食べることは生きている上で欠かせない自然な行為ですが、その食べ方は、人の印象を大きく左右する原因のひとつになりえます。どんなにおいしい料理を食べていたとしても、食べ方が汚いと周囲の人に不快な思いをさせてしまうことも。
逆に、食べ方がきれいな人は、それだけで上品で知的な印象を与えてくれるものです。この記事では、食事のマナーを身につけ、きれいな食べ方を実践するためのポイントを詳しく解説します。

食べ方はなぜ大事?
食事のマナーは、周囲への配慮だけでなく、自分自身の印象をよくするためにも大切です。家族や友人との食事、ビジネスの会食、フォーマルな場など、どんなシチュエーションでも食べ方がその人の品格を表すと言っても過言ではありません。
きれいな食べ方をする人は、「こまかいところまで気を配れる人」として好印象を持たれやすくなります。逆に、食事中に音を立てたり、マナーに反した箸の使い方をしていると、だらしない印象を与え、イメージダウンにつながることも。日本では「食べ方は、その人の育ちや性格を映し出す」と考える人が多いため、日頃から意識することが大切です。
また、正しい食べ方は、見た目の印象だけでなく、食事をよりおいしく感じさせてくれる効果も。姿勢や箸の使い方が悪いと、うまく食べ物をつかめず、イライラしてしまう場合もあります。さらに、ゆっくり丁寧に食べることで噛む回数が増え、満腹感を得やすくなり、結果的にダイエット効果が得られるなど、うれしい効果も期待できますよ。
食べるときの正しい姿勢
きれいな食べ方というと、箸の持ち方や箸の運び方、マナーが気になりますが、まずは正しい姿勢が基本です。すぐに気を付けられるのは、背中をまっすぐに保ち、猫背にならないようにすること。
また、食事中にテーブルに肘をつくのは、マナー違反とされています。ご飯茶碗や汁椀は手に持ち、大皿や重い器はテーブルに置いたまま食べます。食器に口を近づけ、顔を落として食べる「犬食い」は、見た目が悪いだけでなく、消化にも悪影響が。器をしっかり持ち、姿勢を正して食べましょう。
スマホやテレビを見ながら食べると、無意識に早食いになり、食べ過ぎてしまう原因にもなります。しっかり噛んで、食事に集中することで、満足感が得やすくなりますよ。
食べ方が汚いと思われる箸の使い方
マナー違反な箸の使い方には、それぞれ呼び名がついていることをご存じでしょうか?無意識にやってしまいがちなマナー違反の箸使いをチェックし、直したいポイントを押さえましょう。
刺し箸
食事中に箸を料理や食材に突き刺して食べる行為を「刺し箸」といいます。とくにご飯に箸を突き立てる行為は、仏壇に供える「箸立て」と似ているため、不吉で縁起が悪いとされています。
また、煮物などに箸を直接刺すと、火の通り具合を疑っているようにも見える場合もあります。料理を作った人が不愉快になることも。食べ物に箸を刺すようなことはせず、箸ではさんで口に運ぶのが正しいマナーです。
立て箸
よそったご飯などに、箸を垂直に突き立てる行為を「立て箸」といいます。立て箸は、仏壇に供えるご飯を連想させるため、不吉とされており、非常に失礼で嫌われる行為です。
また、見た目にとても乱雑な印象を与えてしまいます。とくに、目上の人や正式な場でしてはいけない行為です。
探り箸
盛られた料理の中に箸を入れ、かき回しながら食材を探す行為を「探り箸」といいます。これも、失礼な行為。とくに、大皿料理で探り箸をすると、他の人も一緒に食べる物を選り分けることになり、印象が悪く見えます。
また、自分の器の中であっても食べ物を粗末にしているような印象に。食べる物を決めてから箸をつけるようにしましょう。
移り箸
「移り箸」は、料理を選ぶ際に、一度箸をつけた料理を食べずに別の器へ移す行為のことです。これも、食事マナーでは失礼で、避けるべきとされています。
食べ物を粗末に扱っているように見えたり、どれを食べようか迷っているような、落ち着きのない行動に見えたりすることもあります。
指し箸
「刺し箸」は、箸を人や物に向けて指す行為です。指をさすこと自体が失礼な行為に当たるため、箸を使って指すと、とても無礼な印象になりがち。とくに、人を箸で指すことは不快感を与えます。
さらに、会話中に箸を持ったまま人を指すと、横柄だったり攻撃的だったりする態度に見え、周囲に不快感を与えてしまうことも。話すときは一旦箸を置くなどしたほうがいいでしょう。
寄せ箸
箸を使って食器を引き寄せる行為を「寄せ箸」といいます。箸は食べ物を口に運ぶ道具であり、食器を動かすために使うものではありません。
寄せ箸をすると、とても行儀が悪く、失礼な印象を与えます。また、食器を傷つけたり、倒してしまったりすることもあるため、安全のためにもよくはありません。
にぎり箸
「にぎり箸」は、手をグーにして箸を握るように持つ行為で見た目が悪く、まだ箸が使えない子どものような幼稚な印象を与えます。とくに大人がしていると行儀が悪く見え、周囲に違和感を与えます。
