学校に行かなくなった子どものために、大人ができること。
2022/12/12
学校に行けなくなっちゃった子どもは、どこに行けばいいの?「何もしなくても居ればいい」場所をつくってみたら、大人同士もつながって、暮らす街の魅力も大きくなった。移住した町で行動を起こした人のお話を聞きました。
<教えてくれた人>
広島県 瀬戸房子さん
高3の長女、小3の長男、夫との4人暮らし。石川県金沢市出身。大阪で就職・結婚をし、9年ほど前に広島県の尾道市に移住。学生時代から「場をつくる」活動をしてきた。現在は隣の福山市在住。
fusako seto_Instagram
https://www.instagram.com/fusakoseto_library.sunsun/
「何もしなくても居ればいい」そんな場所をつくってみた
「シャッターがずっと閉まっていたから知らなかったんですが、中に入ったら化粧品用の棚がたくさんあって。本を並べるにはピッタリ。やるしかない!」と決断した瀬戸さんがつくったのが、仲間の蔵書を持ち寄った私設図書館「さんさん舎」。大人も子どもも無料で立ち寄れ、のんびりと本やまんがを読める場所です。
ゆる~い空気がなんとも心地よくて、ついつい長居してしまいそうになる、この「図書館」があるのは、広島県尾道市。本土側から渡船に乗って5分ほどの向島にある、化粧品店だった建物を活用しています。
きっかけのひとつは、長女の不登校でした。子どもは平日の昼間、学校以外に行ける場所がないんだと気づき、そんな子や一緒に悩む親にとっての居場所にしたいと思ったそう。
瀬戸さんが代表を務め、「お当番さん」といわれる有志の人たちが順繰りにオープン。親子を支援するための茶話会などを開催することもありますが、基本的には、お当番さんが場所を開けて番をしているだけ。毎日たくさんの人が訪れるわけではありません。
「実際は、不登校の子どもは家を出ることさえも難しい。でも、『あそこに行けばいいか』って思える場所があることが大切だなと思って。通わなくても、場所があることが支えになるという声もいただくんです」。
だからお当番さんたちも自分の好きなことをする時間として、この場所に「ただ居る」のだそう。「何もしなくてもいいんです。活動しなくちゃ!って気負わなくていい。でも、居るだけで役に立ってるって、いいじゃないですか」と瀬戸さん。そしていつのまにか、気持ちの合う人が集まってくる場所に。
どんな街にも面白い人がいるから、出会いが楽しい
じつは瀬戸さん、他にも本を介した寄り合い所やキッチン付きレンタルスペースなど、人が集まる場をつくっていて、ここが3カ所目。尾道に住んでまだ10年足らず。ほぼ知人もいない状態だったにもかかわらず、精力的に活動し街と人をつなげています。
「こんな場所が欲しいよねと話しているうち、ないならつくろうかと。つくったらそこに人が集まってきて……という自然な流れです」。さんさん舎のお当番さんもいろいろな人がいて、それぞれの形で関わっています。「私たちがやってることは、小さなことかもしれないけれど、できることを楽しみながら続けていけばいいんじゃないかな」。そして今は、住まいを移した隣の福山市での場づくりや街づくりにも参画中です。
「どんな街にもおもしろい人がいます。人と出会って、こんな考え方もあるんだ!って知ることが楽しい」。
場をつくるという瀬戸さんの活動は、人をつなげながら、ますます広がっていきそうです。
#オープンしてることが大切
不登校の子がいつもいるという状態ではないけれど、「行きたい」と思い立ったときに来られるよう、継続的に開けていることが大切と思っているそう。
#アイデアをご自由に
鍼灸師、農家、社会福祉士と、お当番さんの職業はいろいろ。消しゴムが当たるくじ引きを置くなど、子どもが楽しくなりそうなアイデアをそれぞれが自由に実践。
#ときどき乗ってリフレッシュ
瀬戸さんが向島に来るのは1週間に1回ほど。車に乗って橋を渡ることがほとんどですが、ときどき渡船に乗ってみることも。「気分転換にピッタリ」。
#やりたい人がなぜか見つかる
瀬戸さんが立ち上げたキッチン付きレンタルスペースには「喫茶ニワトコ」が入り、場所も活動も受け継いでいます。「これも自然な流れでした」。
#お当番さんの課題図書
お当番さんに必ず読んでもらうのが『ベルリン うわの空』。「思いを共有するのに本って便利です」。他の2冊は場づくりの参考にもなるお気に入り。
参照:『サンキュ!』2022年11月号「わたしのHAPPYのつくりかた」より。掲載している情報は2022年9月現在のものです。photo:aya sunahara text:kyoko kato 編集/サンキュ!編集部