ジェンダーギャップのない職場環境づくりが新事業へとつながる~連載『はじめよう!フェムテック』

2023/03/24

2021年10月から、ニッポン放送でスタートした番組『はじめよう!フェムテック』。ベネッセコーポレーションとかます東京の共同企画で、今、社会的なムーブメントになりつつある「フェムテック」を、さまざまな角度から取り上げています。パーソナリティーは、おなじみの伊久美亜紀総編集長と東島衣里アナウンサー。この連載では、毎週オンエアされた内容を、ギュッとまとめてお伝えします。

番組ではフェムテックに関する、あなたの職場や家庭などでの問題点やポジティブな試みなどを募集いたします。ニッポン放送『はじめよう!フェムテック』宛にメール(femtech@1242.com)でお送りください。

<パーソナリティー>
●伊久美亜紀 Aki Ikumi
大学卒業後、出版社3社の編集部を経て、1995年ベネッセコーポレーションに入社。『サンキュ!』編集長を長く勤め、現在はK&Fメディア総編集長として『たまひよ』『サンキュ!』『いぬのきもち』など年間約100冊の雑誌・書籍・絵本の編集責任者を務める。30歳の長女一人。

●東島衣里 Eri Higashijima
長崎県出身。大学卒業後、ニッポン放送に入社。現在は「中川家 ザ・ラジオショー」(金 13:00~15:30)、「サンドウィッチマン ザ・ラジオショー」(土 13:00~15:00)などの番組を担当。最近、女性の健康、そして幸せについて友人と語り合うことが多くなった32歳。

<ゲスト>
●加野久美子 Kumiko Kano
株式会社アビックス マタニティ事業部商品企画部 部長。岐阜県出身。アビックスに入社後、2001年にマタニティ事業部・商品企画部に転属。2012年より現職に。近年注目されるフェムケア分野の認知度の高まりに着目し、改めてウェルビーイング関連分野の学び直しをしながら、自社の商品開発に尽力している。https://avix-inf.co.jp/ https://www.instagram.com/avix_shop/

まだまだ認知度の低い「フェムテック」を推進して、女性だけでなく社会全体の幸せを目指したい!という意気込みでスタートした番組の第2フェーズ。今回のゲストは、1947年創業のマタニティ メーカー、株式会社アビックス商品企画部部長の加野久美子さんです。「アビックスさんは、弊社の『たまごクラブ』でよくお世話になっています。フェムテック関連の人気商品の開発秘話、そして、時代に先駆けて、女性が働きやすい環境を実現されているようなので、その辺りのお話も伺っていこうと思います」(伊久美)

ニーズとトレンドをいち早く取り入れることが商品開発のモットー

■東島アナ「今回のゲストは、岐阜県岐阜市に本社を構えるマタニティ メーカー、株式会社アビックスの商品企画部部長・加野久美子さんです。御社では、産前産後のインナーなどのマタニティ関連商品を販売されていますが、妊婦さんにとってマタニティウェアの役割は、どのようなものなのでしょうか」

■加野「マタニティウェアは、出産に向けてママの体の変化をサポートしてくれます。さらに、出産後の授乳時など、妊娠から出産後までストレスの軽減もしてくれます。つまり、ママと赤ちゃんの体と心をサポートする役割があると思います」

■東島アナ「産前産後、どちらにも役立つものなのですね。アビックスさんには、フェムテックの人気商品・マタニティショーツがありますが、どのような商品なのでしょうか」

■加野「浅履きのフロントクロスショーツになります。欧米で主流なのは浅履きスタイルのショーツですが、私たちは日本では受け入れにくいのではないかと考えました。そこで、日本古来の犬の日に巻く晒(さらし)や妊婦帯などをヒントにフロント部分をクロス状にし、ウエストベルトを幅広くすることにしました」

■伊久美「欧米の浅履きタイプだと、完全にお腹が出てしまうので、日本人には少し抵抗がありますよね。日本古来の晒や妊婦帯の利点を取り入れている点も親しみがあります。どういったプロセスで開発されたのですか」

■加野「2008年に商品化開発に着手しました。その頃はまだ、マタニティショーツといえばお腹をすっぽり包み込む深履きスタイルがスタンダードでした。一方で、欧米セレブの出産に関する記事、例えば、ブリトニー・スピアーズさんのマタニティヌード、国内では歌手のhitomiさんがマタニティフォト撮影をされたことが話題になっていました。妊婦さんのお腹のラインを美しく見せるという意識が、日本にも広がりつつある時代だったのです」

■伊久美「今では写真スタジオなどで、妊娠の記念に撮影されるかたもいらっしゃいますが、アビックスさんのマタニティショーツは、その先駆けだったのですね。反響はいかがでしたか」

■加野「2009年から、通販で販売がスタートしました。まだ、マタニティフォトという言葉も聞き慣れないころでしたが、ある時購入されたかたから “クロスショーツを着け素敵な撮影ができました!” という感想をお写真と共に頂きました。その時の喜びは、今でも忘れません。昔はマタニティショーツ=デカパン(大きなショーツ)のイメージでしたが、今ではスタイリッシュな浅履き、安心の深履き、2スタイルから自分の好みに合わせてショーツを選べるようになったと思います」

■伊久美「妊娠中でも、女性は常におしゃれを気にしますから、機能だけでなくデザインも素敵だと、気分が上がりますよね。これほ、女性のための最高の発明ですよ~!」

■東島アナ「深履きが心地よい日もあると思うので、体調や気分で選べるのはうれしいですよね。こだわりのポイントを教えていただけますか」

■加野「心地よく使っていただけることはもちろんですが、着用した時に、少しでもママが素敵に見えるように、ウエストベルトや身頃の前後の傾斜角度、レースの配置など細部のバランスにもこだわっています。おかげさまで、みなさんに長くご愛用いただいております」

