女性が生涯のうちにがんと診断される確率は50.8%。特に女性特有のがんは、20代でも発症するケースが増えていて40代で1つのピークを迎えることに。仕事に子育てに忙しい世代だからこそ、がんの正しい知識を身につけましょう。
40代で発症のピークを迎えることも【子宮頸がん】
\教えてくれた人/
高尾美穂先生
イーク表参道副院長。産婦人科医・医学博士・婦人科スポーツドクター・働く女性の産業医。女性のライフスタイルに合った治療法を提示し、サポート。ヨガ指導者でもある。
子宮頸がんは、子宮の入り口である子宮頸部に発生するがんです。主な原因は、ヒトパピローマウイルス(HPV)の感染。性交渉を通じて感染する一般的なウイルスで、感染しても多くは自然に排除されますが、一部では感染が持続し、前がん状態(異形成)を経て数年後にがんへ進行することがあります。20〜30代での発症が多いものの40 代で発症のピークになることも。ワクチン接種による予防やがん検診による早期発見が可能です。
子宮頸がんは、子宮の入り口にできるがん。検査により非常に見つけやすい
【症状は?】
初期にはほぼ自覚症状がない
[進行すると……]
● 不正出血
● 異常なおりもの
● 下腹部の痛み など
【検診は?】
定期的な検診が重要!早期発見できれば治療しやすい
がん発症の初期に自覚症状がないからこそ、定期的な検診を受けることが何より大切。子宮頸がんは検査により非常に見つけやすいがんです。20歳以上を対象に市町村で行う検診を利用するなど、定期的な検診を継続して受けるようにしましょう。
【どんな治療をするの?】
治療法はがんの進行度(ステージ)によって異なります。
● 手術、放射線治療、薬物療法 など
【日常生活で気をつけること】
● 禁煙
● バランスのよい食事
● 適度な運動
● ストレス管理 など
がん治療にまつわるQ&A 1
仕事しながら治療できる?
患者の3人に1人が働く世代であり、多くの人が通院しながら仕事を続けています。まずはかかりつけ医と働き方に合わせた治療計画を立てましょう。また、全国にある「がん相談支援センター」では様々な相談が可能です。
がんになっても妊娠可能?
子宮頸がんの初期なら子宮を温存する手術で妊娠可能な場合も。ただし、抗がん剤治療では卵巣機能にダメージを受け、不妊になる可能性があります。妊娠を望むなら治療前に卵子や受精卵の凍結保存をかかりつけ医に相談を。
仕事や育児に忙しい世代こそ乳がん年齢【乳がん】
\教えてくれた人/
島田菜穂子先生
ピンクリボンブレストケアクリニック表参道院長。乳腺科・放射線科専門医。女性に寄り添う早期発見と治療を行う。乳がん死ゼロを目指すピンクリボン運動を推進。
乳がんは、乳房にある乳腺にできるがんです。9人に1人の女性が生涯で乳がんにかかるといわれ、まれに男性が発症することも。検診等による早期発見、医療の進歩により、乳がんは治癒する確率が高い病気です。進行するとリンパ節や骨、肺など他の臓器に転移し命を脅かすこともあり、定期的な検診が大切。また、乳がんは自分で発見できる唯一のがん。セルフチェックを心がけ、少しでも変化を感じたら医療機関へ受診を。
乳がんのできやすい部位
【症状は?】
少しでも変化があれば迷わず受診を
● 乳房のしこり
● 乳房のくぼみや変形
● 乳頭からの分泌物
● 左右の乳房の形の違い
● 脇の下のリンパ節が腫れる など
【検診は?】
マンモグラフィと超音波検査、ベストな組み合わせで定期的な検診を
マンモグラフィ、超音波検査、どちらかだけでは乳房内を十分に観察するのが難しいため、うまく組み合わせて検診を。超音波検査は、授乳中・妊娠中の方でも検査が可能。年齢や家族歴などに合わせて、かかりつけ医と相談し、自分に合った検診を定期的に受けましょう。
【どんな治療をするの?】
治療法はがんの進行度(ステージ)によって異なります。
● 手術、放射線治療、薬物療法 など
【セルフチェックの習慣を】
鏡の前で胸を見る、「の」の字を描くように4本の指で触って確認するなど定期的にチェックを。生理が始まって1週間後は乳房が柔らかく、しこりも見つけやすい時期。月1回の習慣が乳がんの早期発見につながります。乳房を意識する生活習慣を。
がん治療にまつわるQ&A 2
乳房や子宮は切除するの?
乳がんの早期段階なら乳房温存手術(がん部分のみ切除)も可能。乳房を切除した場合でも再建手術を選択することができます。子宮頸がんについても早期がんや前がん(異形成)ならば子宮を残せる場合もあります。
抗がん剤による脱毛が心配
一時的な副作用による髪や肌の変化や程度は個人差があるため、まずはかかりつけ医に相談しましょう。自治体によってウィッグの助成制度がある場合も。医療機関でアピアランスケア(外見ケア)を受けることもできます。
EVENT REPORT
10月5日、日本医師会シンポジウム「知って安心!女性のがんを正しく学ぼう!」が約380人の参加者とともに開催されました。
フリーアナウンサー中井美穂さんの進行のもと、がんについての解説はもちろん、生活習慣で気をつける点など、仕事に子育てに忙しい女性に向けて参考になる話がありました。
「最近婦人科にかかりましたか?」出産後受けていない人も多いはず。まずは2年に1回市町村の子宮頸がん検診を受け、自分の体に向き合う機会をもちましょう(高尾先生)。
がん検診で早期発見できれば命や乳房を守るだけでなく、出産やキャリアを諦めないで済みます。治療に費やす時間や治療にかかるお金も少なく済みますよ(島田先生)。
参加者の声
親友も乳がんで乳房全摘しウィッグを使用中。治療に前向きな姿を見て、私も正しく備えたいと思いました。(町田円香さん)
0代になり自治体の検診も増えました。面倒くさがらず「毎年誕生月に検診」と決め、受診したいと思います。(堀内 香さん)
もし異常が見つかっても大丈夫。がんへの不安があれば1人で抱え込まず、かかりつけ医に相談しましょう。
提供/日本医師会