鉛筆で漢字を練習する子供 国語 言葉の意味

「有象無象」は失礼な言葉?意味や類語、英語表現まで正しい使い方を解説

2022/10/21

「有象無象」とはどういう意味の言葉でしょうか?この質問に対してはっきりと答えられる大人も、実はそう多くはないのではないでしょうか。

今回は、そんな「有象無象」について、言葉の由来や意味、正しい使い方から類語や対義語、英語表現まで詳しく解説していきます。

「有象無象」とは?

群衆 大衆 雑多な集まり
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「有象無象」とは、主に卑下したり謙遜したりする際に用いられる四字熟語です。その語源は仏教用語にあるともされ、古くから使用されている言葉でもあります。

「有象無象」は、ネガティブな意味を持つ言葉のため、意味を正しく理解して、使うべきシーンを見定めることが大切です。

それでは、そんな「有象無象」について、まずは言葉の意味を見ていきましょう。

「有象無象」の意味

「有象無象(うぞうむぞう)」とは、「雑多なくだらない人や物」、「ろくでもない連中のこと」といった意味を持つ四字熟語です。
また、一般的にあまり知られていない「形があるものも、ないものもすべて」、「有形無形のすべて」という意味を持つ四字熟語でもあります。

有象無象は、ポジティブなイメージを与える言葉ではないため、日常会話では使用するシーンが限定される言葉です。
聞き手に悪い印象を与えないためにも、この機会に「有象無象」の正しい使い方を理解しておきましょう。

「有象無象」の由来・語源

「有象無象」は、そのルーツを仏教用語に持つと言われる、古くから使われている言葉です。現在でも使用されている「有象無象」はどのような語源を持ち、どのように転じて今の形になったのでしょうか。

仏教用語の「有相無相」が語源?

蓮の花 禅 仏教
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「有象無象」は仏教用語である「有相無相」が語源と言われています。「有相無相」として用いられていた言葉が、「有象無象」へと転じた由来としては諸説あります。

有力な説としては、「相」という漢字が意味合いや読みなど一般的に認知されやすい形へと時間とともに転じていったと考える説があります。

「相」という漢字が、形あるものという意味と一般的に結びつきにくく、よりイメージしやすい「像」へと転じ、一般的により利用されていた同じ読みである「象」を用いた「有象無象」として広まったと考えるのが最も有力な説とされています。

「有相無相」の意味

「有相無相(うそうむそう)」に使われている「相」という漢字は、仏教用語で「特徴・属性」といった意味を持っています。

それらを持つものという「有相」と、持たないものという「無相」とを組み合わせて「有相無相」とすることで、「形があるものも、ないものもすべて」という仏教用語として用いられています。

また、取るに足らない大勢といったような意味合いを持つのは「有象無象」のみで、語源である「有相無相」では、「すべて」を意味する言葉としてのみ用いられます。

「有象無象」の正しい使い方

言葉の正しい使い方 チョイス 選択
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「有象無象」は、大きく分けて2つの意味を持つ言葉とされています。

一般的にはネガティブな意味を持つ言葉として使用されることがほとんどのため、使い方や使う場所を間違ってしまうと、聞き手に失礼な表現となりかねません。

そんな「有象無象」を正しく使うために、代表的な使い方から、ビジネスシーンや目上の人との会話での「有象無象」の使い方について解説していきます。

「有象無象」の例文

「有象無象」は蔑みの意味が込められた言葉のため、使用するシーンは慎重に選ぶ必要があります。主に自身を謙遜した表現をしたい場合や、相手を見下した言い回し、皮肉を込めた言い回しで用いられます。

「有象無象」は失礼な言葉?

頭を抱える女性
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「有象無象」は前述の通り、決してポジティブな印象を与える言葉ではありません。そのため、聞き手を主語に「有象無象」を使った文章は、聞き手に対して失礼な言い回しとなる場合がほとんどです。

「あなたは有象無象の1人だ!」

こう言われて気分のよい人はいない、ということは、やはり「有象無象」を使った文章は聞き手に対して失礼であると考えるべきでしょう。

「有象無象」はビジネスシーンで使えるか

「有象無象」をビジネスシーンで使うケースは非常に少ないでしょう。

「有象無象」を使うことで、失礼な言い回しになりかねない以上、余程の事情がない限り、ビジネスシーンなどの公の場で使用することは控えた方が無難です。

唯一、自身を謙遜や皮肉する言い回しであれば、相手に対して失礼になることはないため、ビジネスシーンにおいてもこの用法であれば「有象無象」は使っても問題がない、と覚えておきましょう。

「有象無象」は目上の人に使ってよいか

「有象無象」は目上の人に対して使う言葉として、最適とは言えません。

もちろん前述の自身を謙遜する用法であれば使い方としては誤りではありませんが、特にわざわざ「有象無象」というネガティブなイメージの強い言葉を使用する理由はあまりないのではないでしょうか。

聞き手への印象を特に意識する必要がある目上の人との会話においては、後述の失礼でない言い回しや、ポジティブな意味を持つ対義語などをうまく使っていきましょう。

「有象無象」の失礼でない言い換え

一般的に、「有象無象」が語源にあるような「形があるものも、ないものもすべて」という意味で使われることはほとんどありません。

つまり、日常的に「有象無象」は、「雑多」や「ろくでもない」といったネガティブな意味を持つ言葉として使用されています。そのため後述の類語に関しても、「有象無象」と同様にネガティブな意味を含む言葉となるため、これらを用いた発言や文章はやはり失礼な物言いとなるケースがほとんどです。

