自称「悪妻」と開き直る仕切り妻がじつはあげまんかも!?【シリーズ・夫を不幸にする妻】
2020/04/28
夫婦仲相談所の所長として数多くの夫婦をカウンセリングしてきた三松真由美さんによれば、「夫を不幸にする妻」には、いくつかの共通した思考・行動パターンがあるそうです。
シリーズ「夫を不幸にする妻」では、そんな負の思考・行動パターンをくりかえしてしまう妻たちをご紹介していきます。
今回登場するのは「自称“悪妻”」。
悪妻は当然、夫を不幸にしますね。でも、そうでないことも……?
悪妻を持った夫は成長する!?
「よい妻を持てば幸せになれる。悪い妻を持てば私のように哲学者になれる」(ソクラテス)
本の扉やドラマの導入部に偉人の言葉が添えられているスタイル、よくありますよね。今回は筆者も、その真似をしてみました。
妻か夫どちらか一方が努力しても相手はそれに気づかないとか、ようやく収まった夫婦喧嘩が翌日また別ネタで開始されるとか……結婚生活はイライラが倍増しては収まってのくり返しです。
筆者はそれが悪いことだとは考えていません。先に挙げたソクラテスの言葉どおり、何かしら得るものがあるからです。結婚生活に悩む人に「結婚は哲学!理不尽なこと、どう考えてもお前が悪いだろうと憤る場面にも、意味があると都度考えてみましょう」とアドバイスすることも少なくありません。
そして極端なことを言えば、悪妻を持った夫はメンタルが鍛えられて寛大な人間なれる……かもしれません。今回はそんなケースをご紹介しましょう。
自称“悪妻”の仕切り完璧妻――マドカさん(仮名:30代前半)のケース
マドカさんは昔から向上心の高い女性でした。学生時代から将来を見据えて資格の取得に励み、英会話教室にも通い、マナーインストラクターの講師もできるそうです。今で言う意識高い系妻。夫の克也さん(仮名)とは、結婚相談所の紹介で知り合いました。マドカさん自身はモテなかったわけではないのですが、相手の条件を重視したいという理由から結婚相談所を利用した、というわけです。克也さんは保険会社勤務。事務方なのでおとなしいタイプです。
マドカさんが悪妻ぶりを発揮し始めたのは、お付き合いが成立して成婚退会をしてからです。結婚前から婚約指輪、結婚式、“結婚後のお約束”などすべて自分が仕切って決めました。“結婚後のお約束”というのは家事分担、生活費の分配、毎月の記念日、出産時期など多岐に渡ります。従順な克也さんは、最初は「マドカさんが全部決めてくれるから楽だった」と話します。
プロデュースする妻とされる夫は、役割がはっきりしているのでうまくいく場合が多いです。しかし、克也さんにはひとつだけ、仕切られたくない聖域がありました。趣味のバイクです。おとなしい男性と思いきや意外にワイルドな趣味。結婚前は内緒にしていましたが、いっしょに住めば当然バレる。けっきょく、バイクは新居へ運んだ瞬間に売られてしまいました。
そして、新婚時代の興奮も落ち着いてきた頃、克也さんは爆発します。
「キミの言いなりにはなりたくない!もう一度バイクを買う。君は支配欲が強く、僕にとって本当にイヤな奥さんだ」
と、まくしたてたそうです。仕切りやのマドカさんは当然反論……と思いきや、夫の主張を受け入れたそうです。しかし、黙って受け入れたわけではありません。
「結婚ってどちらかが決定権持たないと揺らぐから、私がその役を担っているの。そのことに対して、あなたが私を悪妻と言うなら、そうなのね。趣味を楽しむのはいい。でも、あなたの趣味に夫婦の通帳からお金は出せない。必要なら、副業でも投資でもいいから自分で稼ぎなさいよ」とピシャリ。
さきほどの勢いはどこへやら、克也さんは反論できずにうなだれました。しかし、趣味を諦めたくはない。結果、まったく興味がなかった副業について調べたり、投資の勉強を始めたりと奮闘。1年後にはバイクを買い、月1に回、自分だけのお金でツーリングへ行く自由も取り戻しました。同時に、克也さんは「やればできる」という自信がついて生き生きしてきました。そして、自分の可能性を引き出してくれた妻をますます頼りにするようになったそうです。
悪妻宣言をする妻は、あげまん妻?
「私はある意味、悪妻なんで。だから狙った結婚をしたんです。私が主導権を取れる相手を。私のルールで安定した結婚生活をおくれれば、夫も文句言わないでしょ。現に私たち衣食住は満ち足りているし、趣味も充実してるじゃないですか」
自分で悪妻宣言をするマドカさん。筆者は以前『モンスターワイフ』(講談社)という本を出しました。モンスターワイフは悪妻とほぼイコールの概念です。さまざまな主婦のかたにインタビューを行うなかで、数多くのモンスターワイフにも会いました。
あまりの悪妻ぶりに「旦那さん、よく耐えてるもんだ……」とため息が出ることもありました。しかし、ある日読んだ哲学書に書かれていた「試練があってその根源を考えるようになる。考え抜くことで新しい本質や価値に気づく」という趣旨の言葉を読み、考えを少し改めてました。
冒頭のソクラテスの言葉はまさにそれ。「俺の奥さんは悪妻カテゴリーだけど、おかげで人として丸くなれたよ。新しい発見ができたよ!」と成長を感じることができれば”悪妻アリ!”というメッセージにも取れます。
念のため言っておくと、筆者は悪妻のすべてを肯定しているわけではありません。夫のことをまったく考えない、自己中心的な悪妻は間違いなく夫を不幸します。一方で、(言葉は少し変ですが)夫のことを思った悪妻は、すばらしいアゲマン妻になれるでしょう。「自分って悪妻かな?」と思っている妻たちは、自分がどちらの悪妻に当てはまるか考えてみましょう。そして、もし前者のようだったら、考えを改めたほうがいいでしょう。
◆監修・執筆/三松 真由美
会員数1万3,000名を超えるコミュニティサイト「恋人・夫婦仲相談所」所長として、テレビ、ラジオ、新聞、Webなど多数のメディアに出演、執筆。夫婦仲の改善方法や、セックスレス問題などに関する情報を発信している。『堂々再婚』『モンスターワイフ』など著書多数。