また、にぎり箸では、食べ物をうまくつかめず、かきこむようにして食べることになりがち。これも印象が悪い行為です。指を使って箸の先が動かせるのが正しい持ち方です。
ねぶり箸
箸の先を舐めたり、箸についたものを口で取る行為を「ねぶり箸」といいます。とくに、大皿料理や鍋料理では他の人が使う食器を汚す可能性があり、周囲に不快感を与えます。箸についた食べ物は器の縁で落とすなどして、舐めずに食べるようにするのがおすすめです。
涙箸
箸の先から汁やタレがポタポタと落ちる状態のことを「涙箸」といいます。見た目が汚くなるだけでなく、食卓や衣服を汚す原因にもなり、不快な印象を与えることも。
涙箸を防ぐためには、汁気の多い料理を食べる際に、箸を器の縁で軽くぬぐう、または持ち上げる前に適量を取ることが大切です。
食べるときの正しいフォーク・ナイフの向き
フォークとナイフの使い方には基本のルールがあります。フォークは左手、ナイフは右手で持ち、フォークの背が上を向くように持ちます。ナイフの刃は常に自分側または下向きにし、相手に刃を向けないことがマナーです。
食事中にフォークで食材を刺して食べる際は、フォークの背を上にしたまま使うのが正式ですが、こまかい食材をすくうときはフォークを右手に持ち替え、くぼみを上に向けて使うこともできます。
また、カトラリーの置き方にもルールがあります。食事中に一時的に置く場合は、フォークとナイフを「八の字」にし、ナイフの刃を自分側または下に向けるのがマナーです。一方、食べ終わったことを示すには、フォークとナイフを平行に揃え、ナイフの刃を内側(自分側)に向けて皿の右側に置きます。
フォークとナイフの向きを意識することで、より上品で美しい食事マナーを身につけることができます。
食べるときの口の動かし方
口を閉じて噛むことが大切です。口を開けたまま噛むと、クチャクチャと音が出てしまい、周囲の人に不快感を与えます。また、一口の量を適量にして食べることで、食べこぼしを防ぎ、見た目も美しくなります。
食べ物はしっかりと噛み、飲み込んでから次の一口を取ることで、より丁寧な食事になります。嚙み方にも注意をすることが大切です。
【今すぐできる!】食べ方をきれいにするための簡単チェック
ここまで読んでいただくと、「食べ方をきれにするためには気をつけなければいけないことばかりだ…」と嫌になるかもしれません。そこで、今すぐできる食べ方をきれいにするための簡単チェックをご紹介します。
正しい箸の持ち方をする
箸を正しく持つことは、見た目だけでなく食べやすさにも影響します。親指、人差し指、中指を使い、箸先を揃えて軽やかに動かせるようにしましょう。
にぎり箸やクロス箸は見た目が悪く、食べ物をつかみにくくなるので避けましょう。箸の持ち方は、意外と見られています。
一口サイズにして食べる
食べ物を大きなまま口に運ぶと、見た目が悪く食べづらいだけでなく、口の中がいっぱいになり会話がしにくくなります。また、行儀が悪く見えてしまうことも。
一口サイズにして食べることで、上品な印象を与えるだけでなく、消化にもよい影響を与えます。
音を立てない
食事中に音を立てるのは、周囲への配慮が欠けていると見なされることがあります。とくにクチャクチャと音を立てながら噛むのは避けましょう。
口を開けたまま食べ物を噛んだり、しゃべりながら噛んだりせず、口を閉じて噛むように心がけることが大切。スープを飲むときも、できるだけ静かにすするよう意識しましょう。
片手食いをしない
食事中に片手だけで食べるのは、行儀が悪いとされています。片手食いとは、片方の手を膝の上やテーブルの下に置き、もう一方の手だけで食べること。
とくに、箸やフォーク・ナイフを使う際に片手だけで操作すると、見た目が悪く、不作法な印象を与えます。食器を持つ料理では左手で器を支え、両手を使って食べることが大切です。
三角食べをする
一つの料理だけを食べ続けるのではなく、ご飯、おかず、汁物をバランスよく交互に食べる「三角食べ」は、美しく見える食べ方の一つです。
三角食べを意識すると、食事のリズムが整い、食べ過ぎを防ぐ効果も期待できます。とくに和食では、複数の品を少しずつ食べ進めることで、より美しく食事を楽しむことができます。
食前と食後の挨拶をする
食事の前に「いただきます」、食事の後に「ごちそうさまでした」と挨拶をすることは、日本の大切な食事マナーです。「いただきます」は、食材の命や料理を作ってくれた人への感謝を表し、「ごちそうさまでした」は、食事をいただいたことへの感謝の気持ちを示します。
家族や友人との食事でも、丁寧に挨拶をすることで、より気持ちの良い食卓を作ることができます。こちらは、とくにむずかしいことではなく、今すぐ簡単に実践できること。習慣にしていきましょう。
まとめ
食べ方は、意外と人から見られています。さらに、食べ方ひとつでその人の印象を左右することも。食べ方のマナーを意識することで、上品な印象を与え、食事をより楽しめるようになります。また、よく噛んでゆっくり食べることで、ダイエットにもつながるというメリットも。日々の食事で意識してみてくださいね。