妊娠中「切迫早産」になったらお金はどれくらいかかる?健康保険は使える?

2019/02/16

出産歴がある人や妊娠中の人なら、「切迫流産」や「切迫早産」といった言葉を耳にしたことがあると思います。このような万が一の事態は、いつだれに起こるか予測できません。

今回は「切迫早産」と診断された場合、出産までにどれほどの費用がかかるのか、また利用できる公的制度について、社会保険労務士でファイナンシャルプランナーの井戸美枝さんにわかりやすく教えていただきました。

「切迫早産」とは?

一般的に、「正期産(せいきさん)」とされるのは妊娠37週から41週までの期間。予定日より早まったり遅れたりしても、この期間のお産であれば、赤ちゃんも充分に発育し、おなかの外に出ても問題ないと考えられています。

妊娠22週0日から36週6日までの期間のお産は「早産」と呼ばれ、正期産と比べると、赤ちゃんは体重が少なく未熟な状態で生まれてきます。「切迫早産」とは、その早産の危険性が迫っている状態のことを指します。

切迫早産は、基本的にベッドの上で安静にしている必要があるため、診断されたあとは入院となるケースが多いようです。

「切迫早産」でかかる費用

切迫早産で入院することになったら、一体どれくらいの費用がかかるのか気になりますよね。

入院費に主に含まれるものは、治療費のほか、入院中の食事代、個室のベッド代など、1日につき1万〜2万円ほどかかるといわれています。

切迫早産はすぐに症状が治まるものではないため、入院が2〜3カ月間に及ぶことも多く、その分お金もかさんでしまいがち。

例えば1日1万円の費用で、2カ月間入院することになったら、その額は60万円にもなってしまいます。

健康保険の対象になる

一般の妊娠・出産は病気とは見なされないため、原則として健康保険は適用されません。ところが、切迫早産のように体に何らかの不調があり、検査や治療などの医療行為が必要になった際には、健康保険が適用されます。

つまり、通常の医療費と同じように、かかった費用の3割負担ですむというわけです。

また、入院中の食事代も健康保険の適用に。所得によって異なりますが、自己負担額は1食当たり460円ほどです。

なお、個室などに入院した場合の差額ベッド代は健康保険適用外となり、全額自己負担となります。

長期入院したら「高額療養費制度」を利用しよう

入院期間が長くなると、どうしても費用が高額になってしまいますよね。そこで頼りになるのが「高額療養費制度」。

1カ月の医療費の自己負担分が一定の額を超えた場合には、超えた分が健康保険から給付されるというものです。

自己負担限度額は年齢と所得によって異なりますが、一般的な所得の会社員なら約9万円。切迫早産は長期入院になる可能性が高いので、必要に応じてこの制度を利用しましょう。

「切迫早産」で民間の医療保険は下りる?

「切迫早産」は妊娠中のトラブルとして、医学的な対応が必要になるもの。つまり、病気と見なされるため、医療保険に加入している場合は給付の対象になります。

契約内容にもよりますが、入院・手術の給付金がもらえる可能性があるので、保険会社に連絡をして申請手続きを行いましょう。

まとめ

「切迫早産」は赤ちゃんとママの体に危険が及んでいる状態です。診断後そのまま数カ月間の入院となるケースも多く、お金の不安で頭がいっぱいになってしまう人もいるでしょう。

でも、実際にはそのような入院・治療費をサポートしてくれる制度がたくさんあります。

不測の事態に慌てないためにも、今のうちから利用できる制度についてしっかり把握しておきましょう。


教えてくれたのは・・・

井戸美枝さん

社会保険労務士、ファイナンシャルプランナー(CFP(R))、経済エッセイスト。講演やテレビ、ラジオなど多数のメディアを通じて、ライフプランや資産運用についてアドバイスを行う。著書に『届け出だけでもらえるお金』(プレジデント社)、『身近な人が元気なうちに話しておきたい お金のこと 介護のこと』(東洋経済新報社)など。

取材・文/有馬未央(KIRA KIRA)

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