老後の住まいへの漠然とした不安やゆううつを解決!私と親がやるべき5つのこと
2022/05/30
親も自分も心おだやかに将来が迎えられるように、畠中さんが手始めにできる5つのことをピックアップしてくれました。わからないことを一つずつクリアにしていくと、老後の住まいへの漠然とした不安やゆううつな気分も減りますよ。
<教えてくれた人>
ファイナンシャル・プランナー 畠中雅子さん
老後の住まいやお金事情に詳しく、住み替えアドバイスなどを積極的に行う。国内外の高齢者施設へ足を運び、利用者の視点で見た細やかな情報を発信中。
1 「資金シート」を書く
親子でもお金の話はしにくいものですが、高齢者向けの施設への住み替えや介護にはお金の情報が必要です。少し足りない分は援助しよう、なんて考えると、やがて自分の生活にしわ寄せがいく人も多いんです。あらかじめ年金額や貯蓄について「資金シート」を書いてもらい、老後の住まいへの予算を見える化して。資金シートは、お手製がおすすめ。最初は書きたがらなくても、子どもが一生懸命作れば正直に書いてくれるもの。親自身も本気で考えてくれるでしょう。
資金シート
面と向かっては聞きにくいお金のことも、シートにすると聞きやすい。介護が必要になったらどうしたいかなど、資金以外のこともついでに聞いておこう。
● 月の収入
年金 円
その他 円
● 貯蓄額
円
● 介護が必要になったら
□ できる限り家にいたい
□ 施設に入りたい
2 無料セミナーに参加してみる
まずは、複数の高齢者施設を一度に紹介する「無料セミナー」に参加してみましょう。セミナーの開催情報は、ネットや新聞で簡単に見つけられ、高齢者施設の基本を学ぶにはぴったりです。一般に主催者の系列や協賛する施設を紹介するセミナーが多いですが、セミナーによっては介護のスペシャリストなど、主催者とは別の第三者の講演などが聞ける場合もあります。いろいろな人の話を聞く機会を持ち、選択肢を広げることから始めましょう。
3 見学会に参加してみる
次のステップは、無料セミナーで気になった施設などで、個々の施設が開催する見学会への参加です。見学時は、入居者が楽しそうにしているかや、職員の受け答えの様子などをチェック。たとえば、見学者と入居者の接触を遮るなど、何か違和感を覚えたらあまりよい施設ではないかも。コロナ禍で見学会を自粛している施設も多いですが、実際に足を運んでこそわかることは多いです。興味がある施設は、どんどん見学会に参加してみましょう。
見学会では、施設で実際に提供される食事を試食できることも。先々、普通の食事が食べられなくなったときの介護食(柔らかい食事など)も含めて味見を。
4 自分でも見学を申し込んでみる
見学会に参加してピンときた施設があったら、今度は自分でも電話して見学に行ってみましょう。施設の最寄り駅から歩ける距離なら、徒歩で訪問を。実際に歩いてみると、車では気づかない道の段差など周辺の環境がわかります。駅から遠い場合はタクシーを利用し、施設の評判を運転手さんに聞いてみましょう。また、施設によっては、入居者が満員で見学を受け付けていないことも。つねに満室運営ができている施設なら、よい施設といえるでしょう。
「面会に来る家族をよく乗せるよ」「職員が親切らしいよ」など、施設への訪問者を乗せることがある地元のタクシー運転手さんならではの話が聞けるかも。
5 「医療」「看取り」をどうしたいか決める
最後は、医療と看取りの問題。もしも、回復の見込みがなくなったら延命措置はするか、最期はどこで迎えたいかなど、親の希望を確認しておきましょう。施設によって、医療や看取りへの取り組みはさまざまです。専用のクリニックがある施設もあれば、外部医療機関を利用する施設もあります。看取りを掲げていても、実際は看取りの経験がほとんどない場合も。施設での看取りを希望するなら、どれくらい実績があるか聞く必要があります。
「緊急ブザーはどこにつながるのか」「持病があっても入居できるか」「救急搬送時はスタッフが同乗してくれるか」なども施設側に確認しておきたいところ。
「うちはまだそこまでじゃない!」という人でも
"親の暮らし"に不安を感じたら「地域包括支援センター」に相談。
「認知症かも」など、65歳以上の高齢者の相談に応じる公的な機関。専門的な立場から介護や医療、福祉サービスを紹介。離れて暮らす場合も親が住む地域のセンターに相談できる。
体験者の声
●結婚直後、義母の介護と施設探しを経験
みほさん(北海道 35歳)
義母はパーキンソン病を患い、自宅介護を経て介護型ケアハウスへ。介護相談員で家族の中でも知識があった私が主体で施設探しなどに動きましたが、思い返すと悔いもあり。そんな経験もあり、23歳年上の夫は自分が介護が必要になったら施設に入りたいと言うので、将来は夫婦で入居できるサ高住を希望しています。介護は「家族だから」だけでは乗り越えられないし、お金も必要。人の手や知恵を借りながら最期まで面倒をみるのが理想です。
【data】
入居したのは:義母(故人)
入居先:介護型ケアハウス(最期は病院)
費用:秘密
●認知症の義母を有料老人ホームから特養へ
鈴さん(山梨県 45歳)
現在96歳の義母は80代前半で有料老人ホームに入居。今は認知症が進み特養で暮らしていますが、住み替えまでに数年待ちました。妻が夫の親に直接お金のことは聞きづらいと思うので、何か起こる前に夫婦で"親の今後とお金のこと"は話し合っておいたほうがいいです。私も老後資金を貯めだしたり、パート先の年上の方たちの老後プランに耳を傾けるようになりました。ちょっと気にするだけで意識や耳に入る情報も変わると思います。
【data】
入居したのは:義母(96歳)
入居先:特別養護老人ホーム
費用:月15万~16万円
●地元の父を自分の住む地域の有料老人ホームに
ぎっちゃんさん(群馬県 48歳)
鍋やじゅうたんを焦がすなど、母が亡くなってから父の一人暮らしが厳しくなりました。私の自宅に引き取るか、高齢者施設に入居するか迷いましたが、私の自宅近くの有料老人ホームに入居することに。親が住み替えするということは、親の説得や施設探しだけでなく、実家の処分など親の資産を整理することでもあります。想像以上に大変なことなので、我々子ども世代がフットワークが軽いうちから動き始めることをおすすめしたいです。
【data】
入居したのは:父(78歳)
入居先:有料老人ホーム
費用:月約35万円
●母が2年後を目標にサ高住に住み替えを検討中
りーえ★★さん(北海道 48歳)
母は耳は遠いですが今はまだ元気で、アルバイトをしながら一人で暮らしています。とはいえ、ゆくゆくはもう少し気楽に安心して暮らしたいということで、2年後を目標にサービス付き高齢者向け住宅への住み替えを検討中。目下、私がスマホで探している段階ですが、地元で暮らしたい母と、私の自宅近くを希望する私の間で折り合いをつけるのが大変です。親は年々頑固になるので、老後はどう暮らしたいか早めに聞いておくべきですね。
【data】
入居希望なのは:母(73歳)
入居先:サービス付き高齢者向け住宅
費用:検討中
参照:『サンキュ!』2022年6月号「年をとったら、どこに住むの?」より。掲載している情報は2022年4月現在のものです。監修/畠中雅子 取材・文/渡辺ゆき 編集/サンキュ!編集部