舞台を裏から支える“職人”たちが主役に 「第31回 ニッセイ・バックステージ賞」表彰式レポート

舞台を裏から支える“職人”たちが主役に 「第31回 ニッセイ・バックステージ賞」表彰式レポート

2025/12/02

2025年11月18日、日比谷の日生劇場にて「第31回 ニッセイ・バックステージ賞」表彰式が行われました。舞台芸術を裏側から支える技術者の功績をたたえる特別な賞です。

格式ある式典と聞き、少し緊張して会場へ向かったのですが、思いがけずとてもアットホームな雰囲気。展示スペースでは舞台関係者たちが作品に見入っており、語られる言葉も温かく、人と人とのつながりが感じられる空気が流れていました。

サンキュ!STYLEライター。以前家政婦として活動していた知識と2年超えの主婦業で培った経験を生かした、簡単...

>>>マミの記事をもっと見る

ニッセイ・バックステージ賞とは

日生劇場内
日生劇場内

舞台は、俳優や演出家だけでは成り立ちません。衣装、美術、背景、照明、音響など、裏で支える多くの技術者たちによって世界観が形づくられています。しかし、その功績は表に出にくく、後継者不足という課題も抱えているとか。

公益財団法人ニッセイ文化振興財団は、こうした「舞台の根幹」を担う人々を応援したいという思いから、1995年にこの賞を創設。技術の継承と舞台芸術の発展を支えてきました。

温かな空気に包まれた式典

温かな空気に包まれた式典

当日は関係者による展示も用意され、舞台衣装や背景画などの技術の奥深さに触れることができました。

筆者も会場に入りながら、「普段は客席から見ている舞台が、こんなにも多くの人の技と努力に支えられているんだ」と胸が熱くなる瞬間がありました。

ちょうど数日前に、歌舞伎の世界を題材にとった映画『国宝』を鑑賞したばかりだったことも重なり、舞台作品を成立させる職人技の尊さをより強く感じる場となりました。

今年の受賞者

今年の受賞者

2025年のバックステージ賞は、衣装付けの中村洋一さん と舞台美術背景の松本邦彦さん のお二人。

中村洋一さんのパネル
中村洋一さんのパネル

衣装付け・中村洋一さん

1970年に東京衣装株式会社に入社し、半世紀以上もの間、衣装付けとして舞台を支えてきた中村さん。南座公演をはじめとする名舞台の現場で活躍し、故杉村春子さんをはじめ多くの俳優から絶大な信頼を寄せられてきました。

衣装付けは、俳優が舞台に立つ直前に触れる「最後のスタッフ」。演技の質さえ左右することもある繊細な役割です。

関係者から語られたエピソードには、数十人の俳優が一度に舞台袖へ駆け込む怒涛の早替えを汗だくで支える姿や、公演終了後には握力が残っていないほど力を尽くした日の話など、職人の誇りと覚悟が感じられました。

さらには、若手育成にも力を注ぎ、培った技術を惜しみなく伝えているとのこと。「裏方の矜持」を体現するような存在です。

松本邦彦さんのパネル
松本邦彦さんのパネル

舞台美術背景・松本邦彦さん

舞台背景の制作として国内外の劇場から厚い信頼を集める松本さん。背景画は演出家の意図を丁寧に読み取り、観客にとって世界観を視覚化する重要な要素です。

松本さんは、新しい素材や技術の研究を続けながら、長年第一線で活躍。1枚の大きな背景画を、時には一人で5日かけて描き上げることもあるという圧倒的な技量を持ちます。

関係者からは「魔法使いのようだ」という声が上がり、作業工程のひとつひとつに深い愛情と確かな技術があることがうかがえました。

作家・吉本ばななさんの作品にまつわる背景制作エピソードも紹介され、松本さんの仕事が多くのクリエイターに影響を与えていることが改めて感じられました。

スピーチから伝わる 「支え合う力」

お二人のスピーチからは、仲間や後輩への感謝、舞台を支える人々への深い尊敬、技術継承に対する強い思いがしっかりと伝わってきました。

表に立つ人たちを支えるために、汗を流し、時には時間との闘いの中で作品に寄り添ってきた姿。その背景には、「舞台をよくしたい」という一心で支え合うチームワークがあることがわかります。

筆者自身もこの温かな言葉にふれ、改めて「舞台は多くの人の力でつくられている」という当たり前のようで忘れがちな事実を思い出しました。

舞台芸術をもっと深く楽しむために

裏方として作品を支える人々の存在を知ると、舞台の見方はぐっと広がります。衣装の合わせ方や背景の色づかい、場面転換の一瞬にまで、技術者たちの丁寧な仕事が息づいています。

今回の表彰式を通じて、舞台は表に立つ人だけでなく、多くの人の技術や思いが積み重なってできていることをあらためて感じました。

ぜひ、好きな作品や気になる公演に触れるとき、そんな「支える力」にも思いを寄せてみてください。きっと舞台が、いつもより少し豊かに感じられるはずです。


提供/日本生命保険相互会社

■執筆/マミ
以前家政婦として活動していた知識と20年超えの主婦業で培った経験を生かした、簡単な掃除や料理アイデアが人気の家事クリエイター。現在はプロ主婦として活動中。
編集/サンキュ!編集部

 
 

PICK UP ピックアップ

TOPICS 人気トピックス

RECOMMEND