増加する『不登校』支援の選択肢。つらいときは休んでもいい
2023/05/20
親世代の頃からどんどん変化する学校教育、ついていけていますか?今どきの教育・進学事情や新しい教育用語を、専門家にインタビュー取材します。急増している「不登校」について教えてもらいました。
<教えてくれた人>: 「学び」のスペシャリスト 木村治生
ベネッセ教育総合研究所主席研究員。専門は教育社会学。東京大学社会科学研究所客員教授などを歴任し、文部科学省、...
どうして「不登校」の子どもが急増しているの?
コロナ禍で、「学校=毎日行く」という価値観が揺らいだことが理由の1つと考えられます。
不登校の子どもが増え続けている背景には、コロナ禍の休校やリモート授業の影響で「毎日登校する必要性」が揺らいだせいもあるのではないかと言われています。加えて、大人側の価値観の変化も影響しています。「必ずしも学校に行くことが全てではない」と保護者が考えて、子ども自身に合った学びの場でその子らしく過ごすことに価値を置く家庭が増えた結果、不登校児の数が増えたという見方もあります。
中学生に不登校が多いのは、子どもの発達段階も関係します。思春期は、自他の違いを認識し始めることで、人間関係でのトラブルが増えやすい時期です。
また、小学校→中学校へ進学することによる環境の変化も大きいです。担任を中心とした家庭的な雰囲気の小学校時代と違い、中学校は教科担任制です。担任との関わりは小学校ほど濃密ではありませんし、学業面では入試を控え成績を競う環境へと変わります。こうした変化は「中1ギャップ」とも言われ、不登校の一因になっています。不登校の背景には、子どもの力だけでは解決できない理由が隠れていることもあるので、状況に合わせた対応が必要になります。
不登校の子どもにはどんな支援があるの?
コロナ禍でICT 教育が急速に普及し、1人1台端末の整備も完了したため、事情がある子どものオンライン登校を認める学校も出てきました。また、適応指導教室や、不登校児の保護者を対象とした集まりや進路説明会を行っている自治体も増えています。学校外のフリースクールへの登校といった選択肢もありますし、高校では通信制に進学する生徒も増え、学校に行けなくなった子どもたちの選択肢も広がっています(木村さん)。
不登校児童数は9年連続で増加
コロナ禍で特に増えた不登校。令和3年度、中学生の不登校児童数は小学生の倍以上に。今では多くの学校が、不登校は誰にでも起こりうるという認識を持っています。
※文部科学省「令和3年度児童生徒の問題行動·不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査」
子どもが不登校になったら親がすべきことは何?
一番大切なのは、親が子どもの味方でいてあげることです。不登校の初期段階で原因を追及したり問い詰めたりすると、子どもは余計に追い詰められて、自殺など最悪のケースに至ることも考えられます。つらい時は休んでもいいことを伝えてあげましょう。また、医療的なケアが必要なケースもあるため、家庭だけで問題を抱え込まず、学校や自治体の相談窓口を活用して、できれば複数の専門家に意見を聞いてみてください(木村さん)。
<教えてくれた人>
・「学び」のスペシャリスト 木村治生さん
ベネッセ教育総合研究所主席研究員。専門は教育社会学。東京大学社会科学研究所客員教授などを歴任し、文部科学省、経済産業省、総務省の委託研究にも携わる。
・ジャーナリスト 宮本さおりさん
夫の米国留学で新聞記者から専業主婦に。帰国後、子育て・教育分野を中心に執筆。『データサイエンスが求める新しい数学力』(日本実業出版社)著者。大学生と小学生の母。
参照:『サンキュ!』2023年6月号「今どきの教育事情どうなってるの?」より。掲載している情報は2023年4月現在のものです。撮影/押尾健太郎 プロップ制作/川村ちゃん 取材・文/宮本さおり 編集/サンキュ!編集部