてきました。

そんなガンテが愛を知らないムニョンと出会い、またOK精神病院の患者や周囲の人々と触れ合いながら、過去の心の傷と向き合っていくことになります。
患者から「ジョーカーみたいな偽物の笑顔」と言われてしまうガンテの表情に、本当の笑顔が浮かぶ日は来るのでしょうか…。


韓ドラでは辛い過去を背負った主人公は珍しくありませんが、筆者はこれまで観てきた数え切れないほどの作品の中でも、ガンテほど胸が痛む主人公はいませんでした。辛い人生を生きながらも、曲がらずに真面目で礼儀正しい人柄を見ていると余計に切なさが押し寄せてきます。
きっとあなたもガンテの生き様・人生に触れ、魂を揺さぶられると思います。そしてガンテが心の傷を癒していく過程に涙することでしょう。

見どころ2:韓ドラ史上「最狂」なヒロイン登場!?サイコパスなムニョンから目が離せない!

古い物語から出てきたお姫様のようなクラシカルなオーラを放ち、奇抜なファッションで常に完璧な自分を表現するムニョン。
美しい容姿を持ち、童話作家としても世界的な人気を誇り、全てを兼ね備えているように見える彼女が唯一持っていないもの、それは「感情」でした。

ムニョンはよく切れる刃物が大好きで、物を壊すことにも、生き物や人を傷つけることにも抵抗がありません。
綺麗な顔からは想像できない汚い言葉で平然と悪態をつき、相手の気持ちなどお構いなしに自分の言いたいことを一方的に言い放ちます。そして欲しいものはどんな手を使ってでも手に入れるのです。

これまで見たことのないほどの最狂ヒロイン!美しく狂気に満ちたその存在感と予想のできない行動に衝撃の連続です!

しかしそんなムニョンも、母親から歪んだ愛情を受け、大きな心の傷を負っていました。
感情が空っぽでただカラカラとうるさいだけの「空き缶」だったムニョンは、ガンテやサンテと過ごしながら少しずつ人の温もりに触れていきますが、本当の愛を知ることはできるのでしょうか…。

見どころ3:愛くるしいみんなのお兄ちゃん、自閉症のサンテ!

もう1人主役と言えるのが、ガンテの兄で自閉症のサンテです。驚くべき記憶力と絵の才能を持っています。
頭を触られることや嘘をつかれることや騒音が嫌いで、パニック発作を起こすことも。また過去に怖い経験をして以来、蝶々を恐れています。
サンテがムニョンの作品の大ファンだったことから、偶然の出会いが運命へと変わっていきます…。

お世辞や嘘が言えないサンテはとっても正直!そして心が純粋でとても温かく、みんなに愛される人なのです。そんなサンテは痛々しく強烈なストーリーの中で、癒しと中和と笑いを与えてくれる存在とも言えます。

ソンジン市でたくさんの人々と触れ過去の怖い経験と向き合いながら、サンテは「ガンテに守られる存在」から「本当のお兄ちゃん」へと成長していきます…。


サンテを演じたオ・ジョンセは、ドラマ『椿の花咲く頃』や『真心が届く』などで知られる名脇役です。三枚目な役柄が多い印象でしたが、本作で新しい一面を見せてくれました。
自閉症という難しい役柄ながら愛くるしいキャラクターを生み出したオ・ジョンセの名演技にも注目です!

筆者の感想:あなたの心の傷も癒されるかも。人生における教訓が詰まった作品!

韓国語 絵本『サイコだけど大丈夫 特別童話 5冊セット』悪夢を食べて育った少年+ゾンビの子+春の日の犬+手、アンコウ+本当の本当の顔を探して

劇中にはムニョンが描いた作品として絵本が出てきますが、どの絵本にも人生における教訓になるような深く重い意図が隠れています。その内容は子供だけではなく、むしろ大人の胸に刺ささり強烈な切なさを残します。
このようなムニョンの絵本や「王様の耳はロバの耳」「みにくいアヒルの子」などよく知られた物語に擬えてストーリーは展開し、ドラマと絵本が混ざり合った世界観に自分も迷い込んだような気分を楽しむことができます。

その芸術的な情景に、ゾワゾワと這い上がってくるような不気味さを加えるバックミュージックがなんとも印象的。傷ついた登場人物たちの心に寄り添う優しいOST曲にも涙を誘われました。

そしてこの作品を支えている助演陣の魅力も語らずにはいられません。
いつもふざけてるけど実は頼もしいガンテの唯一の友人ジェス(カン・ギドゥン)、金儲け目当てのようで実は人情深いムニョンの絵本の出版社代表サンイン(キム・ジュホン)、サンインの部下スンジェ(パク・ジンジュ)、ガンテの同僚ジュリ(パク・ギュヨン)、ジュリの母でガンテ兄弟の世話を焼くスンドク(キム・ミギョン)、OK病院医院長ジワン(キム・チャンワン)。錚々たるメンバーです。
彼らの繊細な演技が生み出す愛情深く温かいキャラクターが、ガンテやムニョンを支えていくのと同時に、私まで励まされ癒されました。


ガンテ、ムニョン、サンテ、そしてOK病院の入院患者たち。彼らはそれぞれ全く違う心の傷を負い、幾度となく恐怖や葛藤と戦ってきました。そこから逃げてしまうこともありました。
しかし最終的には正面から向き合うことで、閉じこもっていたその場所から出るための新しい扉を見つけていきます…。

誰にだって多かれ少なかれ、心の傷はありますよね。ではその傷を癒すために必要なものは何なのでしょうか?
本作にはそのヒントになるものがたくさん詰まっていると思います。
ぜひあなたにも本作の登場人物に寄り添いながら、笑って泣いて心のヒーリングをしていただきたいです。

■執筆/JUMIJUMIさん…韓国留学を機に韓国の文化に魅了される。年間30作品以上の韓国ドラマを視聴し、またライターとして情報発信も積極的に行う。ただ作品の内容を説明をするだけでなく、食や生活様式など文化面から掘り下げた解説を得意としている。インスタグラムはjumistyle99。

 
 

PICK UP ピックアップ

TOPICS 人気トピックス

RECOMMEND