マルサイ

仕事が辛くて結婚退職。なのに「家事が好きじゃない!」。ピンチをチャンスに変えた人気漫画家のお話

2023/09/17

気になるあの人の「中身」をのぞき見する企画です。家にお邪魔して、見せてもらうのは「棚」と「引き出し」と「冷蔵庫」の中。さて、今回は…。

男子3人とのユーモラスな日常を描いたインスタグラムが大人気となり、単行本も7冊出版している、エッセイ漫画家のマルサイさん。漫画家、インフルエンサー、主婦として、日々忙しく過ごしています。

もともとは家事があまり得意ではなく、でも承認欲求はあるという、ちょっとこじらせ主婦だったそう。そんなマルサイさんが天職と出会ったきっかけや、思春期になった子どもたちとの付き合い方、苦手な主婦業の克服法など、全3回の記事でお届けします。

タブレット一つ、ダイニングの棚一つで叶えた、子どもの頃からの夢

 「ここが仕事場です」というマルサイ家のダイニングは、漫画家を職業にしているとは思えないほどスッキリしています。「今は、タブレットとタッチペンがあれば、漫画が描ける時代なんですよね。だから、道具もこれだけです」。

ここから、あのマルサイさんの漫画が生まれているとは驚きのシンプル空間。ノイズキャンセリングのヘッドフォンと、お気に入りのおやつを用意したら、お仕事モードがオンになります。

マルサイ
仕事場になっているダイニングにて。スッキリとしていて、なおかつ、手の届く範囲に、必要なものが全て揃っています。
マルサイさん
漫画を描く道具はこれだけ。ノイズキャンセリング機能つきのヘッドフォンがあれば、子どもたちが同じ空間にいても集中できる。

 そんなマルサイさんですが、漫画を描くようになるまでには、紆余曲折があったと言います。

仕事がきつくて結婚退職。丁寧に暮らすカリスマ主婦を目指してみた。

 マルサイさんは28歳の頃に兼ねてからお付き合いしていた夫と結婚しました。「結婚前はとある職人の世界にいたのですが、もうどうしてもきつくて…。結婚を言い訳に、絶対に辞めようと思っていました(笑)」。念願叶って仕事を辞めてからは、憧れていた「無印良品」で1年ほどパートとして勤務しましたが、長男の出産を機に専業主婦になりました。

 「実はあまり家事が得意ではなかった」というマルサイさん。「最初は食事もまともに作れないくらい。でも、専業主婦になったんだし、主婦業を誇りにできるくらいに突き詰めなきゃと、気合だけは入っていました。それでも全然、片付けも料理も上手くなりませんでした」。

当時は、「丁寧な暮らし」がブームだったこともあり、雑誌や本で見る素敵な暮らしをしている人にコンプレックスを感じるようになりましたが、そこでマルサイさんは一念発起します。「それなら逆にここを目指そう、主婦誌に載るくらいのカリスマ主婦を目指そう!と思い、インスタを始めたりしたんです」。

頑張った結果、雑誌に掲載される機会もあり、ある意味、そこには達成感も得ることができました。

マルサイ
キッチンカウンター下の棚は、無印良品。左側にマルサイさんのもの。右側は、三男の勉強道具やおもちゃ、ランドセルの置き場になっている。
マルサイ
引き出しの中は、左から、趣味のランニンググッズ、CDなどの「推し活」グッズ、「まだまだお子ちゃま」という三男のおもちゃ。

人気になり始めたマルサイさんの「丁寧な暮らし系」インスタグラムでしたが、現在の等身大のコミカルな漫画投稿に至るまでには、あるきっかけがありました。

「もともと小学生の頃から、漫画家になりたいという夢はありました。でも、やっぱり漫画家志望なんて、中学に入ったくらいからは言えなくなりますよね。そんな遊びみたいなこと、とか言われますし。それでその夢は自分の中に封じ込めてしまいました。ただ、やっぱり好きなことなので、育児日記の端っこに家族の漫画を書いたり、ちょっとした4コマ漫画のようなものを趣味で描き続けてはいたんです」。

 そんなある日、三男が母乳を飲んでいるときに鼻から出してしまった姿がシュールで、面白く感じて漫画にします。「『鼻から母乳』ってコメントをつけてインスタに投稿してみたら、すごく反響があって」。当時はキラキラした素敵アピールのアカウントが多く、子育て漫画の投稿は少なかったこともあり、新鮮に感じてもらえたようでした。この投稿のあと、徐々にフォロワーが増えていきます。

マルサイ
最近のマルサイさんの投稿には、家族の様子が描かれる。最近は、家族で推しているアーティストの話題が多くなっているところ。それぞれの愛が強すぎる(?)エピソードが描かれ、クスリとしてしまう。

「素敵ですね!」のいいねより、「あるあるわかる!」「笑える!」のいいねの方が嬉しかった

「インスタって、写真じゃなくてイラストでもいいんだ、笑ってもらうような投稿もありなんだ、と思ったし、「素敵でしょ」に対する「いいね」よりも、漫画にもらった「いいね」の方が、私は嬉しかったんです。今までは無理していたんだな、と思いました(笑)」。

 頑張って背伸びしていたマルサイさんは、無理をせずに、好きな漫画と暮らしの両方を投稿するようになります。そこから漫画家への道ができていきます。

 「主婦になってから、すごく人から褒められたいという欲求が強かったけど、主婦業って当たり前だったりするから、欲求がそこまで満たされない。でも、好きな漫画で褒められるのは本当に嬉しいんだな、って気づきました」。

マルサイ
「何かやらなきゃ」という焦りの中、手作り品を作ってイベントなどで販売していた時代も。その頃の名残がクロゼットの片隅に残っている。
マルサイ
出版された著書。暮らしから子育て、ランニングまで、自身の実体験から語る、漫画エッセイがヒット中。

 主婦になったからといって、子どもの頃の夢を諦めなくていい。今の時代、夢のかなえ方は一つのやり方だけでなく、色々な方法があります。テクノロジーやデバイスを使うことで、自由に自己実現できるようになり、人生が豊かになる可能性があると、マルサイさんの夢のかなえ方は教えてくれます。

マルサイさんプロフィール

漫画家・インスタグラマー。13歳、11歳、8歳の男子と夫との5人家族。男子3人の子育てをユーモラスに描いたインスタグラム(@maru_sai)が話題となり、漫画家として活躍するように。5人家族の家事や収納、趣味のランニングについてアップしている裏アカウント(@ura_maru_sai)も人気。『ズボラ母さんのゆる貯め節約術』(扶桑社)、『主婦力ゼロからのやってみた家事』(大和書房)、など著書多数。

イラスト/マルサイ 撮影/林ひろし 構成・文/尾崎真佐子 企画/サンキュ!コメつぶ 

 
 

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