【韓国ドラマ】イ・ドヒョン主演『五月の青春』民主化を求める激動の時代、懸命に生きた若者たちの青春を描いたヒューマンロマンスを韓ドラマニアが徹底解説!
2024/10/03
切れ長な目が印象的な洗練されたイケメン俳優、イ・ドヒョン。Netflixドラマ『ザ・グローリー~輝かしき復讐~』や『良くも悪くもだって母親』などの話題作で主演を務め、現在兵役中ながら非常に高い注目度を保っています。
そんなイ・ドヒョンの主演作『五月の青春』は、1980年5月18日に起きた光州事件を背景に描かれたヒューマンロマンス作品です。
涙なしみは見られない美しくも切ない本作について、韓ドラマニアで韓ドラライターのJUMIJUMIさんに徹底解説してもらいましょう!
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あらすじ:親友の代わりに行ったお見合いで出会ったのは、運命であり許されない相手…。
1980年の春、大学を中心に民主化運動が加熱する激動の時代。
光州の病院で看護師として働くキム・ミョンヒ(コ・ミンシ)は、必死に働きながら留学の準備をしていました。しかし貧しい実家への仕送りなどで、なかなか費用が貯まりません。
そんな中、ミョンヒの親友で光州を牛耳る裕福な家の娘であるイ・スリョン(クム・セロク)に見合いの話が舞い込んできます。見合い相手は民主化運動を取り締まる保安部隊対共捜査課課長ファン・ギナム(オ・マンソク)の息子。民主化運動を先導しているスリョンにとっては、決して受け入れられない相手です。
そこでスリョンはミョンヒに、留学費用を援助する代わりに代打として見合いに行ってくれないかと提案します。
仕方なく見合いに行ったミョンヒは、見合い相手ファン・ヒテ(イ・ドヒョン)に嫌われるように振る舞いますが、ヒテは嫌うどころか、ミョンヒを気に入ってしまいます。そしてミョンヒもまた、何度か会っているうちにヒテに惹かれ始めるのですが…。
見どころ:許されない恋、時代の渦。翻弄される純愛の結末は!?
見どころ1:許されない恋に落ちた2人の切なくも眩しいラブストーリーに感涙!
ミョンヒが偽物の見合い相手だと明らかになった後も、ヒテがミョンヒを想う気持ちはわかりません。民主化運動に没頭しているスリョンは、そもそも結婚する気などありません。
しかしビジネスで協力し合う関係にあるヒテの父親ギナムとスリョンの父親は、子供たちの意思に関係なく縁談を強引に進め、2人に結婚を強要するのです。この縁談が成立しなければ、スリョンの父と兄スチャン(イ・サンイ)が手掛ける新規事業は失敗し、破産することになるのでしょう。
その事実を知り、ヒテに惹かれていく気持ちを押し殺して身を引く選択をするミョンヒですが…。
運命のように惹かれ合うヒテとミョンヒの恋が、春の暖かい日差しとともに美しく描かれています。ダメだとわかっていても止めることのできない、葛藤する2人の想いに、見ているこちらの胸も張り裂けそうです…。
見どころ2:民主化運動が激化する時代、親子の確執や悪縁が運命を狂わせる!
舞台は1980年の光州。市民による民主化要求と軍事政権への反発が激化し、それを鎮圧しようとした韓国軍の一斉射撃などで多くの一般市民が犠牲となった「光州事件」が背景として描かれています。
父親が保安部隊の課長であるヒテは、民主化運動に燃える友人たちから敵対視されています。民主化運動のほか、資本主義に反対し労働運動の先頭に立ち活動するスリョンも、資本家である父親の元で裕福に育ったことから「偽善者」と呼ばれています。
そしてミョンヒもまた、父親の代から続くある悪縁に苦しみながら生きてきました。
「言論の自由」すら許されなかった時代。個人の意思よりも家柄や血筋が強く影響する窮屈な時代。それでも自分らしく生き、自分らしい正義や愛を貫こうともがく若者たちが眩く描かれました。
ただ純粋に自由を求めて生きようとする若者たちの青春は、どのような結末を迎えるのでしょうか…。
見どころ3:層の厚い助演陣が作品に奥行きを出す!
ヒテの父親であり保安部隊の課長ギナムを演じたのはオ・マンソク。2019年ヒョンビン主演の大ヒットドラマ『愛の不時着』でのチョ・チョルガン役に続き、本作でも身の毛のよだつような悪役を熱演しています。
優雅さと品位を見せる反面、地位や権力のためならどんなことでもする執着心と、家族すら見捨てることができる冷酷さを持つ人物です。
スリョンの兄で、留学から戻り新規事業を手掛けようとする若手実業家スチャンを演じたのは、『第3の魅力』『海街チャチャチャ』『ブラッドハウンド』などに出演するイ・サンイです。
優秀なだけではなく家族思いで献身的で、心優しく誠実で責任感も強い!見合い話も後を絶たない「夫にしたい男」スチャンを好演し、ストーリーの中でも重要なポイントを担っています。
さらに韓ドラに欠かせない重鎮キム・ウォネは、ミョンヒの父親ヒョンチョルを演じました。『力の強い女ト・ボンスン』や『キミはロボット』などのコミカルな演技のイメージが強いかもしれませんが、本作ではある事情により娘と距離ができ、後悔を抱える父親を演じています。悲哀のある演技がとても印象的でした。
筆者の感想:春に全力で咲く桜のよう。美しく儚いからこそ、一生忘れられない輝きを放つ青春。
2020年のドラマ『Sweet Home ~俺と世界の絶望~』で兄妹を演じていたイ・ドヒョンとコ・ミンシが、本作では運命的に出会い惹かれ合う男女を演じるということで、見る前から期待が高まりました。
「青春」というと、明るく爽やかな学園ドラマやスポーツに情熱を注いでいるものなどを連想しがちですが、本作の「青春」は全く違うものでした。
作中では春の日差しに向かって全力で花を咲かせ、命の限りを尽くし、儚く散っていく「桜の花」が印象的に描かれています。そんな桜の花のように、全力で生きて全力で人を愛し、抗えない運命に散っていった若者たちの輝かしい時間こそ、本作のいう「青春」です。
全力だったからこそ強烈な印象を残し一生色褪せない輝きを放つ、儚くもかけがえのない時間に、筆者は声を押し殺して泣きました。
「この日にこの街にいなければ…」そんな事を考えてしまいます。
実際に起きた光州事件の背景にも、ヒテやミョンヒたちのように時代と政治に翻弄された若者たちがたくさんいた事でしょう。それぞれの青春がそこにはあったはずです。
見終わった後もしばらくの間、この時この場所にいた人々の青春に切ない痛みを感じ、余韻が抜けませんでした。
1980年代の街並みや、その雰囲気にピッタリ合う懐かしさが感じられるOSTも、作品をより一層美しく彩っています。
あなたも美しいレトロロマンスに涙を流してみませんか?
■執筆/JUMIJUMIさん…韓国留学を機に韓国の文化に魅了される。年間30作品以上の韓国ドラマを視聴し、またライターとして情報発信も積極的に行う。ただ作品の内容を説明をするだけでなく、食や生活様式など文化面から掘り下げた解説を得意としている。インスタグラムはjumistyle99。