このお正月に「実家でやっておくべき」10のこと
2018/12/23
お正月で実家に帰省する人も多いですよね。たまの帰省は「親」や「実家」のことを考える良い機会。病気や介護のことなど、「そのうちに」と後回しにしていると、いざというとき慌てたり、深刻な事態を招くことも。「元気なうちに対策しておけば……」と後悔しないよう、できることから始めましょう。
<教えてくれた人>
山口里美さん(司法書士、行政書士)
司法書士法人コスモ代表。一般社団法人日本リレーションサポート協会を主宰。遺族へ思いをつなぐ相続などのサポートを行う。実家の片づけ事情にも詳しい。
平松類さん(医師、医学博士)
眼科医。多くの高齢患者、延べ10万人のシニアと接し、老人特有の症状や悩み、対処法に精通。各メディアで情報を発信中。
1.重要書類の置き場所を確認する!
急死や認知症などで、万一コミュニケーションが取れなくなった場合、通帳や保険証、保険証券などの場所がわからないと、手続きが大変になります。「親のお金を介護費用に充てられず、自分の貯金を切りくずすことにもなりかねません」(山口さん)
*角が立たない伝え方のコツ*
〝急な入院時のために、保険証の場所だけ教えて〞と医療まわりの重要書類から尋ねるとスムーズ。さらに、「通帳など大事なものは1つにまとめておいて」と伝えると◎(山口さん)
【重要書類チェックリスト】
・通帳
・クレジットカード
・パスポート
・有価証券預かり証
・ネット銀行や証券のパスワード
・印鑑
・保険証券
・土地などの権利証
・マイナンバーカード
・年金手帳
2.合言葉を決めておく
最近は「オレオレ」ではなく、娘を装って父親をだます手口も多発。「電話では合言葉を言うなど、親子間でルールを決めると防犯に。また、高額商品のセールスやデジタル詐欺では高齢者が狙われていることを話題にして警笛を鳴らして」(山口さん)
*詐欺被害を防ぐコツ*
詐欺被害を防ぐには、親に頼られる存在になること。特定の分野に「詳しい」とアピールするのも効果あり。「高齢者は詳しい人に頼るので、〝自分はリフォームや投資に詳しい〞などと伝えておくと、相談してくれるように」(平松さん)
3.親の「老化度」をチェックする
■目と耳の衰えは認知症につながる!
視力や聴力が衰えると刺激が減り、考えることも面倒になるため認知症が進みやすくなるそう。「目が見えにくい様子なら、検査や老眼鏡の調整を促しましょう。耳は聞こえているふりをする場合も多いので、具体的な答えが必要な質問をして確認を」(平松さん)
*年を取るとどうなる?
視野の変化:まぶたが下垂すると、視野の上3分の1くらいが見づらくなります。遠くの信号機は見えても、近くの信号機は見落とす危険が。
聞こえ方の変化:70代以上では半数が難聴に。高音域、特に若い女性の声が聞き取りにくいので、娘や嫁の話に反応が鈍くなることも。
4.転びやすいルート〞の安全 を確保する
高齢者は骨がもろく、ちょっとしたことで骨折します。「骨折で動けなくなると、認知症や寝たきりになるケースが非常に多い。骨折事故の7割は家の中で起きているので、足もとが散らかっていないか、照明が暗くて物が見えにくくなっていないか確認を」(平松さん)
*転びやすいのは?
● トイレに行くルート
● お水を飲みに行くルート
「夜中に起きてトイレに行ったり、水を飲みに行ったりするときは、暗いのと寝ぼけているのとでつまずきやすい。このルートには何も置かないようにしましょう」(平松さん)
*最も危険なのは「階段」!!
「階段で転ぶと平地の何倍も深刻なケガに!足のつけ根の大腿骨を折って寝たきりにならないよう、左記の対策を」(平松さん)
5.日用品は「ゴールデンゾーン」 に収納する
物が高い位置にあると、背伸びをしたり脚立に乗ったりしてバランスをくずし、思わぬケガをすることも。「かといって床に置くと今度はつまずく原因になります。よく使うものは、無理のない姿勢で出し入れできる、顎下から腰上までの位置に移動しましょう」(山口さん)
6.ドアまわりの安全を確認する
トイレのドアに物が倒れ、出ようとしたらドアが開かない……という事故も。「外に連絡もできず、1人暮らしならだれかが訪ねてくれるまで最悪そのままという事態にもなりかねません。特にほうき、掃除機、傘など倒れやすく長いものが、ドア付近にないかチェックを」(山口さん)
7.親の片づけ方をチェックする
実家に帰省して、あまりの散らかりように驚くことも。年を取ると手もとしか見えないから片づけが苦手になるのです。「認知症で片づけられていない可能性もありますが、そもそも高齢になると視野が狭くなり、リモコンやなど手もとしか見えていないことがほとんど。部屋全体が見えていないので、散らかっていること自体に気づいていない場合も多々あります」(平松さん)
*部屋全体を写真に撮ってみると効果的
写真なら、視野が狭い高齢者でも部屋全体を見渡せます。「〝こんなに散らかっているんだ〞と認識でき、自分から片づけようと意識が変わります」(平松さん)
【アドバイス】
◆捨てられない親には「私がもらうね」作戦が効く!
「処分できないのではなく、物を捨てることに抵抗があるだけ。引き取りを申し出れば、〝使ってくれるなら〞と喜んで手放してくれ、角も立ちません」(平松さん)
8.親がのんでいる「薬」をチェックする
親のお薬手帳を確認して、のんでいる薬の〝効能・効果〞を検索すれば、健康状態を知る手がかりに。「日常的に薬を服用していると、治癒しているのにのみ続けたり、何の病気か忘れたりするケースも。〝これ、何の薬?〞と聞いてわからない場合は、病院に確認を」(平松さん)
9.アルバムを整理してエピソードを聞いておく
親が子どものころ住んでいた家や好きだったことを聞きながら、一緒にアルバムを作るのもおすすめ。「記憶をたどると、認知症の予防に。アルバムを見て記憶を共有しておけば、万一認知症になっても、好きな歌を一緒に歌ったり、懐かしい場所に連れて行ったりでき、進行を遅らせる効果が。徘徊時に捜す手がかりにもなります」(平松さん)
10.〝リレーションノート(連絡ノート)〞を 書いてもらう
万一のとき、親はどうしたかったのかを聞いておらず悔やむ人は多数。「連絡ノートなら遺言状より書きやすい。重要事項の伝達だけでなく、親自身がやりたいことに気づくきっかけにもなります」(山口さん)
【こんなことを聞いておこう】
*ぐあいが悪くなったとき*
□介護方法の希望
□病気の告知について
□延命治療の希望
□認知症になったら
「会話が困難になったときに備えて、希望を教えて」と聞くとスムーズ。介護を頼みたい人や場所、余命の告知をどうするかなど、〝命〞に関することを優先に(山口さん)
*まさかのとき*
□葬儀とお墓の希望
□遺言状はあるか
□連絡してほしい友人
どんな葬儀が希望か、呼んでほしい人・呼んでほしくない人を確認。「死の話は抵抗があるもの。書けたら置き場所だけ教えておいてと、無理強いはしないのがポイント」(山口さん)
親も年を取っていくもの。「もしも」の事態が起こってからでは手遅れです。元気なうちから「万が一」への備えを始めることが大切ですよ。
参照:『サンキュ!』1月号「実家の大問題」より。掲載している情報は18年11月現在のものです。イラスト/にしぼりみほこ 編集/サンキュ!編集部
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