「香典の金額相場」を関係性別に紹介、包み方・渡し方・郵送時の注意点も
2019/01/23
香典に包む金額は意外に悩みがちなもの。親族、会社の上司、知人・友人など、故人とのお付き合いの深さによっても金額を考えなくてはいけません。そこで今回は、冠婚葬祭アドバイザーの中山みゆきさんに、香典の相場について聞いてみました。
香典を渡す理由は?
香典とは、亡くなった方の霊に手向ける香を持参するという仏事の習慣から来ています。昔は故人との最後のお別れに、遺族側は近隣の人たちに食事の振る舞いをしなければなりませんでした。しかし出費が多くなるため、近隣の人たちが米や麦、食料やお酒を持ち寄ったそうです。それが時代を経て、線香、抹香や花と変わりました。現代では葬儀で必要なものを遺族側がすべて用意するようになり、お香に代わる香の料(代金)との意味で現金を供えるようになりました。故人への供養とともに、その遺族の葬儀費用の一部を負担する意味合いも強くなっています。キリスト教など仏式以外は、香典とは呼びません。
また、四十九日や一回忌などの法事の際に包むものも「不祝儀袋(葬儀や法事などの際に金品を包むのに使う)」や「香典」と呼びます。
親族が亡くなった場合の香典の金額相場
親族が亡くなった場合、亡くなった方と同居している、同居していないなどを基準に香典を出すか出さないかを決めることが多いようです。祖父母が亡くなった場合に、結婚して家庭をもっている孫は同居・別居にかかわらず香典は出します。一方、独身の孫の場合は、喪主が自分の親が務め喪主側になるわけですから香典は出しません。
●夫または妻を亡くした場合に、喪主は子どもが務めた場合
→残された夫または妻は香典を出しません。
●両親が亡くなった場合に、同居している兄弟姉妹が喪主を務める場合
→喪主は香典を出しません。その他の別居している兄弟姉妹は香典を出します。
【故人との関係による香典の相場】
・祖父母が亡くなった場合……1万円
・両親が亡くなった場合……5万円〜10万円
・兄弟姉妹……3万円〜5万円
・叔父・叔母、伯父・叔母、親戚……1万円~3万円
友人・知人・近所の方・勤務先の方の香典相場
夫や自分の勤務先の上司・同僚・部下やその家族が亡くなった場合や友人・近隣の方が亡くなった場合、香典を出すか出さないかは、その方との関係などで決まります。
【故人との関係による香典の相場】
・勤務先の社員の家族、取引先関係……5千円~2万円
・友人・その家族、近隣、その他のお付き合い……5千円~1万円
会社や町内会などで香典の金額が決まっている場合もありますので、その場合はそれに従うようにしましょう。
香典を包む側の年齢で相場も変わることもある
香典を包む側の年齢によっても変わります。また、故人との関係によっても金額は変わってきます。一概には言えませんが、下記の表を参考にしてください。
【親族の場合】
【職場・友人・近隣の場合】
避けた方がいい金額はある?
香典に包む金額は、偶数は「割る」、「切れる」ので避けます。4や9の数字も「死」や「苦」を連想させる数字はNGです。ただ最近は、2万円は気にしないで包む方もいます。
法事の場合の香典相場
初七日、四十九日、一回忌、初盆などの法事に包む香典の金額をまとめました。
【初七日】
最近では葬式のときに同時に行われるようですが、別に行われる場合もあります。法要、会食ともに参加する場合は、会食費を少し上乗せする気持ちで。親族でもその血縁の度合いで金額は変わってきますので、あくまでも目安です。
●法要のみ参加の場合(夫婦で参加)……1万円~5万円
●法要と会食にも参加(夫婦で参加)……3万円以上
●法要のみ参加の場合(ひとりで参加)……1万円~3万円
●法要と会食にも参加(ひとりで参加)……1万5千円~5万円
【四十九日】
四十九日には、香典とは別にお花を贈ったり、お菓子などのお供えの品物を持参することもあります。お供えの品物は3千円から5千円くらいのものが相場になります。
●法要のみ参加の場合(夫婦で参加)……1万円~2万円
●法要と会食にも参加(夫婦で参加)……3万円以上
●法要のみ参加の場合(ひとりで参加)……1万円~1万5千円
●法要と会食にも参加(ひとりで参加)……1万円~3万円
【新盆】
亡くなった方が祖父母、実の親、義理の親、兄弟姉妹など関係性により金額は変わります。初盆には提灯を供える場合もあるので、その場合は香典として包む金額も変わってきますので、下記の金額は参考まで。
