「生クリーム」がないときの代用レシピを検証!おすすめの使い方も紹介【管理栄養士が解説】
2022/09/03
レシピをチェックしていざ料理をつくろうとしたところ、必要な食材が切れていた……なんてこと、だれしも一度は経験があるでしょう。でもその食材、もしかしたら代用できるかもしれません!
今回ご紹介するのは「生クリーム」の代用アイデア。お菓子づくりの材料としてやケーキのデコレーションに使ったり、料理に加えるとコクやなめらかさを加えてくれる生クリーム。
管理栄養士と食生活アドバイザーの資格を持つライターのゆかりさんに、生クリームの代用アイデアを紹介してもらいます。
生クリームの原材料は?ホイップクリームとは違う?
私たちが「生クリーム」と呼んでいるものは、生乳などを分離して脂肪分が多い部分を取り出したもののことを指します。乳脂肪分が18%以上のもので、添加物などは含まれていません。
市販品のパッケージには、「種類別:クリーム(乳製品)」と表記されています。乳脂肪分が少ないもの(18~30%)は液状のままコーヒーに加えたり料理の材料として使われたりします。乳脂肪分が多いもの(30~48%)は泡立ててお菓子の材料やケーキのデコレーションなどとして使われます。
なお、混同しやすいものに「ホイップクリーム」があります。これは単に生クリームを泡立てたものではなく、一般的には「乳化剤や安定剤などの添加物」を加えて泡立ちを良くしたものを指します(泡立てていない状態の物も含む)。
さらに、乳脂肪だけでなくヤシ油・パーム油・なたね油などの植物性油脂を加えたり、乳脂肪をまったく含まないものもあります。市販品のパッケージには、「種類別:乳又は乳製品を主要原料とする食品」と表記されていて、生クリームとは区別されています。
生クリームの代用になる食材は?
「生クリーム」は、脂肪分の違いによって使い方が異なり、どのように使うかによっても代用の方法が変わってきます。
泡立てずにそのまま使う場合と、泡立てて使う場合に、それぞれどんなものが代用できそうか次のように食材を選んでみました。括弧内は、合わせる食材の目安の比率となっています。
<泡立てない場合>
【A】牛乳+バター(4:1)
【B】コーヒーフレッシュ
【C】ココナッツミルク
<泡立てる場合>
【D】牛乳+ゼラチン(40:1)
【E】クリームチーズ
【F】ヨーグルト
【G】クリームチーズ+ヨーグルト(1:1)
【H】絹ごし豆腐
【I】ココナッツミルクの固形分
これらを使って、代用生クリームをつくってみることにしました。
つくり比べてみた結果……
それぞれの代用食材は、次のように加工しました。なお、【B】【C】【E】については加工せずにそのまま使用しています。
【A】牛乳+バター……加熱して溶かして混ぜる。
(塩味が気になるものに合わせる場合は「無塩タイプ」を選ぶのがおすすめ。)
【D】牛乳+ゼラチン……ゼラチンは10倍量(重量)の水にふやかして加熱して溶かし、牛乳を加えて混ぜて20分冷却後、再度混ぜ、もう一度同じくらい冷却して混ぜる。
【F】、【G】ヨーグルト……コーヒーフィルターを使って一晩ほど水切りをする。
【H】絹ごし豆腐……キッチンペーパーに包み重石をのせて1時間以上水切りをし、さらに両手ではさむようにしてよく水気を絞る。
【I】ココナッツミルクの固形分……一晩ほど冷蔵庫で冷やし、分離した固形分を取り出す。
(かき混ぜると液状になってしまうので、冷えた状態で泡立てずにそのまま使っています。)
扱いやすさや他の食品と合わせたときの風味などを判定するために、今回は代用生クリームに甘味を加えずに比較しています。(代用食材の風味を和らげるのであれば、バニラエッセンスなどを加えると◎)
また、ヨーグルトや豆腐を長時間水切りする場合、衛生面を考慮して冷蔵で行ってください。
牛乳・クリームチーズ・ヨーグルトについては、生クリームと同じ乳が原材料となっていますが、それ以外は植物性食品です。原材料の異なるこれらを使ってコーヒーやケーキに使用し、それぞれ検証してみました。
