女性にやさしい環境を目指すフェムテックの活動は、社会の活性化に不可欠~連載「はじめよう!フェムテック」

2023/03/15

2021年10月から、ニッポン放送でスタートした番組『はじめよう!フェムテック』。ベネッセコーポレーションとかます東京の共同企画で、今、社会的なムーブメントになりつつある「フェムテック」を、さまざまな角度から取り上げています。パーソナリティーは、おなじみの伊久美亜紀総編集長と東島衣里アナウンサー。この連載では、毎週オンエアされた内容を、ギュッとまとめてお伝えします。

番組ではフェムテックに関する、あなたの職場や家庭などでの問題点やポジティブな試みなどを募集いたします。ニッポン放送『はじめよう!フェムテック』宛にメール(femtech@1242.com)でお送りください。

<パーソナリティー>
●伊久美亜紀 Aki Ikumi
大学卒業後、出版社3社の編集部を経て、1995年ベネッセコーポレーションに入社。『サンキュ!』編集長を長く勤め、現在はK&Fメディア総編集長として『たまひよ』『サンキュ!』『いぬのきもち』など年間約100冊の雑誌・書籍・絵本の編集責任者を務める。30歳の長女一人。

●東島衣里 Eri Higashijima
長崎県出身。大学卒業後、ニッポン放送に入社。現在は「中川家 ザ・ラジオショー」(金 13:00~15:30)、「サンドウィッチマン ザ・ラジオショー」(土 13:00~15:00)などの番組を担当。最近、女性の健康、そして幸せについて友人と語り合うことが多くなった32歳。

<ゲスト>
島田真理恵 Marie Shimada
公益社団法人 日本助産師会会長・大学教授。1959年東京都生まれ。聖路加看護大学(現聖路加国際大学)学士、修士を修了。2005年には、昭和大学で医学博士号を取得する。10年間の助産師経験を経て大学教員に。2011年から、上智大学総合人間科学部看護学科教授を務める。 https://www.midwife.or.jp/

まだまだ認知度の低い「フェムテック」を推進して、女性だけでなく社会全体の幸せを目指したい!という意気込みでスタートした番組の第2フェーズ。今回のゲストも、公益社団 日本助産師会会長で、上智大学教授の島田真理恵さんです。「前回、助産師さんには出産の瞬間だけではなく、広い意味で心身の健康のサポートをしていただけるということを知りました。これは、妊産婦さんにとって心強いことですよね。今回は、妊産婦さんの悩みや日本の子育て環境について、ご意見を伺えたらと思います」(伊久美)

“産後うつ”は、誰にでも起こりうる。異変を感じたら早めに相談を!

■東島アナ「今、妊産婦さんは、どのような悩みを抱えていらっしゃるのでしょうか」

■島田「妊娠中の体調から育児のことまで、悩みは様々です。身近に妊娠や出産、子育てをしている女性を見かけることが少ない時代ですから、“なんだかわからないけれど、とにかく不安”とおっしゃるかたが増えています」

■伊久美「少子化や昔のように隣近所のお付き合いがないことも原因の一つになっているのでしょうか」

■島田「そうですね。あとは、ネットなどに溢れた多くの情報の中から何を選択すべきかを迷われていたり、誤った情報に振り回されていたりするのだと思います」

■伊久美「最近、“産後うつ”という言葉を耳にする機会も増えました。時代の変化で、便利な世の中にはなっていますが、昔より今の方がうつになりやすいという傾向はありますか」

■島田「うつになりやすいかどうか?ということに対しては、様々な意見があります。ただ、核家族が多い中で子どもが誕生すると、その家族の関係性や役割が急激に変化すると思います。周りからなかなか支援を受けられない状況の中、育児に適応していくことは非常に負担が大きいので、母親も父親もうつになってしまうということはあるかもしれません」

■東島アナ「子育て中のリスナーのかたもいらっしゃると思いますが、“もしかしてうつかな?“という状態になったら、どういうことを心がけたらよいのでしょう」

■島田「気合を入れてどうにかなるような問題ではないので、“いつもと違う”という心の変調を感じたら、躊躇せずに医療機関や各地域の“子育て世代包括支援センター”に行ってほしいです。そこにいる保健師さんや助産師さんに気兼ねなく相談し、支援を受けてください。産後うつは、どんな人にも起こりうることなのです。日本では、精神的な症状や病気に対して恥ずかしさを感じてしまうかたが多いようですが、気にせず相談してよいのです」

■伊久美「“誰にでも起こるかもしれない”と思えば、“相談してみようかな”という気持ちになりますね。ありがとうございます」

母子手帳は子育ての最高の教科書! もっと活用してほしい

■東島アナ「島田さんは大学卒業後、助産師として現場で経験を積まれ、現在は大学教授として未来の助産師を育成する立場でもいらっしゃいますが、今回は助産師の立場から“現在の子育て事情”についてお伺いしたいと思います。最近、TVでも政府の子育て支援に関するニュースが増えてきました。国民から、経済の視点で“生みにくい、育てにくい”と指摘されていて、政府は改善策を打ち出そうとしているようですが、島田さんは、日本の子育て支援の現状をどのように見ていらっしゃいますか」

