レス夫婦もフル夫婦も必見!「夫婦の営み」再定義とは?
2019/09/03
「恋人・夫婦仲相談所」の所長として、数多くの夫婦にセックスレスに関するアドバイスを行っている三松真由美さん。今回は、セックスレスに悩む夫婦はもちろん、セックスフル夫婦も決して他人事ではない、「夫婦の営み」の定義に関して、解説をしてもらいました。
「抱きしめて欲しい」という妻心と避ける夫
夫婦のセックスレスをテーマにしたマンガ『あなたがしてくれなくても』(著・ハルノ晴)をご存知でしょうか。
30代前半でセックスレスになった吉野みち・陽一夫婦の関係性を、おもに妻側の視点から描き、行為そのものより「夫に抱きしめて欲しい」という切ない気持ちを中心とした内容が、女性たちの共感を呼んでいます。じつは筆者もこの作品に取材協力させていただき、セックスレスの根っこの部分、夫と妻それぞれが抱える葛藤をお話しました。
同作の夫・陽ちゃんは、「抱きしめて欲しい」という妻心を理解しているものの“最後までできない”ことに対する不安から、妻に対してそっけなくしてしまいます。このような夫は現実にも多数存在するでしょう。そして、そういった夫に対して妻は“最後までしてもらえない”ことに「私との営みに飽きてしまったからでは?」と不安になるのです。実際、筆者が運営する夫婦仲相談所にも、妻側から同様の悩みが多く寄せられています。
結婚生活は不変ではありません。仕事、環境、家族構成、健康状態、そして性の欲求も変化します。このなかで性の欲求に関しては、結婚から5年程度経過すると自分たち夫婦が「セックスレス層」、「フル層」、「そこそこ層」……のどのレイヤーに属するのかがわかってくる。そして、夫婦によってその受け止め方は異なります。
以下は、筆者がかつて取材した“レス層”に属する夫婦の声です。
レス層A子さん(30代後半)
「うちは子どもが産まれてからまったく営みはありません。元々夫はエッチなことが好きではなく、ツーリング仲間と自然の中を走るのが好きなんです。私も子どもが小学生になってからツーリングを一緒にするようになって、アウトドア派家族としてなかよく過ごしています。家事もするし、子どもにもしっかり向き合ってくれる夫と家族の絆を深めています。このままレスでも問題ないと思ってます」
レス層B子さん(30代前半)
「結婚3年目ですが、新婚旅行以来レスです。私がその行為を好きじゃないんです。痛いし、そんな気持ちいいものじゃないし。夫もとくにしなくてもいいと言ってくれてます。毎日キスはしてます。一緒にゲームしたり、犬の散歩したりでなかよし夫婦です。子どもはつくらない方針です。私は仕事でもっと上をめざしてるから。夫もそれに賛成です」
セックスレスでもお互い納得なら問題ない?
『あなたがしてくれなくても』の主人公たちは、セックスレスに対して悩み苦しんでいますが、ここで紹介した夫婦は何も問題ないようです。レスでも家族愛が深まれば、共通の趣味で楽しむことができれば、目的を持って協力し合えば誰も文句などありません。それぞれに夫婦の形があるのです。
しかし、前述のとおりそれも不変ではありません。元々エッチなことは苦手だったがネットなどでセクシーなコンテンツを見ているうちに興味がモリモリ湧いて、再度営みたくなったということもあるでしょう。仕事が以前より楽になり、疲れなくなったら性欲が蘇った、ということもありえる。寝室事情に関する変化は、レスになるにせよフルになるにせよ、いつか必ず起こります。
だからこそ、筆者は常々「人の三大欲求の1つをなぜ封印するのか」という意見を貫いています。つまり、セックスレス改善の立ち位置にいます。
“できない”のなら、夫婦のセックスを再定義しよう!
実際、「お互い営みがなくても納得している」という妻が、話をしているうちに「本当はしたかった」と本音を吐露するケースは少なくありません。「前はしたくなかったけど、今は抱きしめて欲しい」と意見を翻すこともあります。
本当はレス層から抜けたいのに、遠慮して「なくていい」と愛想笑いしてしまう。あるいはあきらめて「なくてもいいか」と本音を曲げてしまう。奥ゆかしくて、他者を気遣う、じつに日本人らしい現象と言えます。
『あなたがしてくれなくても』の主人公たちも、悩むキャラとして描かれていて、妻のみちにいたっては、今にも泣き出しそうな表情カットが多い。この作品が絶大な支持を得ているということは、彼女に感情移入する妻が数多くいるということです。もちろん、ワイルド肉食系妻、バリキャリプロデュース妻たちだって、ある日突然、夫がシラッとベッドから逃げだしたら、やはり悲しくて泣きたくなるでしょう。
しかし、くりかえしになりますが性の欲求は経年変化し、いつどう転ぶかわからないもの。変化のたびに一喜一憂していては大変です。だから筆者は、「セックスの定義は夫婦でつくる」ことを提案しています。
これは、「相手を異性として感じることができるなら、立派なセックスではないか」という考え。生物学的に生殖を目的としない年齢になっても、男女の愛を深める行為を卒業してはいけません。その行為によって女性としての自信がキープできるからです。男性もしかり。
夫婦の営みは子孫を残すことや快楽だけが目的ではありません。女性として、男性として認める、お互い必要としていることを確かめ合う行為なのです。だから、必ずしも挿入が伴う必要はないと筆者は考えます。
抱きしめるだけ、目を閉じてキスをするだけ、挿入なしでタッチするだけでも、それを自分たち夫婦のセックスであると定義すればよいのです。
「じゃあ、言葉だけでも充分では?」というかたもいるかもしれませんが、「愛してるよ」とサラっと言うのと、髪の毛を撫でながら言うのとどっちが本気度高いか?筆者は一瞬の触れ合いが本気度を高めると考えています。常時触れなくてもいいのです。タイミングを見て触れ合うこと。月に1度でも2度でもいい。そこに「相手を必要としているかどうか」の本気度が現れるのです。
いまこそ、「夫婦の営み」再入門!
結婚して時間が経ち、お互いに交際していたころの心と身体のままでないことに気づいてしまうのは避けられないこと。しかし、変化を意識して、都度都度、夫婦の寝室事情について確認し合い、セックスの再定義を行っていけば、夫婦仲が険悪になったり、冷め切ったりすることは避けられるはず。
『あなたがしてくれなくても』の悩める夫婦像と自分たちが重なって見えたら、まずは動きましょう。「夫婦の営み」について改めて学び、復習し、反省し、令和時代を泣き顔ではなく笑顔で生き抜く夫婦になるために「新しい営み再入門」を心がけようではありませんか。
ただし、再入門してもまた経年変化するので再々入門も必要。100歳になってもまだ入門できるような夫婦をめざしましょう。
◆監修・執筆/三松 真由美
会員数1万3,000名を超えるコミュニティサイト「恋人・夫婦仲相談所」所長として、テレビ、ラジオ、新聞、Webなど多数のメディアに出演、執筆。夫婦仲の改善方法や、セックスレス問題などに関する情報を発信している。『堂々再婚』『モンスターワイフ』など著書多数。