ドラマ「あなたがしてくれなくても」のようなレス夫婦の不倫は実際にある?夫婦仲の専門家が解説

2023/06/21

2023年6月22日に最終回を迎える、ドラマ「あなたがしてくれなくても」(フジテレビ系、木曜よる10時~)。セックスレスによる夫婦のすれ違いを描いた同作の中では、レス夫婦の不倫もテーマに盛り込まれています。

実際のところレス夫婦の不倫というのは多いのでしょうか?恋人・夫婦仲相談所の所長で、セックスレス予防改善専門家でもある三松真由美さんに教えてもらいました。

会員数1万3,000名を超えるコミュニティサイト「恋人・夫婦仲相談所」所長として、テレビ、ラジオ、新聞、We...

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ドラマ「あなたがしてくれなくても」が描く、共感しかないレス夫婦の実情

上戸彩と斎藤工で大ヒットした不倫ドラマ「昼顔」のスタッフが再集結し、2組のセックスレスカップルの姿を切なくリアルに描いた「あなたがしてくれなくても」。

筆者はセックスレス予防改善専門家の肩書がありますので、原作コミックの作家ハルノ晴さんの取材を受け、展開にご協力いたしました。ハルノさんが筆者の著書やコラムを読んでくださっていることがうれしく、ドラマ化の話を聞いたときは拍手で喜びました。

何より「セックスレス」で悩む男女が確実に存在することを知らせてくれたことで、数多くのカップルが問題提起しやすくなったと思います。

放送されるたびに「感情移入しすぎて辛い」「共感しかない」といった声がSNS上にあふれました。また「見逃し配信」での視聴が多かったことも話題になっていましたから、「パートナーに隠れてこっそり見る」というかたも少なくなかったのでしょう。

たしかに第1話から、リアリティのある夫婦のコミュニケーションのすれ違いが描かれ、主人公と夫との微妙な空気感が見え隠れ。

そしていざセックスの話題になると

「『子どもほしい』って言ったよね!?」
「最後にセックスしたのいつか覚えてる?2年前だよ!?」
「そんなにしたかった?」
「性欲強くない?」

と、妻と夫の双方から、相手の心の奥までグサっと刃が刺さるようなキラーワードが飛び交います。

自分自身もレスに悩むかたがたの共感を生むのはこういったリアルな言葉たちでしょう。

そして、このドラマはセックスレスだけでなくレスカップルの不倫についても描いているのが特徴です。

セックス拒否夫は典型的な「妻だけED」

引数を持つアジア カップル
Rawpixel/gettyimages

このドラマの主人公、奈緒さん演じる吉野ミチは、永山瑛太さん演じる夫の吉野陽一とのレスに焦り、不満を抱え、ふだんは仲良しの2人なのにセックスに関してだけはうまくコミュニケーションができていません。

このタイプの夫婦は、夫婦仲相談所開設以来20年以上、増加し続けています。

ドラマでは「子どもをつくりたいからしてほしい」という正当な理由を言葉にしますが、性行為の目的が子どもをつくることだけではないことを心情吐露する場面もあります。

実際、セックスをめぐってこんな辛辣なやり取りをしている夫婦がベッドに入っても、夫がその気になることは非常にむずかしい。また夫は、妻は抱けなくても浮気相手とはできるという「妻だけED」の設定です。

勤め先の女性に誘惑されるとあっさりコトに及んでしまう彼のクズ男っぷりに、「腹立つわ~」とイライラした女性も多かったのでは。

私の推測では彼は謎めいたところがあるキャラクターですが、「性欲がなくて妻を抱けない」というよりは、「子づくりプレッシャーをちらつかせる妻に萌えないから、セックスを回避したい」というタイプのようです。

このタイプの男性は、妻とのセックスは拒否するものの、性欲がないわけではないので、浮気に走る可能性が低くありません。「夫がセックスを拒否」=「性欲のない草食男子」と妻が思い込んでいると、どんでん返しを食らうわけです。

また「妻だけED夫」は外で性欲を発散することもあり、家ではますます妻に性欲を感じなくなる。そうなると、コトにいたらない妻がさらに鬼の形相で夫に迫り、ますます夫はセックスを避けるようになり……と、負のループに陥ります。