●法要のみ参加の場合(夫婦で参加)……1万円~3万円
●法要と会食にも参加(夫婦で参加)……1万円~3万円
●法要のみ参加の場合(ひとりで参加)……5千円~1万円
●法要と会食にも参加(ひとりで参加)……1万円~3万円
【一回忌・三回忌・七回忌】
一回忌、三回忌、七回忌に関しては、大体同じ金額と考えてよいでしょう。トータルで2万円にする場合で、お供えを5千円相当持参する場合は、香典を1万5千円包む形でいいと思います。
●法要のみ参加の場合(夫婦で参加)……1万円~2万円
●法要と会食にも参加(夫婦で参加)……1万5千円~3万円
●法要のみ参加の場合(ひとりで参加)……5千円~1万円
●法要と会食にも参加(ひとりで参加)……1万円~2万円
香典を差し出すときのマナー
香典袋をバッグからそのまま出すのはマナー違反。ふくさを使うのが常識です。お通夜、葬式、法事などの香典を包むふくさは「紺」「グレー」が一般的ですが、紫も使われます。この「紫」は慶事・弔事両方使えるので、一つあると便利ですね。ふくさが無い場合は小さな風呂敷やハンカチで代用してもかまいません。
【ふくさのたたみ方】
1.ふくさを裏を上にして置きます。
2.香典袋を中央よりやや右の方へ寄せておきます。
3.右側を中に折り込みます。
4.右側→下側→上側の順番に折リます。
5.右の上下に小さく三角形ができます。
6.残った左側を折って包み込みます。
ふくさがなかなか上手にたためない、正直たたむのが面倒、という人には簡易の金封ふくさがおすすめ。最近では、こちらを使う人が多くなっているようです。
香典を渡すタイミングと差し出し方
お通夜、葬式の会場に着いたらまずは受付へ行きます。
1.受付では、受付係りの方に深く一礼して「このたびはご愁傷さまでございます」とひとことお悔みの挨拶をします。
2.バッグなどからふくさに包んだ香典袋を取り出します。ふくさを手早くほどき、そしてふくさを軽く畳んで、その上に香典袋をおきます。その時は自分から見て香典袋が正面に向くようにします。
3.それから、香典袋を相手から見て正面(表書きが受付の係りの人に読めるように)になるように右向きに回転させます。そして、「ご霊前にお供えください」と差出します。
4.最後に芳名帳に記入します。
5.記帳をすませたら「お参りさせていただきます」と述べて一礼します。
通夜、お葬式どちらも参列する場合の香典は
通夜は亡くなってからあまり日が経たないうちに行われる場合もあり、参列する側は香典を用意できないというときも。そんなときは、お葬式の際に持っていけば大丈夫です。
また、通夜のときなどにすでに香典を持参している場合は、お葬式の際には記帳だけでかまいません。「香典はお通夜のときにお持ちしました」と、受付の方に伝えるといいでしょう。再度持参する必要はありません。
通夜にもお葬式にも参列できないから香典を郵送したい
現金をそのまま封筒に入れて送らないように。必ず香典袋に入れて送るようにしてください。持参する場合と同じように、香典袋の表書き、中袋の住所、氏名、金額など書くのを忘れないように。現金書留の封筒に住所を書いたから香典袋に書かないのはNG。あとで、家族の方が整理する時に困るものなのです。
ご遺族が香典を辞退されているときはどうするの
何も持たずに参列して大丈夫です。ただし、気をつけたいのが「ご厚志ご辞退」と「供物・供花ご辞退」の違いです。
「ご厚志ご辞退」は「香典も供物・供花も受け取りません」と言うことなので、手ぶらでOK。
「供物・供花ご辞退」は、「供物・供花は受け取りません」と言うことですので、供物・供花は贈りませんが、香典は持参します。この違いを認識しておきましょう。
「ご厚志ご辞退」の場合でも香典を持たずにいくのが不安なら、香典だけは用意して、会場の受付の様子を見て決めるのがいいでしょう。
まとめ
供物や供花は、香典と同じ意味合いのものです。ですから、香典か供物・供花どちらかでもかまいません。しかし故人への思いが強かったり、関係の深さによっては両方贈ってもよいですが、遺族側の負担にならない範囲で贈るのがマナーです。
教えてくれたのは・・・中山みゆきさん
冠婚葬祭アドバイザー。All Aboutで冠婚葬祭サイトの運営に携わる。現在は、その知識を生かして冠婚葬祭関連のアドバイス活動を重ね、「思いやり」の心を大切にした情報を発信中。
取材・文/有馬未央(KIRA KIRA)