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「鑑みる」とは?読み方や意味、「顧みる」との違いや誤用表現も解説

2022/10/18

「鑑みる」とは、「先例や手本に照らして考える」という意味の言葉。国会議員の答弁やビジネスシーンでは、予算会議やプレゼンなどで使われることの多い言葉です。実は漢字を読めない方がいたり、ほかの言葉と意味を混同したりするケースも多い難しい言葉でもあります。そこで、「鑑みる」の読み方や意味、混同しやすい「顧みる」との違いを解説します。

「鑑みる」とは?

辞書 調べる 鑑みるの意味
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「鑑みる」の読み方や意味がわからないまま使っている方もいるのでは?自信を持って使えるように、読み方や意味、由来を解説します。

「鑑みる」の読み方

「鑑みる」は、「かんがみる」と読みます。「鑑」は、鑑定や図鑑などに使われる漢字で、「かん」と読むのが一般的。「かん」は音読みですが、訓読みだと「かんが(みる)」や「かがみ」といいます。

「鑑みる」の意味

「鑑みる」は、「先例や手本に照らして考える」という意味です。照らし合わせるものは手本や規範など優れたものの場合もありますが、失敗例や他国の実例などを参考にする場合にも使います。

「鑑みる」の由来

「鑑みる」を「かんがみる」と読みにくいと感じる方もいるかもしれません。また、読み方が似ているため、「考える」から派生した言葉だと勘違いしてしまう方もいるでしょう。

実は、「鑑」は金属製の鏡のこと。映して見るというところから、「鑑」は「手本・規範」という意味で使われるようになりました。たとえば、ビジネスパーソンの鑑や、武士の鑑、などとその分野で優れている人を称することもあります。そして、「鑑みる」はもともと「鏡」が動詞化したもので、「かがみる」と読む言葉でした。「かがみる」を発声しやすいように撥音化した結果、「かんがみる」になったのです。

元々「鑑」は鏡や規範・手本という意味を持つので、「鑑みる」には「鏡にうつしてみる」や「手本としてみる」という意味があります。そこから転じて、「前例を見て良し悪しを考える」や「よく見て品定めをする」という意味も持っています。

「鑑みる」を英語でいうと?

「鑑みる」を英語でいうと、「consider」という動詞がぴったりです。「~に鑑みて」と言いたいときは、「in view of~」や「in the light of~」を使います。例文を3つご紹介します。

・Considering the economic situation, we decided not to start a new business.
(経済情勢を鑑みて、私たちは新しいビジネスを始めないことを決めた。)

・The plan was canceled in view of the current situation.
(現状を鑑みて、その計画はキャンセルになった。)

・In the light of the global environment, we need to stop using fossil fuels.
(地球環境を鑑みるに、私たちは化石燃料の使用をやめる必要がある。)

「顧みる(かえりみる)」「省みる(かえりみる)」との違いは?

「鑑みる」と混同しやすい言葉に、「顧みる(かえりみる)」と「省みる(かえりみる)」があります。読み方が似ている「かんがみる」と「かえりみる」の違いは、どのようなものがあるのでしょうか。

「鑑みる」は「先例や手本に照らし合わせて考えること」ですが、「顧みる」は元々「返り見る」が語源の言葉で「振り返ること」を表します。後ろを振り返るということから、「顧みる」は「過去のことを回想すること」や「反省すること」も表す言葉です。

「省みる」も「顧みる」と同様に「返り見る」が語源。「顧みる」のように「反省すること」を表しますが、特に自分自身のことを振り返ってよく考えるときに「省みる」を使います。

「鑑みる」の使い方と例文

記者会見 鑑みるの使い方
Robert Daly/gettyimages

「鑑みる」の使い方と例文をシーン別にご紹介します。

ビジネスシーンでの使い方

「鑑みる」はビジネスシーンでよく使われる言葉です。事業計画や戦略会議、予算会議などの資料やプレゼンの中で耳にすることが多いでしょう。具体的には、次のような使い方をします。

例文1:昨今の状況を鑑みて

「昨今の状況を鑑みて」は、戦略会議や予算会議でよく使われる文言です。今後の戦略や予算を立てるときに、最新の市況や売上げ状況などを照らし合わせたり参考にしたりする必要があります。

たとえば、「昨今の状況を鑑みて、原料の調達先は数ヶ所確保しておく」といった使い方をします。このように、現状を把握しながら今後の方針について主張したいときによく用いられます。

例文2:リスクを鑑みる

「リスクを鑑みる」というのは、事業計画についての会議などで使われる文言です。事業を進める中で、競合の動きや原料高、需要の縮小などといったリスク要因を念頭に置く必要があるでしょう。
たとえば、「リスクを鑑みると、初回の発注数量は抑えるべきだ」といった使い方をします。さまざまなリスクを比べて検討するときなどにも、「リスクを鑑みる」と使います。

コロナ禍でよく見かける使い方

コロナ禍において、専門家や首長の会見などで「鑑みる」という言葉をよく耳にするようになりました。また、職場や学校、自治体などからの連絡の中でも、「鑑みる」をよく見かけます。ここでは、コロナ禍における具体的な使い方をご紹介します。

