英語で計算問題?教科を超えた力が求められる「大学入学共通テスト」
2023/06/20
とうとう始まった大学入学共通テスト!大学入試センター試験と比べてどこがどう違うの?親世代の頃からどんどん変化する学校教育、ついていけていますか?今どきの教育・進学事情や新しい教育用語を、専門家にインタビュー取材します。
<教えてくれた人>
・進学指導のプロ 谷本祐一郎さん
ベネッセコーポレーション教育情報センター長。島根県総合教育審議会委員。国内最大規模の「進研模試」のデータ分析などをもとに「これからの大学入試」について指南。メディア取材や講演等も多数。
・ジャーナリスト 宮本さおりさん
夫の米国留学で新聞記者から専業主婦に。帰国後、子育て・教育分野を中心に執筆。『データサイエンスが求める新しい数学力』(日本実業出版社)著者。大学生と小学生の母。
大学入試センター試験と比べて「大学入学共通テスト」はどこが変わったの?
2021年に始まった大学入学共通テスト(以下、共通テスト)は、解答形式がマークシート方式のため、大学入試センター試験(以下、センター試験)とさほど変わったようには見えません。大きな違いは、求められる力が知識の量だけではなくなったということです。
文部科学省は、子どもたちに身につけさせたい学力として「知識·技能」「思考力·判断力·表現力」「学びに向かう力」を掲げています。そのため、共通テストは知識·技能だけでなく、思考したり、判断したり、表現したりする力も測る試験になっています。例えば、英語では、長文を読解したり、語彙や文法の知識を問う問題だけでなく、図表などの資料からどんなことが分かるかを読み取らせる問題が加わりました。この傾向は文系科目だけではなく、理系科目にも見られます。数学では、考察力が試される問題が多く出題されるようになり、読み取りに時間がかかることを考慮してか、数学Iでは試験時間がセンター試験より10分延長され、70分になりました。このように変わりゆく大学入試では、公式だけ覚えていても太刀打ちできません。日頃から本質を理解する学びを心がけ、試験では「何を問われているか」を素早くくみ取る力が必要になっているのです。
小中学生の勉強にも影響はあるの?
今の小中学生は、すでに新しい学習指導要領による学びが始まっていますし、学校でも思考力や考察力を高めるような対話型の授業が多く取り入れられるようになっていますから、さほど心配する必要はありません。ただ、現時点でも中学入試や高校入試の問題で長文化が見られるので、小さな頃から読書などの機会を増やしてあげるといいでしょう。(谷本さん)
「共通テスト」って何が大変?
問題文の文章量が増えたため、読み取るのに時間がかかり、時間が足りないという受験生が続出しています。共通テストでは、1つの文章を深く読む力だけではなく、複数の資料から素早く本質を読み取る力や、あらゆる可能性を考察する視野の広さを身につけることも必要です。また、試験自体は各教科に分かれて行われますが、いずれの科目も教科を超えた力が求められるため、そこを大変と感じることが多いようです。(谷本さん)
英語でも「情報理解力」が試される
共通テストでは、問題文も全て英語に。下記の問題例では、図表の資料と文章の両方から情報を読み取り、文章で述べられている値段についての条件をもとに自分で計算して答えを出す必要がある。
※2022年度大学入学共通テスト「英語」第4問より抜粋
参照:『サンキュ!』2023年7月号「今どきの教育事情どうなってるの?」より。掲載している情報は2023年5月現在のものです。プロップ制作/川村ちゃん 取材・文/宮本さおり 編集/サンキュ!編集部