もちろん、不倫をした夫が悪い、という点は間違いありません。

しかし、その前提となる「妻には萌えない」という状態ができてしまった原因は、妻側にも少なからずあるはずです。そこをしっかり顧みず、「自分は100%被害者」と思っていると、不倫が発覚した後の夫婦仲の修復は一層むずかしくなってしまいます。

実際には「夫婦間セックスレスの場合、不倫に走りやすい」という安易な法則は成り立ちません。セックスレスであるかないかなど不倫する人には関係ないというのが私の見解です。

性の欲求が強く、妻だけ(夫だけ)ではたりない場合に外で満たすというひともいれば、ドラマのように心の支えが欲しくてプラトニック恋愛で昇華させようとするかたもいます。

「夫と○年も夜の営みがないので、ほかの人と恋愛したい」と涙ながらに話してくれる妻たちと数え切れないほど話をしています。全員が「じゃあ、外で代わりの彼氏を見つけるわ」となればセックスレス率5割近くの我が国は結婚制度が危うくなるではありませんか。

ただし、水面下で女性用風俗サービスがジワジワ増殖している現状も、セックスレスカップルは知っておく必要があります。

レス妻の願望を体現するプラトニック不倫

AndreyPopov/gettyimages

「あなたがしてくれなくても」では主人公のミチも浮気をしてしまいます。

夫にセックスを拒まれているということを職場の上司に打ち明け、自分自身も妻にセックスを拒まれている彼と「セックスレスの戦友」として心を通わせることになります。

「セックスレス」という問題が、誰にも言えず、世の中にも認知されていなかった時代から、レス妻たちの悩みに向き合い、寄り添ってきた筆者からすると、「セックスレスなんです」と異性に堂々と言える主人公の出現は、正直、感慨深いものがあります。

車中で熱いキスを交わし、会社の研修旅行では浴衣で抱き寄せられて覆いかぶさられ「これはもう行くしかないでしょ」と思ったら「寸止め」と、あくまでもプラトニック不倫を貫く主人公。

私の周囲のレス妻たちからは、「うらやましい……」の声が多く聞かれました。

「セックスを拒否される悩みを打ち明けた相手がイケメンで、かつ彼も「拒否られ夫」だなんて、ドラマとはいえズルい設定」

「デート帰りの車中でのキス、浴衣で押し倒されるだけという罪悪感がないプラトニック不倫は、拒否られ妻にとっては理想的」

「レスだからって、女性は挿入や射精だけを求めているわけじゃない。求めているのはこうして強く抱き寄せられたり、体を重ねて相手の体重を全身で受け止めるたりすることなんだ、って感じて涙が出た」

奈緒さん演じるピュアで不器用な主人公の、イケメン上司とのプラトニック不倫に、多くのレス妻たちはキュンとしていたのはまちがいありません。

レス妻が求めているのは、決してセックスだけではありません。

肌と肌のふれあいやキス。もっと言えば服を着たままでも感じることができる、自分を抱きしめる相手の腕力、息遣い、体の厚みや体重。

そしてそこから感じられる、「自分は愛され、求められているんだ」という実感を欲しているのです。「レスだから、ただセックスできればいいんでしょ」というわけではないのです。

その意味では、岩田剛典さん演じる男性の控えめで優しいふるまい、清潔感のあるたたずまい、そして仔犬のようなピュアな笑顔は、レス妻の妄想する不倫相手の要素を100%備えていると言えるでしょう。そのうえ「もうやめましょう」というと「はい、そうですね」と引き下がる。なんとも都合がいい相手とも受け止められますが、ドラマでは駆け引きを楽しむ醍醐味があります。


「でも、日常にはガンちゃんみたいな人はいない」

これが現実です。

キュン不倫を求めても、泥沼の不倫地獄に落ちてゆくのは周知の事実。安易に不倫を開始するわけにはいかないと多くが思っています。

それだけに、レス妻の悩みは深く、解決は簡単ではないのです。

◆監修・執筆/三松 真由美
会員数1万3,000名を超えるコミュニティサイト「恋人・夫婦仲相談所」所長として、テレビ、ラジオ、新聞、Webなど多数のメディアに出演、執筆。夫婦仲の改善方法や、セックスレス問題などに関する情報を発信している。『堂々再婚』『モンスターワイフ』など著書多数。

三松真由美さん最新刊「夫とだけ、感じません」発売中

出典:Amazon

 
 

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