公立高校が中高一貫化しているのはなぜ?
2024/04/12
公立の中高一貫化って?地元の国公立大の合格率が高いなど、着実に実績を積み上げる公立の中高一貫校。どんどん変化する学校教育、ついていけていますか?今どきの教育・進学事情や新しい教育用語を、専門家にインタビュー取材します。
<教えてくれた人>
・中学受験界の風雲児 吉田努さん
アップ首都圏中学受験事業本部本部長。難関中学への合格者数を伸ばし続ける名物塾長として「世界一受けたい授業」(日本テレビ系)等に出演。22年東京進出を果たし、進学館√+(ルータス)渋谷校を開校。
・ジャーナリスト 宮本さおりさん
夫の米国留学で新聞記者から専業主婦に。帰国後、子育て・教育分野を中心に執筆。『データサイエンスが求める新しい数学力』(日本実業出版社)著者。大学生と中学生の母。
Q 公立高校が中高一貫化しているのはなぜ?
【A】公立高校の復権をかけて各自治体が力を入れているから
かつては、浪人する生徒が多いことから、「4年制高校」などと揶揄(やゆ)されることもあった公立進学校。特に東京では、難関大学の合格実績数の上位を軒並み私立が占める状況となり、難関大学を目指す子は公立よりも私立を選ぶ傾向が強くなりました。そんな状況を打破し、公立高校の復権をかけて進められたのが、公立高校の中高一貫化でした。
東京では小石川、両国、桜修館などの人気の公立中高一貫校が生まれ、最近では、私立最難関中学の1つである開成を蹴って、都立の小石川に進学するケースも見られます。
地方でも政令指定都市を中心に、公立の進学校を中高一貫化する自治体が増えました。大阪は、地域で2、3番手の進学校が中高一貫化しましたが、まだ東京ほどの人気には至っていません。25年度には、愛知でも初の公立中高一貫校が誕生予定で、地域トップ校の明和や刈谷が中高一貫化するとあって注目されています。
私立のような高額な学費はかからず、公立と同等の費用で通えるため、富裕層以外も通いやすいと考えがちですが、東京では中学受験そのものが過熱しているため、公立とはいえ、塾に通わずに合格するのはかなり厳しい状況です。
●人気の公立中高一貫校の例
難関大学の合格者数はそれほど多くなくても、地元の国公立大の合格率が高いなど、着実に実績を積み上げる公立中高一貫校がじわじわ増えてきています。
私立と公立の中学受験対策、どこが違う?
公立中高一貫校の入学試験は「適性検査型」と呼ばれ、私立とは出題形式が異なります。国語、算数、理科、社会のように教科ごとに分かれておらず、教科を横断した問題が出題されるほか、作文を課すところもあります。ただし、適性検査型入試を取り入れる私立はそれほど多くないため、私立中学との併願はかなり難しくなります。中学受験を考えるなら、公立と私立どちらに軸足を置くのかの検討が必要です(吉田さん)。
公立の中高一貫校を選ぶメリットは何?
海外研修や最先端のサイエンス教育を実施する学校もあり、経済的な負担を少なくしつつ、特色ある教育が受けられるというメリットがあります。また、6年間という長いスパンでカリキュラムを組めるので、大学受験に向けての先取り学習も可能になります。私立と比べて多様な子が集まりやすいのも公立の中高一貫校の魅力の1つだと言われています(吉田さん)。
参照:『サンキュ!』2024年4月号「今どきの教育事情どうなってるの?」より。掲載している情報は2024年2月現在のものです。プロップ制作/川村ちゃん 取材・文/宮本さおり 編集/サンキュ!編集部