■伊久美「産前産後で使えるというのはうれしいですよね。時代の変化とともに求められる商品も変化すると思いますが、今後どんなアイテムやサービスをお考えですか」

■加野「弊社の商品開発としては、近年パパ向けのものもいくつか出しています。例えば、母子手帳ケースは、ユニセックスデザインも増やしています。個人的には、今後はもっとパパの育児参加が一般的になり、“”家族で育児をする”という発想が当たり前になっていくと思いますので、家族で使えるものをさらに開発していきたいと考えています」

■伊久美「おっしゃるとおり、“家族で育児をする”という時代が来ているので、ユニセックスな商品は需要が増えていくと思いますね。時代のニーズに合わせた商品開発を楽しみにしています」

ジェンダーを意識し過ぎず、家族のように付き合える会社環境を目指したい

■東島アナ「今回伺うテーマは、マタニティ メーカーが考える “今後の女性の働き方” についてです。御社はマタニティ商品を扱っている会社なので、従業員の多くは女性とのことですが、男女比はどのぐらいですか。また、女性特有の健康課題の共有などについては、社内でどのようにされているのでしょうか」

■加野「スタッフの7割ほどが女性です。健康課題については、女性が多い職場なので以前から比較的スムーズでした。また、コロナ禍以降は、社内でもSNSを活用して体調不良者や急な休みを取る人を社内全体で把握できるようになりました。結果、関連作業の引き継ぎなども以前より円滑になりました。対面で伝えなくてよいことも利点ですね」

■伊久美「SNSの活用は、まさにテクノロジーなので、フェムテックですね。一方で、男性社員が3割と伺うと、男性の立場では、働きにくさを感じることもあるのかなぁと思うのですが、女性側から男性社員が働きやすいように意識されている点はありますか」

■加野「会社として考えていることは、男性、女性に関係なく、すべての社員が明るく楽しく仕事ができる “ジェンダーギャップのない職場” を目指しています。また、特別に男女ということを意識し過ぎることなく、一人の人間として相談するようにしています。さらに、仕事以外のことでも気軽に話すことAができる企業=家族のような環境を心がけています」

■伊久美「これは、今の社会で重要なことですね。もしかしたら御社が、男女の働き方のモデルケースになるのではないかと思いました。これまでこの番組でも、ジェンダーギャップのない職場について話してきましたが、社員皆さんが共通認識をもたれているというのは素晴らしいですね。御社の産休や育休は、どのようになっていらっしゃるのですか」

■加野「こちらは国が定めた制度の範囲内になりますが、なるべく子育てと仕事の両立ができるように、給与面や業務内容についても個別に相談し、休暇や時短勤務に関しても、会社と社員が一緒に考えて積極的に取得してもらっています。ですから、比較的女性が働きやすい環境だと思います」

■東島アナ「今後、企業が女性の活躍のために意識すべきことは、どのようなことだと思われますか」

■加野「企業としては、まず社員一人一人の個性を尊重し、働きやすい体制をつくることが大切だと思います。G7の国の中で、日本はジェンダーギャップ指数が最下位であることは記憶に新しいニュースだと思いますが、性差意識について改めて考えることが大事だと思います。また、最終的には、女性に限らず働く人すべてにおいて、心身ともに幸福感を得られる会社を目指したいと思います。個人的には、古い概念を取り払い、フェムケアである子育てや更年期、そして高齢化社会、ウェルビーングなど、各分野の学び直しをしながら意識して行動することが重要だと考えております」

■伊久美「ありがとうございます。“女性のみならず、すべての人の幸せを目指すこと”は、この番組でフェムテックの定義としていることです。G7の中で、ジェンダーギャップ指数が最下位というのは、どうにかしたいですね。加野さんは、今後のフェムテック市場はどうなっていくと思われますか」

■加野「私自身はフェムテックという言葉を2020年頃に知って、そこから勉強してきました。今は、フェムテックが一過性のブームのように扱われていると感じています。フェムテックがテクノロジーの部分だけでなく、フェムケアの分野にも広がることを希望します。最近では、人生100年時代ともいわれ、男性の健康課題、男性更年期などを解決する “メンテック” という言葉も聞くようになりました。ですから性差問わず、高齢化社会も視野に入れて、男女の健康な暮らしを課題に取り組む分野がどんどん広がっていくと思います。弊社でも新しい事業を考えています」

■伊久美「おっしゃるように、自分の体のことでも知らないことや発見が多いので、学び直しも必要になってきそうですね。また、フェムテックを一時期なブームにはしたくないです。そして、女性だけでなく、男性向けの新しいキーワードが出てくるかもしれませんね。私たちも引き続き探っていきます」

合言葉は「はじめよう!フェムテック!!!」

【番組インフォメーション】 『はじめよう!フェムテック』は、毎週・土曜日15時50分~16時にオンエア。聴き逃しは『radiko』で(※首都圏にお住まいのかたは放送後1週間)お聴きになれます!

●記事まとめ/板倉由未子 Yumiko Itakura
トラベル&スパジャーナリスト。『25ans』などの編集者を経て独立。世界を巡り、各地に息づく心身の健康や癒やしをテーマとした旅企画を中心に、各メディアで構成&執筆。イタリア愛好家でもある。伊久美さんとは28年来の付き合い。https://www.yumikoitakura.com/

●撮影/寿 友紀 

 
 

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