男2人が購入したのは壁も収納もない家。 整理収納を学んでわかった「人生に必要なもの」とは?
2023/02/22
気になるあの人の「中身」をのぞき見する企画です。家にお邪魔して、見せてもらうのは「棚」と「引き出し」と「冷蔵庫」の中。「これはマネしたい!」と思う家事のテクニックから、その人の生き方まで、興味深いお話を聞いてきました。
今回の「見せてくれる人」は整理収納アドバイザーでルームスタイリストの安藤秀通さんです。
男二人で「運命の出合い」と思って買ったのは、収納のほとんどない家でした
男性パートナーの通称“ぶたじるさん”と家を購入したのは3年前。数多くの物件を見ながら決め手がなく、「次で決められなかったら一旦延期にしよう」と話していた30軒目で、運命の出合いが!
「選んだのは、収納もない部屋も分かれていないワンルーム。『おしゃれだけど好き嫌いが分かれる物件。住みやすくはないけど、2人は好きなのでは?』と紹介されて。
見た瞬間はまさにその通りでまったく部屋の使い方がイメージできませんでした。でも、収納面では50点だけど、雰囲気や内装が200点だった。大切なほうを優先したら楽しく暮らせると思ったんです」。
捨てられないと思っていた700枚のTシャツから本当に好きなものを選んだら、引き出し1つに収まった
新生活がスタートしたものの、なんだか暮らしにくい、なんだかうまくいかないことの連続。ディスプレイの仕事をしていたこともあってインテリアにはこだわりがあり、見た目はきれいにしているはずなのに、いつのまにかものがはみだしている……。
そんなときたまたま受けた「整理収納アドバイザー2級」の講座が、人生の転機になったといいます。
「物を厳選して、家族が暮らしやすいシステムにすることが整理収納。見た目ばかりにこだわっていましたが、インテリアはその先にあるんだ!と雷に打たれたような感覚になりました。
好きなものがたくさんある家ではありましたが、どうでもいいものに埋もれていたから暮らしにくかったと初めて気がついて。そこからは自分の人生に必要なもの、使いたいもの、好きなものを選んでいき、ものはみるみる減っていきました。
700枚あったTシャツは、引き出しケース1つに収まる量に。高校時代のクラスTシャツさえ、ずっと捨てられなかったんです(笑)」。
「いる?いらない?」を真剣に考え始めたら、パートナーが男性であることはカミングアウトしていいことだと思った
ものを精査していると好きなものが選べるようになり、自分にまつわる事柄すべてにおいて「どっちにしたいんだろう?」と真剣に考えるようになったという安藤さん。
「これからどう生きていきたいか?と考えたときに、ずっとやりたかった家関係の仕事がしたい気持ちが強くなり、会社を辞めて独立することを決意しました。友人関係も、「本当に会いたい人」「自分のことを必要としてくれる人」にしぼったらシンプルになりました」。
今まで親や友人に男性パートナーの存在を隠していた安藤さんでしたが、カミングアウトをすることを決意したのもこの頃。
「もともとことなかれ主義。ゲイって言ったら引かれるかも、親に迷惑をかけるかも……と、なかなか言えずにいたのですが、自分が納得できる生き方をしたほうが周りの人を幸せにできるし、自分らしく生きられる。そう思えるようになったから『これが個性なんです』と堂々といえるようになりました。
今はやりたいことをやって、自分の好きなように生きているという実感が持てるようになりました」。
まずものを減らしたのは鞄の中から。 起こりもしない未来を心配し過ぎていたとわかった
安藤さんが最初に整理をしたのは、意外にもかばんと財布の中!
整理が苦手な人こそ、ハードルが低いかばんと財布を見直すことから始めるといいのだとか。
「財布はレシートやポイントカードでいつもパンパン。いらないものを捨てて、不要なものはもらわない習慣をつけたら、会計のスムーズさにびっくりしました。
私は起こってもいないことが不安でたまらない極度の心配性なので、もしものときのシャンプーやリンスまで持ち歩き、かばんはいつも旅行ですか?状態だったんです(笑)。それからは“必ず使うもの”と“気分が上がるもの”だけにしぼって、とても身軽になりました」。
お客さんに会うことが多いので、エチケットアイテムはポーチにひとまとめ。集めるのが趣味というお守りや手帳にはさんだお客さんのお子さんからの手紙は、“気分が上がるもの”。
「心が落ち着かないときに眺めて、元気をもらっています。なくても困らないものだけど、私にとって必要なものだから必ず持ち歩きます」。
撮影/林ひろし 取材・文/草野舞友