「有象無象」を使用した例文を、失礼でない言い回しに言い換えると下記のようになります。

「有象無象で成り立っているコミュニティだ。」
「唯一無二の人材で成り立っているコミュニティとは言い難い。」

例文のように「有象無象」をポジティブな言葉に置き換え、かつ、否定形の文章とすることで、「有象無象」を使わずに似たような表現をすることは可能です。

とは言え、少し回りくどい言い回しになることや、対象を貶める表現自体は変わらないことなどから、あまりおすすめの表現とは言えません。

やはり「有象無象」は、自身を謙遜する言い回しでのみ使用する言葉として認識しておいた方がよいでしょう。

「有象無象」の類義語

釣り合うAとB
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「有象無象」の類語としては、「烏合の衆」という言葉がよく使用されます。

その他にも、「森羅万象」や「諸事万端」など、日常会話ではあまり使用しない言葉が類語として使用されることもあります。

「森羅万象」

「森羅万象(しんらばんしょう)」は、樹木が重なり合い生い茂る様子を表す「森羅」と、すべての形あるものをという意の「万象」を組み合わせた四字熟語です。

「天地間に存在する、ありとあらゆる事象」という意味を表し、「有相無相」から引き継がれた「形あるものも、ないものもすべて」という意味の類語の1つです。

例文
「私は、森羅万象を理解することはできない。」

「諸事万端」

「諸事万端(しょじばんたん)」は、色々なことという意味の「諸事」と、あらゆる事柄・手段という意味の「万端」を組み合わせた四字熟語です。

2つの言葉の意味からも分かる通り、「色々なすべてのこと」という意味の言葉として用いられます。

「森羅万象」と同様、「有象無象」の「形あるものも、ないものもすべて」という意味の類語として用いることができます。

例文
「明日の試合に向けて、コンディションなど諸事万端を整えておきましょう。」

「烏合の衆」

「烏合の衆(うごうのしゅう)」は、「ただ寄り集まっているだけの集団」、「秩序のない人々の集まりや軍勢」という意味の四字熟語です。

中国の古典「後漢書」の中で、嘘をついて挙兵した寄せ集めの集団をカラスの群れに喩えて「烏合之衆」と言ったことが、現代の「烏合の衆」の由来とされています。

上記から、「烏合の衆」は、「有象無象」の「雑多な人」、「ろくでもない連中」といった意味の類語として用いられます。

例文
「選抜チームが烏合の衆とならないように気をつけねばならない。」

「有象無象」の対義語

1つだけ異なる方向を指す矢印
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「有象無象」は、「雑多な大衆や群衆」といった意味の言葉です。そのため、「有象無象」の対義語は「たった一つの」といった意味合いの言葉が用いられます。

「唯一無二」

「唯一無二(ゆいいつむに)」は、ただひとつしかないという意味の「唯一」と、ふたつとないという意味の「無二」を組み合わせた四字熟語です。

同じ意味を持つ二語を組み合わせることで意味が強調され、「ただひとつしかなく代わりがないもの」、「他に並ぶものがないほど飛びぬけている状態」という意味の言葉として用いられます。

そのため「唯一無二」は、「雑多、ろくでもない連中」といった意味である「有象無象」の対義語として用いることができます。

例文
「唯一無二の人材となれるよう、精進します。」
「ここは、唯一無二のコミュニティだ。」

「有象無象」の英語表現

日本語と英語
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「有象無象」の英語表現はスラング?

「有象無象」を英語に翻訳する際、スラングに属する言葉として訳されることがあります。

「有象無象」自体が公的な場には不向きな言葉でもあるため、英語で表現する際も、聞き手に伝わる印象を理解して、正しく使用する必要があります。

スラングとは、俗語とも呼ばれ、仲間内でのみ通じる言葉や、公的な場所には適さない品のない言葉を指します。
公的な場所で口に出すことがはばかられるような言葉を、別の言葉に置き換えて表現していたことがスラングの起源とも言われています。

今でもスラングと呼ばれる英語は、ビジネスシーンのような場所には不適切とされています。
近年では日本同様、若者言葉やギャル語といった類のものも、スラングと呼ばれるようになっています。

日本でもネガティブな意味が強い「有象無象」の英語表現の中には、スラングに属するものもあるため、英会話で似た言い回しをする場合は注意が必要です。

「the ragtag of bobtail」

「the ragtag of bobtail」は、「動物の切られた短い尻尾の毛」を指す「bobtail」と、「ぼろの、落ちぶれた」といった意味の「ragtag」を用いた「つまらない人々の集まり」といった意味のスラングです。「有象無象」や「烏合の衆」の英訳として用いられることが多い英語表現の1つです。

「the rabble」

「the rabble」は、「下層階級」や「大衆」、「野次馬」という意味の名詞で、転じて「有象無象」の英訳として用いられます。

「the mob」

「the mob」は、「下層民」や「大衆」、「暴徒」といった意味の名詞で、「the rabble」同様、「有象無象」の英訳として用いられます。

アニメやゲーム、漫画などで使用される「モブ(キャラ)」という言葉も「mob」が語源の言葉で、特別な個性がデザインされていない、その他大勢という意味で使われています。

上記のように日本国内においては「mob」よりも少しネガティブなイメージが和らいだ言葉として「モブ」が浸透しているようです。

まとめ

「有象無象」は、使い方によっては聞き手に不愉快な思いをさせてしまうこともある、注意が必要な言葉でもあります。

自身で使用する場合だけでなく、正しい意味を人に伝えられるようにも、由来や語源、類語なども合わせて覚えておくと便利かもしれませんね。

参考サイト

 
 

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