例文1:感染状況に鑑みて

専門家や首長の会見などでよく耳にするのが、「感染状況に鑑みて」という文言です。

たとえば、「新型コロナウイルスの感染状況に鑑みて、まん延防止等措置法を適用させます」や「感染状況に鑑みて、今年度の運動会は保護者の観覧を中止します」などと使われています。

コロナ禍では、重症者の人数や病床使用率などを勘案して、対応策を検討してきました。そうした対応策を発表する場面で「感染状況に鑑みて」という文言がよく使われてきました。

例文2:世界情勢を鑑みる

新型コロナウイルス感染症の状況だけでなく、世界情勢も刻々と変化しています。「世界情勢を鑑みる」という文言は、各国の感染症の状況や戦争、紛争、災害などといったさまざまな出来事を勘案するときに使われる文言です。

たとえば、「世界情勢を鑑みて、電気代の高騰は致し方ない」や「世界情勢を鑑みると、海外で通用する教育が必要となるだろう」などと使います。

「鑑みる」の類語や言い換え表現

考える 悩む 鑑みるの類語
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「鑑みる」は文章で読むと理解できるものの、実際に耳で聞くと「考える」や「省みる」などといった言葉と混同しやすい言葉です。類語やわかりやすく言い換えるための表現をご紹介します。

踏まえる

「踏まえる」は、「鑑みる」とほぼ同じ意味合いで使える言葉です。「踏まえる」には、「考えあわせる」や「よりどころにする」という意味があります。

「状況に鑑みて対応策を考える」という文言は、「状況を踏まえて対応策を考える」と言い換えることができるでしょう。会議やプレゼンで発言するときは「踏まえる」を使ったほうが、聞く人は理解しやすいかもしれません。

考慮する

「考慮する」は、「考えを巡らせる」という意味の言葉です。「考慮する」には、「鑑みる」のように、何らかの規範や先例などと照らし合わせるという意味合いはありません。しかし、「世界情勢を考慮して検討する」のように、具体的に考える対象を挙げることで、「鑑みる」と同じように使うことができます。

見据える

「見据える」には、「視線をとらえてしっかり見る」や「本質を見抜く」という意味があります。「鑑みる」には「本質を見抜く」という意味合いはありませんが、「比べ合わせて考える」という点では似ているといえるでしょう。「見据える」は手本や規範ではなく、状況や将来に使うことが多い言葉です。

「鑑みる」で気になる誤用表現

「鑑みる」は、時代とともに使い方が変化している言葉でもあります。現在は変化の過渡期ということもあり、誤用表現が気になる方も多いでしょう。そこで、「鑑みる」を使うときに指摘されがちな誤用表現を解説します。

「~を鑑みる」と「~に鑑みる」はどちらが誤用?

「鑑みる」の前に付ける助詞は、「を」と「に」のどちらなのかという議論があります。元々「鑑みる」は「鏡に映すように手本に照らして考える」という意味をもつ言葉です。このため、「先例に鑑みる」のように、助詞は「に」を使うのが一般的だといわれてきました。

しかし、「状況を鑑みる」といったように、昨今は「を」を使う人も増えています。『明鏡国語辞典』では「鑑みる」の例文として2つを挙げています。「過去の事例に鑑みる」と「国際情勢を鑑みるに楽観は許されない」。「を」と「に」どちらの例も挙げているので、どちらを使ってもよいという解釈を示しているのでしょう。

現状では、「~に鑑みる」が正解で「~を鑑みる」は誤用表現だと主張する人もいます。しかし、現在はどちらの助詞を使うかはあまり気にしすぎず、状況に合わせて意味が理解できるように使えばよいといえるでしょう。

失敗例や現状は「鑑みる」ものではない?

「鑑みる」は、手本や先例などに照らし合わせて考えるという意味をもちます。このため、照らし合わせるものは見本となるものであって、失敗例や現状などには使わないという考えもあるようです。

しかし、「鑑みる」には、「よく見て品定めをする」や「検討する」という意味もあります。このため、手本になり得る良いものだけを照らし合わせるのではなく、失敗例のようなマイナスなものも、どちらになるかわからない状況などにもすべて使える言葉だといえるでしょう。

まとめ

「鑑みる(かんがみる)」の読み方や由来、使い方について解説しました。「鑑みる」の「鑑」は金属製の鏡のことで、そこから「鑑みる」は鏡に映して見ることに由来します。鏡に映すように、手本や規範に照らしながら考えることが「鑑みる」の意味です。

ビジネスシーンやコロナ禍における会見などでよく使われる「鑑みる」ですが、「考える」や「顧みる」に発音が似ているため混同されがちです。話すときは「踏まえる」や「考慮する」と言い換えると、理解しやすくなるでしょう。

また、「鑑みる」は使い方が変化している言葉でもあります。もともとは「~に鑑みる」と使うのが一般的でしたが、昨今では「~を鑑みる」と使う方も増えています。辞書にはどちらも用例として紹介されているので、誤用表現を気にしすぎなくてもよいでしょう。

「鑑みる」は読み方が難しい言葉です。誤用表現よりも読み間違いに注意したいですね。

参考書籍・サイト

『広辞苑 第六版』岩波書店

『明鏡国語辞典 第二版』大修館書店

『ジーニアス和英辞典 第3版』大修館書店

 
 

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