■島田「経済的な支援も大切ですが、それだけだけでは子育てしやすくはならないと思います。国が子育てをしている家族を応援していることを感じられる具体的な政策が、今後展開されることを期待しています。子育てする家庭にやさしい社会が実現していくことが必要ですね」

■伊久美「“子育てする家庭にやさしい社会”というのは、いちばん大事なことですよね。子育てには、周りの協力が不可欠ですし、企業の育児休暇や育児休業も、以前に比べて充実してきているとはいえ、まだ十分ではないと思います。最近では、男性の育休問題のニュースもよく耳にするようになりましたが。。。」

■島田「急激に新しい制度が出来ていますので、利用する側も許可する企業側も、制度を十分に理解していないという現状もあるかもしれません。育児休暇を取ることを推進するだけではなく、パートナーと二人で産後の育児をしていくということは、どういうことなのかを具体的にイメージして、妊娠中からきちんと考えていく場や時間も必要だと思います」

■伊久美「以前よりも男性も女性と同等に育児をしていると言われていますが、一方で、いまだに男性からは“自分は育児に協力している”という声も耳にします。島田さん、そもそも“協力”っていう表現についてどう思われますか」

■島田「男性は“女性に協力する”ではなく、“親として自分はどうするとよいか”という視点で育児に関わることが必要だと思います。お子さんが小さいうちは、育児はどうしても女性が主体となりますが、その場合は“女性がどのようにしてほしいと思っているのか”を確認しながら、ともに育児をしていくことが必要だと思います」

■東島アナ「コミュニケーションが大切ですね。パートナーは自分事として、妊婦さんや生まれたお子さんの体の状態を知るために、母子手帳にもじっくり目を通したほうがよいですよね」

■島田「そうですね。日本の母子手帳というのは二つ目的がありまして、一つは妊娠中と乳幼児期の状況をきちんと記録していくこと。もう一つは、エビデンスに基づいて、国が最も適切と考える妊娠や子育ての情報を、コンパクトにまとめ提供していることです。ですから、二人できちんと確認し、それに沿った形でいろいろと考え決めていくことをおすすめします」

■伊久美「母子手帳に、子どもの成長を記録することはよく知られていますが、子育てに関する最高の教科書でもありますね。その意識はあまりなかったです」

■島田「日本の母子手帳は非常にコンパクトにまとめられ、 常に見直しや改定されていて役立つものなのです。ただ、妊婦健診や乳幼児健診に持ち運びがしやすいサイズでつくられているため、小さな文字で書かれていて少し読みにくいことが唯一の欠点だと思います」

■伊久美「“迷ったときは母子手帳”ですね! 頼りになる母子手帳の重要性をもっと発信していきたいですね」

■東島アナ「日本の母子手帳は素晴らしいという事ですが、日本は他の国と比較すると、子育てしやすい環境なのでしょうか」

■島田「海外の子育て支援政策は、学ぶべき点が多いと思っています。ただ日本は、“母子保健”の水準が非常に高く、お産の時に母子が死亡する率もとても低い状況です。これは誇れることだと思います。ですから、医療については日本の状況は安心できる状態かと思います。子育てに関しては、日本の伝統的な“カップルや家族が責任をもって行うべき”という意識がいまだ非常に強いので、今後は海外のように“社会全体で支える”という認識へ変換されていくことが必要だと思っています」

■東島アナ「日本の母子保健の水準が高いことは、確かに素晴らしいことですね。誇りに思いたいと思います。いろいろとお話ししてきた中で、教育・出産・育児などは、どれも大きな意味でフェムテックに繋がっていると思います。島田さんは、“今のフェムテック”の動きをどう感じていらっしゃいますか」

■島田「フェムテックが世の中に浸透してきているのは、女性特有の健康課題が、社会的な認知されてきている結果だと思います。女性が健康に過ごしていくためには、性周期や女性ホルモンとどのように付き合っていくかが肝になります。特に“月経を快適に過ごすこと”や“リプロダクティブ・ヘルス(性や子育てに関して、本人の意思が尊重され、自分らしく生きられる)が重要で、これが認知されていかないと、今後社会は活性化して行かないのではないかと思います。商業ベースのフェムテックというより、社会が女性や子育てする人にやさしい社会をつくるための活動の一環として、フェムテックが推進されるとよいと思っております」

■伊久美「今、おっしゃっていただいたことは、この番組がずっとメッセージしてきたことなので嬉しいです。先生とお話していると、すごく安心感があって、いろいろなことを相談したくなってしまいますね。出産・育児に対して漠然と恐怖をもっていらっしゃるかたも、ホッとできた場面があったのではないでしょうか。ありがとうございました」

合言葉は「はじめよう!フェムテック!!!」

【番組インフォメーション】 『はじめよう!フェムテック』は、毎週・土曜日15時50分~16時にオンエア。聴き逃しは『radiko』で(※首都圏にお住まいのかたは放送後1週間)お聴きになれます!

●記事まとめ/板倉由未子 Yumiko Itakura
トラベル&スパジャーナリスト。『25ans』などの編集者を経て独立。世界を巡り、各地に息づく心身の健康や癒やしをテーマとした旅企画を中心に、各メディアで構成&執筆。イタリア愛好家でもある。伊久美さんとは28年来の付き合い。https://www.yumikoitakura.com/

●撮影/寿 友紀 

 
 

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