自分の住む街を「もっと楽しくしたい」と行動を起こしている大家さんを取材!

2024/10/16

自分の住む街を「もっと楽しくしたい」と行動を起こしている大家さんがいます。行きたい場所をつくったり、借りてくれる人と会ったり……顔の見える関係を増やし、街の活性化に取り組む足立和則さんにお話をうかがいました。


<プロフィール>
東長崎ぐらし代表 足立知則さん
1980年生まれ。大学で建築を学び、不動産会社に就職。オフィスやホテルの開発事業に20年携わる。2020年に自身が取締役となり「東長崎ぐらし」を設立し、街の活性化に取り組んでいる。二児の父、家族4人暮らし。
https://www.instagram.com/adatomo249

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寝に帰るだけだった街の「住み心地」を考えるようになって

「シャッター商店街」と呼ばれる場所が、各地で増えていると聞きます。建物の老朽化や人口の減少などにより、街に活気がなくなっていくのは避けられないことかもしれません。そんな中でも、自分の住む街を「もっと楽しくしたい」と行動を起こしている大家さんがいます。
その人は、東京・豊島区の東長崎に住む足立知則さん。地主として賃貸経営をする家の二男として育ち、大学卒業後は不動産開発の企業に就職。しばらくは仕事が忙しく、東長崎は「寝に帰るだけの街」でした。地元に気持ちが向くようになったのは、結婚し、子どもが生まれてからのこと。
「地元でのつきあいを、それまであまりしてこなかったので、近所で話ができる人がいなかったんです。行きたい店も少なくて。それに気づいたとき、一生ここに住むのだからもっとおもしろい街にしたいと、自分ごととしての住み心地を考えるようになりました」。
大家としての仕事を少しずつ広げていった足立さん。駅前で貸していた店舗が退居になったとき、「東長崎にカフェがほしい」と、業種を絞って入居者を探します。募集をかけてようやく出会ったのは、世界各国のコーヒー屋さんを巡っているという、モデルでコーヒー愛好家のヴォーン・アリソンさんと、建築家の理恵さん夫妻。ふたりがコーヒーショップ「MIA MIA(マイアマイア)」をオープンすると、お年寄りから若者、家族連れまで、街の人たちが集まって話をするような場が生まれました。思い描いた通りの風景を、足立さんはうれしく感じたそうです。

人に会う大家だから地元の人がやりたいことも知れる

「大家さん」は、管理会社に業務をお任せし、住人と直接対面しないことの方が一般的です。しかし、足立さんはそうではない道を行きました。
「親戚にアパートを経営している人がいて、夏になると住人さんとバーベキューをしていたんです。すごく楽しそうで、住む人たちが顔もわからない状況より安心感があるし、そんな風に暮らせる場所を作ることが、大家にとっての理想と感じました。それで僕も、住人さんと入居時に顔合わせをすることからはじめて、最近では草がのびれば切りに行くし、水漏れがあれば直しに行く、自ら動く大家になりました」。
関わりが増えるに連れて会話も増え、さまざまな声をキャッチするように。「何かをやってみたい人って、結構いる」と実感したそう。ならば街の中に気軽にチャレンジできるような場所をつくろうと、昨年からは、ポップアップスペースの運営も始めました。
「今、駅前は再開発の検討に入っています。再開発って、もともとその街にある文化を取り入れて進めたほうが個性が出るし、いい形で発展できると思うんです。東長崎には、代々続いている個人商店も多くて、その人たちも新しい店を温かく応援してくれます」。
足立さんは多くのことに直接対応することで、顔の見える関係を増やしています。街の文化がいい具合いに熟成された未来が見えるようです。

小さなスペースを借りてお店を持つことができる、ポップアップスペース。もともとこの場所にあって、長年地域の人に愛されたケーキ屋さん(現在は地方に移転)の店名「オディール」を引き継ぎました
ポップアップスペース「オディール」には、張り子ショップ「harikokko」などが出店しています
壱番館の前に、住人みんなが使える小さな菜園をつくったところ、通りがかりのご近所さんともコミュニケーションが生まれるようになりました。「畑って、ほうっておけないみたいで。『これ、もう収穫したほうがいいよ』なんて、声をかけてくれるところがいいです」と足立さん
街に開かれる場所を増やしたくて、古いアパートをリノベーションし、1階を店舗に。週末だけ開く小さな書店「こころの本屋」が入居して、集いの場になっています
「カカオ工房トリビュート」のクラフトチョコレート。厳選された材料でていねいにつくられた味が、東長崎の新定番に

足立さんがはじめたこと

1 「行きたい場所」をつくる
自分のために、「家族でちょっと立ち寄れるカフェがほしい」と借り手を探したのが、足立さんの最初の一歩です。元洋品店を改装したコーヒーショップ「MIA MIA」は、たちまち人気店に。いつもにぎわっています。

2 「借りてくれる人」に会う
他の場所で「カカオ工房トリビュート」を営んでいたふたり。ロマンさんのチョコレートづくりへの真摯な姿勢と、トモミさんのコミュニケーション力に惹かれた足立さんが「東長崎に来て欲しい」と誘いました。

3 誰かの「やってみたい」を試す
集合住宅「壱番館」の前には、住人からの希望で、読み終えた本を交換するためのブックポストを設置。誰かの「やってみたい」をみんなで実践するという、大家と住人を越えた関係になってきました。

撮影協力/オディール https://www.instagram.com/odile_higashinagasaki、カオ工房トリビュート https://www.cacaokobo.jp、こころの本屋 https://cocoronohonya.stores.jp、MIA MIA https://www.mia-mia.tokyo

参照:『サンキュ!』2024年11月号「あしたを変えるひと」より。掲載している情報は2024年9月現在のものです。撮影/キッチンミノル 取材・文/石川理恵 編集/サンキュ!編集部

 
 

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