1:泡立てない場合で比較
完成した代用生クリームを並べてみました。画像左から順に【A】【B】【C】となっています。
これらの見た目を比較すると、【A】は淡い黄色、【B】は白色、【C】は淡い灰色となっていました。
また、この状態で味を確かめてみると、いずれも濃厚な味わいが感じられました。
泡立てない代用生クリームをコーヒーへ注いで比べてみると、浮かび方に違いが見られました。
【A】は一部沈んだようなまだら状に、【B】は生クリームのような筋を伴った状態に、【C】はコーヒーと一体化したのか(もしくは沈んだのか)全く見えない状態になりました。
このことから、どのような仕上がりにしたいかで【A】~【C】を使い分けるのがよいと思いました。
なお、風味については、加える量がコーヒーに対して多くないため、あまり違いは気になりませんでした。シチューなどの料理に混ぜ込む使い方をするのであれば、いずれを使ってもコクを出すことはできそうだと感じました。
2:泡立てた場合で比較
今度は、泡立てた場合の代用生クリームを並べてみました。画像の上段左から【D】【E】【F】、下段左から【G】【H】【I】となっています。
これらの見た目を比較してみると、【G】【I】はツノが立てやすく一番形状が安定していると感じました。反対に、【E】は硬く【F】は緩すぎてそれぞれ扱いにくく、【D】は冷蔵庫から出してすぐは安定していたが時間経過とともに緩くなってしまいました。【H】については、ツノが立つほどではないものの、安定しているので塗り広げるのには使えると感じました。
色については、【I】のみ淡い灰色をしているため、生クリームっぽさは感じにくくなるかもしれません。
また、これらをケーキに添えて食べ比べてみると、【G】【H】【I】が生クリームに近いような食感となっていました。【E】【G】については塩分が少し含まれているため、スイーツと合わせる場合は砂糖の量を増やす必要がありそうだと感じました。(甘みのあるケーキと食べると、一層塩味が引き立ったので要加減!)
デコレーションに使いたいのであれば【G】【I】、添えるのであれば【G】【H】【I】がおすすめといえます。
なお、当然ですが【H】【I】については、食材そのものの風味が感じられるため、特にスイーツに合わせる場合はバニラエッセンスを加えた方が食べやすいと思います。お好みで、レモン汁などの果汁を加えるのもいいかもしれません。
代用生クリームの結論
<泡立てない場合>は、
【A】牛乳+バター
【B】コーヒーフレッシュ
【C】ココナッツミルク
いずれも代用可。
<泡立てる場合>は、
【G】クリームチーズ+ヨーグルト
【H】絹ごし豆腐
【I】ココナッツミルクの固形分
のいずれかが代用可、という結果になりました。
あくまでも、今回の候補の中ではこれらが一押しということであり、代用したい時にどの食材を持ち合わせているかや個人の好みによって、どれを利用するか選んでみてはいかがでしょうか?
代用生クリームの楽しみ方は?
今回の検証で余った代用生クリーム。スイーツやこってり料理(パスタソースやクリーム煮など)にばかり使うのは……ということで、筆者はカレーに利用してみました。
カレーの中でも、スパイスが効いている辛めのタイプを食べやすくするときに、代用生クリームの脂肪分が役に立ちます。お子さん向けに調整したいときや、少しだけ残ってしまったものをスープへアレンジするときに、温めて火を止めてから代用生クリームをお好みの加減で加えるだけ。スパイスのお陰でクリームのこってり感を和らげつつ、辛さを抑えて食べた時の満足感を高めてくれますよ。
なお、生クリームそのものに比べ、代用生クリームは比較的日持ちすることが考えられます。しかし、時間が経つと水分が分離してきて状態が変わるものもあるため、冷蔵しておいしさが変わらないうちに早めに消費することをおすすめします。
生クリームがないときはもちろん、お好みの仕上がりに合わせて代用生クリームを活用してみてはいかがでしょうか。