世帯年収150~200万が約3割。苦しい家計にあえぐシングルマザーと子どもたちに寄り添う
2023/07/16
宮城県で女性と子どもの支援団体「ミア フォルツァ」を立ち上げた門間尚子(しょうこ)さん。「ひとり親のおかあさんと子どもたちの応援団になりたい」と、仙台駅前に新たな居場所、「寺子屋みあちゃん家(ち)」を立ち上げました。毎週金曜日の夜、中3の受験生に向けて開かれる「寺子屋」を取材しました。
<教えてくれた人>: 女性と子どもの支援団体「ミア フォルツァ」代表 門間尚子
宮城県仙台市で生まれ市内の大学に進学。バックパッカーとして訪れたロンドンで同い年のホームレスに出会ったのがき...
- 今、涙を流しているひとり親のおかあさんと子どもたちの応援団になろう
- シングルマザーが大変だ
- 「寺子屋」でおかあさんと子どもを応援する
- いつも同じ服を着てる。ケガやアザが多い……「おや?」と思う子に声をかけることも「応援」
●プロフィール
宮城県仙台市で生まれ市内の大学に進学。大学在学中パンクミュージックに傾倒し、バックパッカーとして訪れたロンドンで同い年のホームレスに出会ったのがきっかけで社会貢献活動を始める。大学卒業後はフルタイム勤務と並行し、DV被害女性や性暴力害女性をケア。東日本大震災が起きた2011年から、被災した女性と子どもの支援を始め、2015年にNPO団体「ミア フォルツァ(イタリア語で〝わたしのちから〞の意)」をスタート。近年では宮城県内で100余りの子ども食堂を立ち上げた。27歳の息子のひとり親で本業は女性の就労支援。現在は黒猫2匹と暮らす
今、涙を流しているひとり親のおかあさんと子どもたちの応援団になろう
東日本大震災にコロナ禍。災害が起こるたび、つらい女性と子どもが増える。
門間さんの活動拠点は宮城県仙台市。「震災のときは被災した上にDV被害に遭う女性がものすごく増えて、その子どもを含め、過酷極まりない状況でした」。門間さんは彼女たちを支える活動を続けながら、2016年に子ども食堂の運営や普及活動を始めます。「震災後は路上に集まって食事をしたことも。そのとき『みんなで食べるとすごく力がわくんだ』と気づきました。食を支えることは命を支えること。そう考えて、子ども食堂を通して困っている女性や子どもに寄り添う人を増やす働きかけをしてきました」。
そこにコロナ禍。職を失ったり、収入が激減したりと、ひとり親のおかあさんやその子どもたちはさらに深刻な状況にあります。より深い支援が必要だと痛感した門間さんは、新たな居場所「寺子屋みあちゃん家 」を始めました。
シングルマザーが大変だ
宮城県内に住むひとり親世帯に昨年行ったアンケートでは、経済的な困窮や困りごとが深刻化している実態が浮き彫りになりました。「ひとり親世帯の多くは非正規雇用で不安定な状況。親自身が心や体の病気で思うように働けず、困窮している家庭も多いです。コロナ禍で多くの親子が追い詰められ、今は物価高にもあえいでいます」。
【DATA】宮城県に住むひとり親に聞きました 2022年の一年間の収入は?
1 150~200万円 28.2%
2 50~100万円17.9%
100~150万円17.9%
4 250~300万円15.4%
※宮城県内に住むひとり親世帯に向けたアンケート(2022年/ミア フォルツァ調べ 回答数=40世帯)
【参考】日本の子どものいる世帯全体の年収の中央値は約722万円(2020年/厚生労働省調べ)
ひとり親のおかあさんが今いちばんつらいこと
●収入が足りない
●物価が上がるのに収入は上がらない
●子どもに食べさせるものが足りない
●子どもが大きくなるが、服や靴が買えない
●元夫は借金だらけ。今はうつ病だケガだと言っていて養育費がもらえない
●部活費と病院代が足りない
●塾に行かせたり模試を受けさせるお金がない
●追突されてケガ。仕事が肉体労働なので思うように働けず究極的に収入が少ない
●発達障害の子ども2人が家(アパート)で毎日ケンカ。近所の人に警察と役場に通報され、居場所がない
●子どもが不登校になった
●思春期の子どもが私の手に負えない
●孤独を感じるとネガティブ思考が止まらなくなる
※2022年/ミア フォルツァ調べ
「寺子屋」でおかあさんと子どもを応援する
毎週金曜日の夜に閉店後のカフェを借り、中学生3人に大学生と社会人のボランティア5~6人がついて、勉強をみたり相談に乗るなど深いケアを行っています。「安心して過ごせる場所があって、自分としっかり向き合ってくれるひとができると、子どもの自尊感情は上がります。集中力がついて成績が伸びるだけでなく、笑顔が増えたり問題行動が減ったりと、さまざまな変化が起こります」。
いつも同じ服を着てる。ケガやアザが多い……「おや?」と思う子に声をかけることも「応援」
NPOや子ども食堂を立ち上げたりしなくても「応援」はできます。近所の子や子どもの友達、ママ友……「気になることがあったら「余計な口出しをするのは失礼」などと思わず、『何かあった?』と声をかけてほしいです」と門間さん。対応に迷ったときには、「厚生労働省のサイトが便利。さまざまな相談窓口がとてもわかりやすくまとまっています」と教えてくれました。
参照:『サンキュ!』2023年8月号「あしたを変えるひと」より。掲載している情報は2023年6月現在のものです。撮影/久富健太郎 取材・文/神坐陽子 編集/サンキュ!編集部